1年で試験運用から実際の市場へ移行を目指す
英国財務省は13日、ホールセール金融市場デジタル化推進責任者(Wholesale Digital Markets Champion)を務めるクリス・ウーラード氏による初の報告書を公表した。同報告書は財務大臣宛てに提出されたもので、54社で構成されるタスクフォースの発足を打ち出した。
シティ・オブ・ロンドン公社の支援を受ける同タスクフォース(正式名:デジタル市場推進業界タスクフォース)は、英金融市場におけるトークン化の実装に向けた重点施策を推進する。
その中核となるのは、バリューチェーン関連の①一次発行・ファンド、②二次市場、③担保・健全性基準、④金融市場インフラ・現金決済(キャッシュレグ)の4つの分野を担当する作業部会(Action Group)だ。4つの作業部会は横断的に連携し、実務・商業面の優先度を踏まえてトークン化レポ取引をモデルケースに、取引全体を通じた実証を進める。
これらの作業部会を管理・統括するのは、ウーラード氏が委員長を務める調整グループで、各作業部会に対して主要構成要素の策定を委託する。
さらに、税制、法務、金融犯罪対策および本人確認(ID)、レジリエンス(強靭性)という横断的な課題に対応する4つの作業部会も設置され、制度整備やベストプラクティスの策定を並行して進める。
9つ目のコミュニケーションを担当する作業部会は、英国を「デジタル資産のグローバルセンター」としてアピールする役割を担う。
各作業部会は、以下の優先事項を中心に取り組みを進める。
- トークン化されたレポ取引や投資ファンド、担保資産の実用化を通じた市場の拡大
- ホールセール決済インフラや規制基準を整備し、実運用可能なトークン化市場を構築
- 法的明確性の向上や税制整備、金融犯罪対策、デジタルIDの整備による制度基盤の強化
- 国内外の相互運用性・標準化の推進と、業界・規制当局の連携強化による市場の信頼性向上
タスクフォースには、ブラックロック、J.P.モルガン、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、HSBC、UBS、バークレイズなどの大手金融機関に加え、コインベース、サークル、リップル、アバラボ(Ava Labs)、クラーケン、ファイアブロックス(Fireblocks)、チェイナリシスなどの暗号資産(仮想通貨)関連企業も参加する。
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トークン化資産の拡大と国際競争
金融市場のトークン化を巡る競争は、大きな商機を秘めている。
2025年時点で、トークン化資産の市場規模は世界全体で約300億ドルと、投資可能資産全体のわずか0.01%に過ぎなかったが、同年、市場規模は300%増と急拡大した。
ボストン・コンサルティンググループ(BCG)の試算によると、トークン化された現実資産(RWA)市場は2035年までに88兆ドル規模(投資可能資産の約16%)に拡大すると予測されており、現在約3兆ドル規模とされる仮想通貨およびステーブルコイン市場を大きく上回る見通しだ。
英国経済への影響については、2035年までに年間最大330億ポンド(約7兆1,700億円)の経済効果と、年間140億ポンド(約3兆円)の税収増が見込まれるという。
英金融行動監視機構(FCA)の元会長でトークン化推進役のクリス・ウーラード氏は、トークン化市場は取引効率の向上や金融イノベーションの促進に加え、英国が国際金融センターとしての競争力を維持する上で重要な機会になると主張。
一方でトークン化市場は「ネットワーク効果」が働く分野であり、国際市場で主導権を維持するには、英国も最も俊敏に動く国々と同じスピードで、制度整備や市場構築を進める必要があると、ウーラード氏は危機感を示した。
報告書は、英国が競争力を高めるには既存の金融商品をトークン化するだけでは不十分だと指摘。デジタルネイティブ資産やプログラム可能資産といった新しい資産クラス・市場モデルを生み出してこそ実現できるとしている。こうした新資産と、従来型金融市場のデジタル化を組み合わせれば、トークン化を大規模に進めながら金融エコシステムを高度化でき、英国はグローバル金融センターとしての地位をさらに強固にできるとの見方を示した。
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