
「仮想通貨はトランプ政権の優先事項」
米国のスコット・ベッセント財務長官は23日、トランプ政権の暗号資産(仮想通貨)への取り組みやステーブルコインが米国に与える影響についてコメントした。ブルームバーグのインタビューにおける発言である。
もしステーブルコインが推進された場合、米ドルや米国債需要にどんな影響があるかと聞かれ、ベッセント氏は次のように答えた。
トランプ政権はデジタル資産を優先事項にしている。過去の政権はこれを抑圧し、海外に追いやっていた。
我々は、最高の規制標準やマネロン対策基準をデジタル資産、とりわけステーブルコインに提供したいと思っている。
これにより、短期的な見積りだけでも、2兆ドル(約285兆円)の米国債および財務省短期証券への需要を生む可能性がある。
ベッセント氏は、現在の米国債に対する需要は約3,000億ドル(約43兆円)だとも続けた。需要が約6.7倍ほどに膨らむと見積もっていることになる。
米ドル建てステーブルコインの多くが、裏付け資産として米国債を大量保有している。そのことから、ドル建てステーブルコインは世界の法定通貨における米ドルの優位性をデジタルにも拡張するものだと見られているところだ。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
米国上院では、ステーブルコイン規制法案「GENIUS法案」が8日に否決されたが、その後20日、審議進行が賛成66票、反対32票の大差で決まっている。
修正された法案では、消費者保護と倫理規定が強化された。トランプ一族がステーブルコイン「USD1」を発行していることから、民主党の一部からは利益相反だと法案に懸念が上がっていたが、ギリブランド議員は「法案の主目的はステーブルコイン規制であり、大統領の倫理問題全てに対処する必要はない」と発言している。
ベッセント財務長官も、8日の否決後に「法案はドル支配力と金融イノベーションにおける米国の影響力を拡大する千載一遇の機会だ」と指摘。法案なしでは海外にステーブルコインのイノベーションが追いやられてしまうと警告していた。
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関税交渉の行方は
ベッセント氏は、トランプ大統領の関税交渉の行方についても見解を述べた。
米国が90日間の関税交渉の一時停止措置を設けたことについて言及している。18の主要な貿易相手国が関係しているが、その中でも英国との取引はすでに完了したと指摘。今後数週間以内にいくつかの大きな取引が発表されると思うと続けた。
中国に対しても90日間の一時停止を設けており、再度直接交渉を行う予定だとしている。また、関税率を10%に引き下げるかどうかは、各国が誠実に交渉のテーブルにつくかどうかに左右されるとも話した。
また、EUについては27か国がそれぞれ異なるニーズを持っているが、中でもドイツのメルツ新首相が、米国とドイツの関係をリセットする機会を提供してくれるのではないかと楽観的に考えていると述べた。
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