CoinPostで今最も読まれています

金融庁主導で仮想通貨取引所ハッキングなど補償体制整備へ:実現すれば業界に追い風

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨の流出リスクを抑えるために
ロイターの報道によると、仮想通貨不正流出に備えた交換業協会の自主規制案で、リスク相応額を銀行預金や国債等の安全資産で保有するよう義務付けた。各国仮想通貨保険の現状をまとめた。

仮想通貨の流出リスクを抑えるために

ロイターの報道によると、先月発生した国内大手取引所「Zaif」のハッキング被害で、顧客への補償を行うにあたり、仮想通貨取引所を運営するテックビューロ社の自己資金では約50億円不足していたことが、利用者保護の観点から金融庁からも問題視されていたという。

ロイターが入手したという仮想通貨交換業協会の「自主規制原案」では、オンライン環境で利用者から預かった仮想通貨の秘密鍵を管理する場合、サイバー攻撃による秘密鍵の喪失リスクを評価したうえで、当該リスクに見合った額を銀行預金や国債、地方債などの安全資産で保有するよう義務付けた。としている。

秘密鍵とは
口座の所有権を証明するプライベートキー(暗号)。 サイバー上の実印のようなもので、漏洩した場合はハッキングリスクが増大するため、厳重に管理する必要がある。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

この原案では、保全対象額について銀行などとの間で「保全契約」を結ぶように求めているとされており、利用者から預かった仮想通貨が不正流出した場合に備え、損害賠償方針の明記を義務付けることも盛り込まれているため、もし実現すれば、仮想通貨のネガティブなイメージの払拭に向けて大きく前進することになりそうだ。

金融庁の認可を受けた仮想通貨取引所の運営企業16社で構成された、「仮想通貨交換業協会」の担当者はノーコメントしており、正式決定後の公式発表ではないが、同組織は資金決済法に基づく「自主規制団体」に認定するようすでに金融庁に申請しており、認可された場合は、「自主規制ルールが各社に適用され、協会による会員各社への処分も可能になる。」とされる。

なお、日本仮想通貨交換業協会が公表した「仮想通貨交換業に関する自主規制」は、他にも仮想通貨の取り扱いや利用者財産の管理など、12項目が盛り込まれている。

その後も活発な議論が行われており、金融庁主導の仮想通貨研究会でもこの草案に沿った内容が公開され、有識者と各省庁がいる場で意見が交わされている。

これらの自主規制原案を含め、各社に適応される動きが実現した場合、一般投資家が抱く仮想通貨に対する漠然としたマイナスイメージ(仮想通貨投資は危険、恐いなど)が大きく改善することが期待できることから、日本の仮想通貨業界に取って追い風となる。この自主規制団体が認定団体として発表されるタイミングが、大きなターニングポイントに一つとなるだろう

オンライン保険サービス「CryptoIns」

無論、仮想通貨のハッキング被害は、各国の規制当局や取引所側がどんなに優れたセキュリティ対策をしても、100%防ぎ切れるものではない。

資産保全の重要性が高まっている現状を受けて、2018年10月上旬には、スイスの保険仲介業者Aspis SAによる、初のオンライン保険サービス「CryptoIns」がサービスが開始された。

このサービスは、仮想通貨取引所やウォレットなど個人アカウントの仮想通貨資産を保険対象としており、ハッキング被害に対しては全額が保障されるという仕組みだ。ハッカーなど悪意のある行為によって取引所がダウンした場合にも、保険が適用される。

韓国メディアによると、韓国の大手保険会社ハンファでも、国内仮想通貨取引所向けのハッキング被害に対する保険サービス提供を予定していると報じられており、取引所のハッキング及びセキュリティ対策は喫緊の課題となっている。

すでに一部取引所では「サイバー保険」を掛けてはいるものの、保険の適用範囲は狭く、まだまだ課題が多いのが実情だ。

米国でも資産保全の動きが加速

また、ウィンクルボス兄弟が運営する仮想通貨取引所「Gemini」でも今年10月上旬、米国の大手保険会社から顧客資産保護を可能にする保険を取得したことが明らかになった。

