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トークン化MMF・RWA、兆円市場への本格シナリオ|WebX2026

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WebX 2026 | セッションレポート

トークン化MMF・RWA、兆円市場への本格シナリオ

田中 勇毅 × 湯浅 光則 × 小林 英至

ブラックロック、フランクリン・テンプルトン、Securitize Japanが一堂に会し、トークン化MMF・RWA・トークン化株式の現在地と日本市場の課題を語り合った。機関投資家の参入条件、DeFiとの連携、そして「2033年に300兆円市場」を日本がどう獲りにいくか。大阪デジタルエクスチェンジ代表の朏仁雄がモデレートした40分間を報告する。

田中 勇毅

田中 勇毅

ブラックロック
グローバル・マーケッツ部長

2011年ブラックロック・ジャパン入社。トレーディング業務に従事後、2024年3月よりグローバル・マーケッツ部長としてトレーディング、セキュリティーズ・レンディング、キャッシュ・マネジメントを統括。デジタル戦略にも従事し、2025年1月よりグローバル・プロダクト・ソリューション部を兼務。

湯浅 光則

湯浅 光則

フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社
ディレクター / デジタル&フィンテック

デジタル資産とフィンテックの事業開発に従事。2012年レッグ・メイソン入社、同社買収に伴い2021年フランクリン・テンプルトン入社。旧三井信託銀行(現SMTB)、モルガン・スタンレー投信、日興AM、ウエリントンを経た資産運用のキャリアを持つ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。

小林 英至

小林 英至

Securitize Japan 株式会社
カントリーヘッド, ジャパン

米ブラウン大学・数理経済学、シカゴ大学MBA取得後、メリル・リンチ・キャピタル・マーケッツのニューヨーク本社に新卒入社。ゴールドマン・サックスを含む約4年間のウォールストリート勤務後帰国。マスターカード・ジャパン副社長などを歴任し、2020年2月にSecuritizeに入社。

朏 仁雄

朏 仁雄

モデレーター
大阪デジタルエクスチェンジ株式会社 代表取締役社長

あおぞら銀行でコーポレートファイナンスに係るベースを積み上げ、ITXにてベンチャー・買収投資に従事。ビットポイントジャパンを経てSBI証券で日本初のSTO公募案件を主導。2021年より大阪デジタルエクスチェンジ代表取締役社長。


トークン化MMFの仕組みと3つのユースケース

セッション冒頭、モデレーターの朏が問いかけたのは「トークン化MMFとはどんな商品で、誰がどう使っているのか」だった。まずブラックロックの田中が概観を示した。
田中 勇毅
ブラックロックはキャッシュマネジメントの領域でブロックチェーンをどう活用できるかを研究しています。現状、トークン化MMFを購入しているのは機関投資家が多く、その中でもオンチェーンで活動するいわゆる「オンチェーン投資家」が中心でした。ただ最近は伝統的な金融機関のお客様もこの領域に関心を示し始めています。
使い方は大きく3つあります。1つ目は、利回りのつかないステーブルコインの代わりにトークン化MMFを保有して利回りを得ること。2つ目はトークン化MMFを裏付け資産としてステーブルコインを発行すること。3つ目は担保として使い、レバレッジを効かせること。この3つが海外で広まっています。
補足:従来の投資信託(MMF)は担保としての活用が難しかった。ブロックチェーン上であれば保有者の記録をリアルタイムで管理・移転できるため、担保活用が可能になる点が大きな差異とされる。
湯浅 光則
フランクリン・テンプルトンは2021年にアメリカで初のトークン化MMF「BENJI」を立ち上げました。中身は何も変わりません。米国の短期金利に連動し、50数年間一度も元本割れしていない商品をトークン化しただけです。最初はブロックチェーンでコストが削減できるかもしれないという実験から始まりました。
内製化しているので秒単位で権利の所在が分かる。P2Pで24時間いつでも移転できる。担保として使えば、お金が眠らず働いている状態を作れる。こうしたユーティリティが従来のMMFとまったく違うところです。企業間の支払いや、M&Aの対価としての活用実例も出てきています。

