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null²転生、落合陽一が語るAI・Web3がひらく未来社会|WebX 2026

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WebX 2026 セッションレポート

null²転生、落合陽一が語るAI・Web3がひらく未来社会

落合陽一 × 宮城教和
WebX 2026最終日のCRYLステージ冒頭、落合陽一氏とマクニカの宮城教和氏が登壇した。大阪・関西万博で人気を集めた「null²(ヌルヌル)」の次章として、横浜ランドマークタワーの常設シアター「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」と、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)向けの新作を発表し、AI・Web3が変える「祭り」のかたちを語った。本レポートは、前半で登壇の内容を、後半で直後に行われた記者会見の内容をまとめている。
落合陽一
落合陽一
メディアアーティスト
1987年生まれ。境界領域における物化や変換をモチーフに作品を展開。筑波大学教授/東京大学准教授。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)テーマ事業プロデューサー。Prix Ars Electronica栄誉賞、STARTS Prize受賞など受賞多数。
宮城教和
宮城教和
サステナブルパビリオン2025/マクニカ
取締役 兼 DXコンサルティング統括部長 兼 web3準備室長
「技術を事業に変える」ビジネスプロデューサー。マクニカでDXコンサルティング統括部を率いる一方、落合陽一氏らと設立した「サステナブルパビリオン2025株式会社」で取締役を務め、「null²」の価値拡張に取り組む。
登壇

祭りの「転生」と物理性の価値

宮城氏がAI・Web3時代の「祭り」の意味を問うと、落合氏は物理的な祭りの系譜を語った。
落合陽一
物理的なお祭りをどう起こしていくかは、とても大切です。東京でオリンピック、大阪で万博、横浜で花博をやって、2030年へ。このループをどう作るかを考えています。去年のWebXでは「出張null²館」として3Dスキャンを出し、会場で1万5,000人が並んで身体をスキャンしたり、自分のAIを作ったりしていました。人間の身体をどうAIに変換して、みんなが持つ時代にするか。それが万博の裏テーマでした。
大阪は盛り上がりましたが、次は横浜です。転生の第1弾として、森に転生します。2027年の博覧会を成功させ、2030年へ。大きな祭りを作り続けたいんです。
補足:「null²(ヌルヌル)」は、2025年の大阪・関西万博で落合氏がプロデュースしたシグネチャーパビリオン。仏教哲学の「空」と計算機科学の「null」を融合し、特殊ミラー膜・LED・ロボティクスを組み合わせた体験型インスタレーションで、のべ約60万人が来場した。

デジタル発酵・蒸留と「味わう文明」

落合氏は、GREEN×EXPO 2027の新作〈null⁴(テトラヌル)〉の世界観を初公開した。
落合陽一
4棟の塔と庭で、テーマはデジタル発酵、デジタル蒸留、デジタルネイチャーなど5つ。今のAIはほうっておくと発酵します。夜に「LLMを作っておいて」と頼むと、朝にはできている。人間がマイクロマネジメントせずに作るシステムなので、発酵に近い。そのデータを蒸留して新しいモデルを作るのがデジタル蒸留です。
その庭で人がどう生きるのかが、デジタルネイチャーです。近代の「知る文明」は限界に来ています。人間が考えて解いていく時代は終わりつつあり、人類は「味わう文明」へと変わっていく。AIが裏で仕事をする間に、人間は肉体的に集まることが大切だった、と。だからこそ、その「味わう文明」を支える祭りが必要です。来場者が作品に触れ、花とともに過ごす。そんな体験の場として、横浜をつくっていきたい。
補足:GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)は、2027年3月19日から9月26日まで横浜市の旧上瀬谷通信施設で開催。テーマは「幸せを創る明日の風景」、有料来場者数1,000万人以上を見込む。落合氏の新作〈null⁴(テトラヌル)〉は会場内「SATOYAMA Village」に設置される予定で、〈null²〉の移設ではなく「転生」と位置づけられている。

AIエージェントとWeb3が支える運営基盤

世界観だけでなく、施設の運営基盤にもAIが組み込まれている。
落合陽一
ネクサスのチケットシステムは、AIエージェントが夜中に作ったものです。ある会社に見積もると「1,000万円」と言われましたが、200ドルのトークンで、寝ている間に朝にはできていた。AIが常にものを作り、脆弱性を見つけ、パッチを当てる。人間が考えてきた文明の外で、自動でシステムが作られ、監視され、検証されていくんです。
宮城教和
今回はWeb3の文脈にも挑戦しています。チケットは14歳以上から購入できる必要がある一方、仮想通貨ウォレットを実装したアプリは18歳以上に限られてしまう。そこで、アプリ側をWeb2の形にして対象年齢を下げつつ、その先でWeb3決済につなげる。Web3をボーダレスに保ったまま対象年齢を広げる、そんな新しい実装の形を模索しているところです。

null² NEXUS の全貌とチケット一般販売

後半では常設シアター「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」の内部が初公開され、その場でチケット販売が始まった。
落合陽一
LEDシアターは万博の2倍あります。祭りで盛り上がったものが常設で起こるのは、とても重要なことだと思っています。
補足:「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」は横浜ランドマークタワー5階に2026年10月14日オープン予定の常設イマーシブシアター。来場者のデジタルアバターと空間演出がシンクロする「Mirrored Body®」アプリ連携が特徴。〈null²〉→〈null²ⁿ〉→〈null⁴〉と、大阪から横浜(都市)、上瀬谷(森)へ続く「転生」の旅として構想されている。
null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)のシアターイメージ
記者会見
セッション登壇に続き、同日に記者会見が行われた。落合氏が登壇内容を振り返りながら、来年に向けた技術的な展望を語った。

園芸博とテトラヌルの位置づけ

まず、2027年のテトラヌルと5つのテーマの意味が、改めて語られた。
落合陽一
横浜の園芸博は、大阪万博と同じくBIE(博覧会国際事務局)に登録された博覧会です。園芸博でも最上位のA1クラスは、最終的に万博として登録されるので、どちらも万博。会場は旧上瀬谷、かつての米軍基地跡です。入場ゲートの奥に横浜市のパビリオンがあり、その奥に私のテトラヌルがある。国際園芸館や日本館などもありますが、メインは花の展示です。そこに、大阪のnull²が引っ越してきます。
4棟あるので、テーマはデジタル発酵、デジタル蒸留、デジタルネイチャーなど5つ。全部私の造語ですが、今の世の中はデジタル発酵するようになってきました。AIはだいぶ、発酵するようにものを作る。蒸留して情報を取り出すという言葉も、デジタル業界でよく使われます。計算機視点のデジタルネイチャーの中で、人がどう生きるのか、ホモ・サピエンスから人間はどう変わっていくのか、という議論です。
補足:GREEN×EXPO 2027は、BIE認定の最上位A1クラスの国際園芸博覧会。日本でのA1クラス開催は、1990年の大阪花博(国際花と緑の博覧会)以来、約37年ぶりとなる。会場は横浜市の旧上瀬谷通信施設で、約100ヘクタールを活用する。

個人が自作LLMを持つ時代へ

落合氏は、プロジェクトの原点と、来年に向けた展望を語った。
落合陽一
大阪ではRAG(検索拡張生成)で個人情報をAIに入れ、喋り方が変わる個々人のAIを作ろうとしていました。来年までには、小規模なLLMをトレーニングして、個々人が全く違うLLMを持つ状態があり得る。GoogleやOpenAI、Anthropicのものではなく、自分でトレーニングして持つ。今、鹿児島の個展で、私のデータだけで学習したLLMが8台同時に動いています。
AIが予想通り出てこない「ガチャ」のときは、トークンでカバーです。同時に走らせて数を出す。時間をトークンで買う時代なんです。重要なのは、AIでコストカットするのではなく、AIで全く違う大きな建物を作れるかどうか。そこにAIを使いたい。

null²ⁿ 開業前の現在地

横浜ランドマークタワーの「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」は、開業まで約3ヶ月に迫る。会場ではプログラム開発が続くが、ウェイティングリストは3万5,000人ほどに増え、平日でも初日はほぼ埋まってきているという。AIエージェントが構築したチケットシステムも、問題なく稼働している。
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