「Gemini」のリスク部門責任者は、以下のように述べている。

顧客は、仮想通貨に対しても、一般的な金融機関と同等の保険適用を求めている。

保険会社に情報共有を続けていくことは顧客保護につながるだけではなく、仮想通貨業界全体の消費者保護に対する期待を高めることにも繋がるはずだ。

日本の仮想通貨保険

仮想通貨に関する保険の種類は、以下のようなものが存在する。

  1. 口座への不正アクセス(個人)
  2. 仮想通貨の盗難にあった個人を補償するもの

  3. サイバー攻撃による盗難被害(法人)
  4. 仮想通貨取引所を対象にしたもの

  5. 取引所のオペレーションミスや、内部不正による被害

2018年春時点で確認出来ていた、仮想通貨業界へ参入が確認されている保険業者は、以下の3社だった。

三井住友海上火災保険

資本金 約1,400億円
売上高 約1兆5,000億円
提携先ビットフライヤー
備考ビットコインとイーサリアムに対応した盗難保障サービスを提供

損保ジャパン日本興亜

資本金 約700億円
売上高 約2兆5,000億円

東京海上日動火災

資本金 約1,000億円
売上高 約2兆1,000億円
備考コインチェック社と「仮想通貨保険契約」を締結

保険会社のリスク

ただし、今年1月に発生したコインチェック巨額流出事件の例では、保険は適用外となっている。

コインチェック社は、2017年3月に東京海上日動火災と「仮想通貨保険契約」を締結していたが、『ネットワークエラーなどで通貨を送金できなかった際に、加盟店の損失を補償する』という内容のもので、不正アクセスによる被害は対象外となっていた。

保険会社は、過去の事例から商品開発や価格設定を行うため、歴史が浅く発展途上である「仮想通貨」の補償に関しては、課題点も少なくない。

サイバー保険同様、仮想通貨の保険市場には、「リスクアセスメント(リスク特定、リスク分析、リスク評価を網羅するプロセス)」から始まることで、長い時間を要するとされる。

相場が乱高下することによる、変動性の高さに加え、数十〜数百億円規模の巨額流出が起こり得る仮想通貨取引所のハッキング被害への補償は、保険会社のリスクも甚大なため、慎重にならざるを得ないという現状もあるようだ。

保険会社側の対策としては、責任準備金が巨額になりがちな航空保険や大規模自然災害などと同様、当座預金を大幅に上回る超えるリスクを補うため、再保険に加入するという手段も考えられる。