DeFiとの連携と機関投資家参入の条件

トークン化MMFの成長を支える大きなドライバーとして、DeFi(分散型金融)との接続が論点に上がった。Securitize Japanの小林がこの問いに正面から答えた。
小林 英至
DeFiはもともとパーミッションレスの世界で、誰でも参加できる前提で設計されています。機関投資家や金融機関がそこに触れるには、そのままでは不十分で、さまざまな仕掛けが必要です。「取引相手は誰か」「KYCされているか」「資産の透明性はどうか」といったところを大手金融機関は必ず問われます。
2024年3月にブラックロックとBUIDLを立ち上げた前後で、グローバルのトークン化MMF市場規模は約20倍になりました。成長の最大のドライバーはDeFiでの担保活用です。MMFのリターンをループで増幅できるため、やらない機関投資家は競合他社に負けてしまう。今その状況が生まれつつあります。SecuritizeはAAVEやUniswapなどのDeFiプロトコルと連携し、機関投資家が触れる環境を少しずつ整備しています。
田中 勇毅
ブラックロックは運用会社ですので、お客様がリターンを求めるなら、それに応える商品を提供するのが使命です。DeFiのエリアは今後さらに広がる可能性があり、実際に広がっています。大前提として規制への準拠はありますが、その範囲内でどう活用できるかを常に考えています。
湯浅 光則
投資家を騙すツールにならなければ、DeFiプレイヤーがクリエイティブに活用していくことは大いに歓迎です。バニラのMMFの上にDeFiがさまざまな付加価値を乗せていくイメージです。

トークン化株式の可能性

MMFに続いて急速に注目が集まっているのがトークン化株式だ。小林が発行体・株主それぞれのメリットを整理した。
小林 英至
株式をトークン化すると、発行体にとっては株主名簿の管理が劇的に変わります。取引が完了したその日に株主が誰かすぐ分かる。議決権行使もオンラインでいつでも、ほぼコストゼロでできます。株主にとっては、P2Pでいつでも取引できる。取引所が閉まっている時間でも、クロスボーダーでも構わない。さらに自分がその企業の株主であることをウォレットで即座に証明し、リアルタイムで株主優待を受け取ることも可能になります。
株式は「経済的リターン」と「株主権利」の2つの要素から成っています。この両方をトークンで管理できるようになれば、それはおそらくトークン化の中で最も本丸と言えるほどの効果があります。
補足:SMTBのパブリックチェーン上でのファンドトークン化や、ソニー銀行のミュージックファンドのトークン化など、直近でも日本国内の事例が相次いでいる。いずれもSecuritize Japanが支援に関与していると小林は明かした。

日本市場の現状と「300兆円」への課題

WebX 2026 RWA・MMFセッション写真
議論の後半は日本市場に焦点が移った。グローバルでは急拡大するオンチェーンRWAだが、日本の状況は大きく異なる。
湯浅 光則
BENJIは外国投資信託の国内持ち込みなので、規制上のハードルはそれほど高くありません。なぜ日本に持ち込まないかというと、需要が見えないからです。大手証券会社に聞いても「自社の法人顧客リストを眺めて、すぐに投資しそうな先が想像できない」と言われます。現状、オンチェーンネイティブな企業が主な潜在顧客ですが、日本ではその数がまだ少ない。今は需要を一生懸命探しているところです。
田中 勇毅
日本で広げるためにはさまざまな課題があります。規制の問題、プロセス整備の問題。ただ、やるべきことは明確で、お客様が利便性とリターンの両方を実感できるユースケースを作ること。ガラケーがiPhoneに変わったように、生成AIが自然と普及したように、使えるものは使われるようになります。
小林 英至
あるコンサルティングファームの予測によると、2033年のグローバルRWAトークン市場は約3,000兆円に達するとされています。日本の金融市場のグローバルシェアを10%と仮定すれば、300兆円のパブリックチェーン上のトークン化市場が日本に存在しなければ、日本は負けということになる。今の日本はゼロです。プライベートチェーンはカウントしません。この7年で300兆円まで持っていけるかどうかが、我々が取り組む課題です。

セッション総括

モデレーターの朏は、国内のセキュリティトークン市場が依然プライベートチェーン中心の「閉じた市場」にとどまることを率直に認めながら、グローバル最先端で動く3名からの発言を次のように締めくくった。
「今日お話しいただいた内容はすべてパブリックチェーンの話です。その観点から見れば、日本は今ゼロ。でも2033年に向けて300兆円を目指せるかどうか、それが業界全体の課題です」
トークン化MMFからDeFiとの連携、さらにトークン化株式へ。グローバルでの技術実装が急速に進む中、日本市場においても利便性とリターンのユースケースをいかに具体化するかが問われている。
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