- 8名の議員が2026年7月31日までの書面回答を要請
- AI群衆行動によるボラティリティ増幅リスクも指摘
AI自動取引に懸念高まる
米下院の民主党議員8名は23日、米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンズ委員長に書簡を送り、AIエージェントによる投資助言や自律取引サービスに関してSECの見解を明らかにするよう求めた。
ビル・フォスター議員(金融機関小委員会野党筆頭委員)、ブラッド・シャーマン議員(資本市場小委員会野党筆頭委員)、ステファン・リンチ議員(デジタル資産・フィンテック・AI小委員会野党筆頭委員)ら8名は、AIエージェントが個人投資家に代わって株式や暗号資産(仮想通貨)、オプションを自律的に売買するサービスが普及し始めている中、証券規制の枠組みや責任の所在が曖昧なまま運用が続いていると警鐘を鳴らしている。
個人向け証券取引プラットフォームでは、AIエージェントを自身の取引口座に接続することで、ユーザーに代わって投資判断や注文執行を自動化するサービスが登場している。こうしたサービスはすでに株式、仮想通貨、オプション取引に対応しており、将来的には予測市場や先物取引などへ対象が拡大する可能性もある。
議員らが特に問題視しているのは、AIサービスの利用規約だ。
エージェント型取引サービスの開示情報では、証券会社(ブローカー)はAIエージェントが出力する情報の正確性・完全性・適合性を保証せず、エージェントに対する管理・監督・監査や推奨も行わないと明記されている。また、同サービスは「重大なリスク」を伴うと警告し、AIの誤作動、指示の誤認、不完全または古い情報に基づく実行、予期せぬ挙動の可能性などを列挙している。
しかし、このような包括的な免責事項は、AIエージェント取引ツールの規制上の位置付けに差し迫った課題を突きつけていると議員らは指摘。証券会社、AI開発者、個人投資家の間で法的責任の所在が曖昧になっている点に強い懸念を示している。
また書簡では、AI開発企業が実質的に投資判断の支援・代行を可能にするシステムを提供しているにもかかわらず、その多くが証券規制の対象外で事業を展開している現状にも疑問を呈した。
投資家保護の面では、生成AIモデルの学習データに偏りや利益相反が含まれる可能性や、個々の投資家のリスク許容度や財務状況をAIが正確に把握できず、適合性の原則に反する取引が行われるリスクがある。
さらに、市場全体のシステムリスクとして、多数の投資家が類似したAIモデルを利用すると、同じ市場シグナルに反応して売買が集中する「群衆行動(ハーディング)現象」が発生し、ボラティリティ上昇や市場の健全性低下を招く恐れがあると指摘。特にAIが自律的かつ高速に大量の取引を実行できる場合、そのリスクがさらに増すと警告した。
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新たな規制に向けた13の質問
書簡では、SECが2023年に公表した、ブローカー・ディーラーや投資顧問によるAI・予測データ分析の利益相反を規制する提案を踏まえ、生成AI時代に対応した新たな規制の検討を求めている。
議員らはSECに対し、2026年7月31日までに13項目について書面回答を要請した。主な内容は次の通り。
SECの関与とこれまでの対応
- SECはブローカーやAI開発企業とどの程度協議したか。AI取引の開始にあたり、 事前承認・免除・ガイダンスは提供したか。
- 安全策について:資金・ポジション・注文サイズの制限、取引ログ・顧客紛争処理などの管理基準・安全策を要求・推奨しているか
業者・開発者の法的責任と登録義務
- 投資家のAIエージェント利用により、ブローカーの連邦証券法に基づく義務(顧客の最善利益を追求する義務、監督義務、最良の執行義務など)は変更・制限・免除されるか
- AI開発企業は、証券法・投資顧問会社法に基づきブローカー・ディーラーや投資顧問としての登録義務を負うべきか。
- AIエージェントまたはAIエージェントの提供・管理者は、顧客に対する受託者責任や利益相反の開示義務はあるか。
- AI開発企業は、顧客のポートフォリオや投資傾向などの機密情報を販売・利用する際、既存の顧客情報保護ルールの対象となるか。
AI特有のリスクとSECの法的権限
- SECは、特定の生成AIモデルが、証券法(不法行為・相場操作の禁止、適合性原則など)を遵守できる能力があるか分析を行ったか。
- SECは、類似のデータで訓練された複数のAIエージェントが一斉に同方向の売買を行うことで、ボラティリティの増幅や市場操作(群集行動)につながるリスクを評価したか。
- SECは、AIの幻覚(ハルシネーション)、古い情報や改竄された情報、AIへの不正指示を用いた攻撃、SNSの噂等に基づいて、AIが自動取引を行ってしまうリスクを評価したか。
- 現行のSECの法定権限だけでAI自動取引のリスクに十分対処できるのか、あるいは連邦議会による新たな立法措置が必要か。
議員らは、生成AIは投資家の情報収集や投資判断を支援する有望な技術である一方、適切な安全策がなければ個人投資家や市場の健全性に重大な影響を及ぼしかねないと指摘。規制市場における適切な投資家保護を維持し、利益相反の隠蔽や証券会社の責任逃れ、市場操作、不適切な投資助言に利用されないよう、SECに早急な対応を求めた。
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