今後、仮想通貨業界の健全な発展のため、銀行や証券会社のように、より充実した顧客保護システムの登場が望まれている。

CoinPostの関連記事

仮想通貨取引所のセキュリティ比較・解説|ハッキング被害を避けるために
仮想通貨取引所のセキュリティ比較記事です。ハッキング被害などが取り沙汰され、仮想通貨のセキュリティ懸念が強まる中、安全性の高い取引所について、比較・解説しています。
レジャーナノ(Ledger Nano S)の使い方|仮想通貨を安全に管理する方法
仮想通貨取引所のハッキングリスクが問題になる中、仮想通貨資産を安全に保管できるコールドウォレット『Ledger Nano S(レジャーナノS)』の購入方法や初期設定方法、リップル(XRP)の送金・入金方法など使い方を詳しく解説。26種類の対応仮想通貨一覧もあるので、参考にどうぞ。
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
05/11 土曜日
15:00
ビットコイン上のステーブルコイン発行計画 Taproot Assetsのテストが進行
Lightning LabsのCEOエリザベス・スターク氏が、暗号資産(仮想通貨)ビットコインのブロックチェーンにステーブルコインを導入する新技術「Taproot Assetsプロトコル」について解説。ライトニングネットワークを使った即時、低手数料の国際取引が可能に。
14:00
「Friend.TechなどでBaseがイーサリアムL2を主導」フランクリン・テンプルトン分析
フランクリン・テンプルトンは、仮想通貨ブロックチェーン「Base」がFriend.Techなどソーシャルファイに牽引され、今後も代表的なイーサリアムL2であり続けると予想した。
12:45
日本代表団、スイスのDFINITY本部を訪れる
平将明氏および加納裕三氏を含む日本の代表団がDFINITY本部を訪問。DFINITYが推進するInternet Computerは、高速で広範なブロックチェーンベースのプラットフォームで、スマートコントラクトとデータシャーディングにより、効率的なWeb3アプリの開発を可能にする。
11:20
米SEC、コインベースの仮抗告を却下するよう申し立て
米SECは仮想通貨取引所コインベースとの裁判で新たな書類を提出。コインベースが証券性をめぐり求める仮抗告を退けるべきだと申し立てている。
10:00
著名投資家マーク・キューバン氏、SECゲンスラー委員長を批判
著名投資家マーク・キューバン氏は米大統領選挙で仮想通貨も争点の一つになると意見した。また米SECのゲンスラー委員長に批判を向けた。
09:00
米大手銀ウェルズ・ファーゴ、複数のビットコイン現物ETF銘柄を保有
ウェルズ・ファーゴを含むいくつかの金融大手はビットコインETFが1月にデビューしたのち、それらの取り扱いを開始した経緯がある。
08:00
米ARK、イーサリアム現物ETFの申請からステーキング要素取り除く
現在、5月中に仮想通貨イーサリアムの現物ETFが承認される期待はすでに大幅に後退。専門家らはその可能性を2ヶ月前の約70%から25%に引き下げた。
07:30
J・ドーシー氏「2030年のBTC価格は100万ドル超へ」
2030年のBTC価格は100万ドル超まで上昇する可能性があると強気な見方を示すなど、ジャック・ドーシー氏が仮想通貨ビットコインの魅力を語った。同氏は以前からビットコインを支持している。
07:00
ソラナJupiter、モバイルアプリのリリース時期発表
モバイル版の最新情報のほか、Jupiterは第三回のLFG投票の予定についても情報を公開。来週あたりに新たなローンチパッド候補の仮想通貨プロジェクトを公開し、5月22日から投票を開始する。
05/10 金曜日
18:29
SBIとチリーズ、スポーツファントークンで提携
SBIデジタルアセットホールディングスとChilizが戦略的パートナーシップに関する基本合意を締結。日本で合弁会社を設立し、スポーツファンにファントークンを提供する。
18:26
L2 Blastチェーン基盤の分散型取引所「DTX」とは トレーダーの優位性を解説
暗号資産(仮想通貨)デリバティブトレーダーの間で関心の急増する分散型取引所「DTX」のメリットや優位性を解説。DTXはイーサリアム(ETH)レイヤー2のBlast(ブラスト)チェーン基盤であり、DTX Fuelによるエアドロップも示唆されている。
18:10
NTTドコモ、新会社設立でWeb3・AI事業など強化へ
株式会社NTTドコモは2024年7月に新会社「NTTドコモ・グローバル」を設立する計画を発表。NTT Digitalも傘下に集約し、Web3やAIを活用したグローバル事業を強化する。
14:48
バイナンス、大口顧客DWF Labsによる市場操作報道を否定
大手仮想通貨取引所バイナンス(グローバル版)は、ウォール・ストリート・ジャーナルが報道した、同社のVIP顧客DWF Labsによる市場操作と内部調査に関する疑惑を強く否定した。
12:43
ビットコインなど仮想通貨相場反発、ビットバンク関連会社のセレスがストップ高
暗号資産(仮想通貨)市場ではビットコイン(BTC)が反発、株式市場では大手取引所ビットバンク(bitbank)を持分法適用関連会社にするセレスの決算が好感され株価がストップ高となった。
11:30
米仮想通貨大手DCG第1四半期決算 売上高が前年比51%増
仮想通貨コングロマリット企業DCGは2024年第1四半期(1~3月)の決算を発表した。連結売上高が前年同期比51%増の約356億円に達している。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア