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日本の暗号資産ETFは米国の何を再現し、何を超えるか|WebX2026

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WebX 2026 | セッションレポート

日本の暗号資産ETFは米国の何を再現し、何を超えるか

朝倉 智也 × 水﨑 優駿 × 城 圭介 × 菊地 孝史

2028年の解禁が視野に入る日本の暗号資産ビットコインETF。先行する米国では約2年半で市場規模が最大2,000億ドルに達し、個人・機関を問わず幅広い投資家層を取り込んできた。本セッションでは、SBIグローバルアセットマネジメント代表取締役社長の朝倉智也氏、野村アセットマネジメントETFソリューション部の水﨑優駿氏、ブラックロック・ジャパン取締役の城圭介氏、東京証券取引所上場推進部長の菊地孝史氏が登壇。モデレーターのアンダーソン・毛利・友常法律事務所の長瀬威志氏の司会のもと、米国モデルの実像と、日本が超えていく可能性について議論した。

朝倉 智也

朝倉 智也(あさくら ともや)

SBIグローバルアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長

SBIグループの資産運用とデジタルアセット領域を統括。フランクリン・テンプルトンとのジョイントベンチャーを通じ、暗号資産ETFの組成を先頭で推進している。

水﨑 優駿

水﨑 優駿(みずさき ゆうしゅん)

野村アセットマネジメント株式会社
ETFソリューション部 プロダクト戦略チーム チームリーダー

「NEXT FUNDS」ブランドで東証に70本超のETFを展開し、運用残高は約58兆円。現在、暗号資産ETFの商品開発を進めている。

城 圭介

城 圭介(じょう けいすけ)

ブラックロック・ジャパン株式会社
取締役、プロダクト・ソリューション部門長、マネージング・ディレクター

米国での暗号資産ETF立ち上げを主導したブラックロックの日本法人にて、ETFプロダクト開発を担う。2028年に向けた日本市場への商品展開を準備中。

菊地 孝史

菊地 孝史(きくち たかふみ)

東京証券取引所
上場推進部 部長

2023年より東証上場推進部に着任し、ETFを含むプロダクト全般を管轄。400銘柄超・純資産額100兆円超の東証ETF市場の拡大を牽引している。


米国での2年半:誰が市場をつくったか

2024年に現物型ビットコインETFが解禁された米国では、2年半で市場規模が最大2,000億ドルに達した。その成長を牽引した投資家層の実像について、ブラックロックの城氏が詳細なデータを示した。
城 圭介
特定の1つのETFが約2年間でAUM(運用資産残高)800億ドルに達しました。通常のETFが同じ数字に達するには約8年かかるので、成長速度の速さは際立っています。当初の1年余りは個人投資家が約8割を占め市場を牽引していました。その後、デジタルアセットに慎重だった機関投資家も徐々に参入し、現在はざっくり個人が50%、IFAを通じたウェルス層が25%、機関投資家が25%という構成です。
ETFという商品がトラディファイとデジタルアセット、2つの世界の架け橋になっています。もともとETFを使っていなかった投資家が新たに参入するきっかけになり、伝統的金融に慎重だった機関投資家が入ってくる形も見られました。
補足:ブラックロックのビットコイン現物ETF「IBIT」は2024年1月の上場から約1年で運用残高500億ドルを突破。金ETFの「GLD」が同規模に達するまでの約5年を大幅に上回るペースで成長した。

日本市場の潜在力と「後発の利」

日本での再現可能性と、米国モデルを超えるためのポテンシャルについて、SBIの朝倉氏と野村AMの水﨑氏が語った。
朝倉 智也
暗号資産の取引口座1,400万は需要の下限だと思っています。これだけ世界の他国と比較して厳しい税制、最高55%課税、損益通算もできない、自ら確定申告が必要という環境でもこれだけの口座数になっている。それが2,800万のNISA口座とつながり、証券口座で20.315%の税率で取引できるようになれば、大きく変わります。
日本の家計金融資産は2,386兆円あります。そのわずか1%が暗号資産ETFに入るだけで、今の米国のAUM全体を超える規模になる。米国では熱狂と絶望の両方を2年半で経験してきた。後発の利として、日本は最初から「資産形成の中の分散投資の一部」として訴求できる。これが米国との最大の違いです。
水﨑 優駿
個人投資家が中心になるとは思いますが、将来的には兆円規模の残高に達する可能性があります。日本のETF市場は130兆円規模で、金(ゴールド)ETFでも兆円単位のものが出てきている。暗号資産ETFが市場の1%を占めるだけで1兆円を超えます。さらに公募投信(バランスファンド等)にまで広がれば、証券口座だけでなく銀行口座からも暗号資産へのエクスポージャーが取れるようになり、投資家の裾野が大きく広がります。

米国での商品イノベーション:スポット型から派生商品へ

米国の暗号資産ETF市場では、当初のシンプルなスポット型から様々な応用商品が登場している。城氏がその全体像を整理した。
城 圭介
2024年当初は特定のコインの現物価格に連動するシンプルな現物型でしたが、その後急速に商品の種類が増えています。複数コイン連動のインデックス型、資産規模に応じた加重平均型が登場し、さらにはステーキング型やプレミアムインカム型(ビットコインを保有しながらコールオプションを売って収益を得る戦略)も出てきました。また、リスク許容度が高い投資家向けのレバレッジ型や、ヘッジニーズに応えるインバース型、プロテクション(元本保護の床)をつけた商品など、伝統資産のETF市場で培われた手法がデジタルアセット分野にも応用されています。
補足:ステーキングとは、保有する暗号資産をネットワーク運営に活用することで報酬を得る仕組み。イーサリアム(ETH)はステーキングによる年率収益を持つため、ETF商品への組み込みが議論されている。米国ではETH現物ETFのステーキング機能解禁が検討段階にある。

日本での商品設計:東証と運用会社の視点

日本で暗号資産ETFを実際に上場・販売するにあたり、商品設計や制度面での論点について議論が交わされた。
WebX2026 ETFセッション登壇者
菊地 孝史
東証にETFを上場する場合、内国籍か外国籍かといくつかのパターンがあります。また金銭設定か現物設定かという論点もあり、現物の場合は証券会社が対応できるかが課題になります。ETFのエコシステム全体、決済・清算を含む、で検討していく必要があります。
水﨑 優駿
まず最初は、シンプルな暗号資産100%エクスポージャーを提供するピュアな商品から始めるのが適切だと思います。投資家が自分でアセットアロケーションに使う形です。その先には、バランスファンドに暗号資産エクスポージャーを組み入れることで初心者でも使いやすい商品が実現できます。デリバティブを使った戦略は米国でも人気化していますが、デリバティブを使うとNISA対象外になる点は注意が必要です。
補足:現行の日本では、暗号資産の現物取引に対して最高55%の総合課税が適用される。2028年施行予定の税制改正では現物取引・ETFともに20.315%の申告分離課税となる見通しで、証券口座での他商品との損益通算も可能になる予定。

現物取引とETFの違い:なぜETFを選ぶか

税率が同じになった場合、それでも暗号資産ETFを選ぶ理由はどこにあるのか。水﨑氏が投資家への説明の観点から整理した。
水﨑 優駿
最大の違いは証券口座で買えること。そして投資信託である以上、信託業法による受益者保護が図られます。現物取引と同様に流出リスク(ハッキングなど)はありますが、プロの信託銀行やカストディアンが資産を管理する仕組みが入ることで、一般投資家にとっての安心感が異なります。

2028年に向けた展望:官民一体で米国モデルを超えるために

セッション後半、各登壇者が2028年の解禁に向けた市場展望と、米国を超えるための条件を語った。
WebX2026 ETFセッション登壇者
城 圭介
最終的に目指したいのは、投資家の皆様に様々な資産へのアクセスをより容易にすることです。2028年に解禁された際には、それが投資のメインとなるのではなく、分散したポートフォリオの一部として検討していただけるよう、商品開発やマーケティングに力を入れていきたいです。
水﨑 優駿
良い商品を投資家の皆様に届けたいという思いは変わりません。業界の皆様と、ETFのエコシステムの皆様のお力をお借りしながら、商品開発を進めていきたいと思っています。
菊地 孝史
東証のETF市場は現在400銘柄超、純資産額100兆円超で、個人の受益者数が200万人を超え過去最高を更新しています。暗号資産ETFもポートフォリオの一部として加わることで、ETF市場全体のさらなる発展を期待しています。
朝倉 智也
2028年1月に向けてワクワク感しかありません。SBI証券でJPYCの給与振込から暗号資産ETFを買う新入社員、地方の銀行や郵便局でおじいちゃんおばあちゃんが孫のためにETF入りの投資信託を積み立てる、そういうイメージが湧いています。
ただ、政府に一つお願いがあります。政府が「2040年に家計金融資産の4割を株・投信・債券に」と言っている以上、その器としてNISA、来年からの子どもNISA、iDeCo、確定拠出年金の中に暗号資産の投信が入れるようにしてほしい。そうでなければ、日本でも米国と同じ「投機的な商品」のままで終わってしまいます。資産運用商品として重要なアセットクラスに育てるために、官民一体で取り組んでほしいと思います。
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