CoinPostで今最も読まれています

2019年仮想通貨業界における重要視される法的問題とは何か|ブロックチェーン弁護士が考察

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ブロックチェーン弁護士が考察、「2019年仮想通貨・ブロックチェーンにおける重要法律問題」とは 
豪証券投資委員会所属の弁護士などのキャリアを持つ、2019年にはNYでブロックチェーン業界関連の弁護士として活動予定のJenny Leung氏が「2019年仮想通貨・ブロックチェーン業界を定義づける法的問題」の考察文を発表し、特に米SECの規制動向やETF・EU一般データ保護規則等が注目。

仮想通貨・ブロックチェーンにおける法的問題とは

豪州の証券投資委員会所属の弁護士や世界有数の会計企業PwCのプライバシー・コンサルタントとしてのキャリアを経て、2019年にはニューヨークに拠点を置く法律事務所Blakemore Fallonでブロックチェーン業界関連の弁護士として活動予定のJenny Leung氏が米仮想通貨メディアCoinDesk に寄稿した、「今後の仮想通貨・ブロックチェーン業界を定義づける法的問題」の考察文の重要点を本記事で取り上げて、以下のように紹介する。

米SEC規制動向、グレーゾーン解消か

2019年、特に注目される業界関連の重要な法的問題とは米証券取引委員会(SEC)による規制動向だろう。

同委員会の企業金融部のディレクターを務めるWilliam Hinman氏は、2018年11月、首都ワシントンDCで開催されたFinTechカンファレンス「D.C. Fintech Week」で、SECがトークン・ブロックチェーン開発者向けに「理解しやすい英文書で書かれたガイダンス」の発表を計画中であることを明かした。

ガイダンスに関する詳しい記事はこちら

米SECが「仮想通貨ICOガイダンス」公開予定であると明言|有価証券の判断基準を明確化
SECのHinman氏が、今後ICOトークンの発行に当たる「有価証券」の判断を明確にするガイダンスを公開する予定であると発言した。今後ICOトークンの正当性にとって極めて重要なターニングポイントとなる事が予想される。

実際のところ、2018年は会議やインタビュー、個人的な陳述を通し、複数の重要な規制指針(あるいは見解)が発信された一方、取り締まりによってガイダンスを発信するような動きが強く見られたと、Leung氏は指摘している。

ガイダンスの正確な発表時期は不明ではあるものの、2019年は市場に大きな影響力を持つSECが証券・非証券の境界線を明確化することで、グレーゾーンの解消が期待される。

トークンの開発側にとっても『証券性』の有無や登録の必要性・不必要性を判断しやすくなるため、本来は有価証券に分類されるトークンが未登録トークンとして処罰されるといったケースを未然に防ぐことができるだろう。

一方で、12月21日、米国会下院議員Warren Davison氏とDarren Soto氏は共同で『トークン分類法 2018』と名付けられた米国初で仮想通貨を法的に定義する法案を正式に提出した。

重要視される箇条は、仮想通貨を有価証券から分離することであり、SECの規制よりも法案の明文化による透明性と確実性が期待されているものの、実際いつ国会で議論されるかは未だ予定が決まっていない格好だ。

分散型取引所(DEX)の課題

以上のような懸念点から、Leung氏は分散型取引所(DEX)の規制フレームワークに関する疑問を投げかけている。「未登録証券取引プラットフォームやそこで行われているプライバシー・コインの取引を、どのような手段で取り締まるのか」といった課題から、「SECによる仮想通貨関連のガイダンスにより、開発者が匿名化に走るのではないか」といった懸念まで、今後解決すべき課題は多々ある。

また、法的境界線が明確になることで、トークン開発者がそれを理由にグレーゾーンに逃げ込みにくい環境への移行が予想される。そのため、匿名に徹する開発者が増加する可能性が浮上する。

規制の国際基準化は必須

米国を筆頭に各国・地域で仮想通貨業界関連の動きが活発化するにつれ、国際基準化された規制の必要性が議論されている。Leung氏いわく、各国の規制当局は単独で活動するだけではなく他国の規制当局と協力し合い、恐らく証券・商品・送金・税法の調和を促進しつつ、法令違反に対処していく必要性に迫られるはずだ。

また、2018年はEU委員会がEuropean Blockchain Partnership (EBP)を発足させたほか、世界の証券監視当局や証券取引所で構成されている証券監督者国際機構(IOSCO)やBIS決済・市場インフラ委員会(CPMI)、主要国首脳会議(G7)に加盟する7ヶ国を含む合計20ヶ国が参加するG20、金融安定理事会(FSB)、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関による積極的なブロックチェーン推進の取り組みが見られた。

しかし「各国・地域の政府および規制当局のアプローチやスタンスが統一されていない点が、進歩を遅らせている」Leung氏は見ている。国際基準統一に向け各国・地域が協力し合うことで、効果的かつ効率的な規制環境が整うのではないだろうかと予想している。

EU一般データ保護規則(GDPR)がブロックチェーンにあたえる影響

2018年5月にEU全域にわたる個人情報保護法として導入された「一般データ保護規則(GDPR)」とブロックチェーンが、互いに与える影響も気になるところだ。

GDPRはEU圏外への個人データの移転禁止を始め、厳格な法的規制をもって個人情報の権利を消費者の手中に戻すことを目的としているが、規制事項の中にはブロックチェーンの特性と相違するものもある。

一例を挙げると、ブロックチェーンではデータ保管の永久性が特性の一つとなっているが、GDPRでは必要以上の期間、個人データを保持することが禁じられている。

現時点において、ゼロ知識の証明や秘密鍵の破棄など、GDPR準拠のための解決策がいくつか提案されているが、それらが消去法なのか匿名化なのかは未だ明確になっていない模様。

EU議会およびEU Blockchain Observatory and Forumのメンバーであるフランスのデータ保護当局(DPA)は、最も簡潔な解決法として「秘密鍵の破棄」などにより、データ主体が効果的に消去権を行使できるよう提案している。

Committee on Civil Liberties, Justice and Home Affairsの提案に従い、EUデータ保護委員会(EU Data Protection Board)が「ブロックチェーン技術がEUの法律に準拠していることを確認するためのガイドライン」の作成・発行を進めるか否かに、Leung氏は注目している。

GDPRに関する詳しい記事はこちら

ブロックチェーン技術の革新を妨げる危機に瀕している|EU一般データ保護規則の問題点
欧州委員会が設立した、EUブロックチェーンフォーラムのレポートで、一般データ保護規則(GDPR)とブロックチェーンを調和させることの難しさを指摘。イノベーションを妨げることに繋がる可能性を危惧した。

「ETF承認」 「プライバシーコインの廃止」の可能性も

Leung氏はほかにも「ETF承認」や「プライバシーコインの廃止」の可能性を、2019年の課題として挙げている。

最有力ビットコインETF候補とされるVanEck社の2度目の承認申請結果が、2019年2月27日までに発表される。この結果こそが、SECによるETF承認への方向性を決定づけるものとして、世界中の注目を集めている。

またゼロ知識証明やリング署名などの暗号化技術により、追跡が困難とされるジーキャッシュやモネロなどの匿名通貨に対する規制の圧力が増す可能性が懸念される。

日本では既に国内最大手の仮想取引所「コインチェック」が匿名通貨の特徴を有する銘柄:Zcash、モネロ、Dash、Augurの上場を廃止した。同取引所は2018年4月に行われたマネックスとの合同記者会見で、「金融庁の認可登録」を最優先課題とする意向を明らかにしていた。

なお昨年年末、米国土安全省(DHS)は、商業および政府による仮想通貨のメリットを認めつつも、Zcashやモネロが犯罪行為に使われた場合、どのように犯罪捜査・分析に活用できるかに注目を浴びせている中、今後政府からのプライバシー仕組みの対応に関しても追っていきたい。

▶️本日の速報をチェック

CoinPostの関連記事

今更聞けない:ビットコインは実際法定通貨より何が優れてるのか?|仮想通貨の金融変革に焦点を当てた分析レポートが公開
Bitcoinが世の中に受け入れられたら、金融システムは根本的に変わるのだろうか? 相場下落とともに期待感も下がりつつある状況下で、Bitmexが分析を行なったレポートを公開した。
最終可否判断を2月に延期した「ビットコインETF」の行方と可能性、米有識弁護士が最新動向を解説
米ワシントンDCの弁護士が、VanEck版「ビットコインETF」の最新動向に関する独自の見解を述べた。仮に本日が最終可否判断日だった場合、現時点での承認確率は10%だとしている。
CoinPostのLINE@

スマートフォンへの「プッシュ通知」で、相場に影響を及ぼす重要ニュースをいち早く知らせてくれる「LINE@」の登録はこちら。大好評につき、登録者8,000名突破。

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
05/21 火曜日
18:00
イーサリアム(ETH)の仮想通貨取引所 8社機能比較
イーサリアム(ETH)取引に最適な暗号資産(仮想通貨)取引所を比較。ステーキング、レンディング、各種手数料、機能、出金サポート体制を徹底分析。読者に合った取引所を見つけるためのガイド。
14:40
アルトコイン不振で取り沙汰される3つの理由について、大手VC「Dragonfly Capital」がデータ検証
仮想通貨投資企業Dragonfly CapitalのパートナーであるHaseeb Qureshi氏は、アルトコインが不振な理由について検証する記事を発表。最もよく知られている三つの理論について、データを使って反証した。
14:24
Binance Japan、MASKとCYBERの取扱いを発表
Binance Japan(バイナンスジャパン)は2024年5月22日から暗号資産(仮想通貨)現物取引でマスクネットワーク(MASK)とサイバーコネクト(CYBER)の取扱いを開始する。新たな銘柄追加で合計52銘柄に。
12:24
現物ETFの承認期待でイーサリアムが急騰、ビットコインは7万ドルの大台を回復
暗号資産(仮想通貨)市場では、専門家によるイーサリアム現物ETFのSEC承認確率が急上昇したことでETHが前日比20%高まで急騰。ビットコインは過去最高値に迫る7万ドルの大台を回復した。
11:30
イーサ財団ドレイク氏、Eigenの顧問就任で数億円の報酬受け取りを開示
イーサリアム財団の研究者ジャスティン・ドレイク氏は、Eigen財団のアドバイザーに就任し多額のトークンを報酬として受け取ることを開示した。
10:20
Gala Games、300億円相当のGALAトークンが不正鋳造 価格急落
Web3ゲームGala Gamesで何者かが2億ドル以上に相当する「GALA」トークンを不正に鋳造し売却した。管理者アドレスが悪用されたとみられる。
09:30
Sei、EVM互換へアップグレードの投票開始
仮想通貨イーサリアムとの互換性を持たせるため、L1ブロックチェーンのSeiがアップグレード実施のための投票を開始。投票後の計画も明らかになっている。
08:14
グレースケールに新CEO、ソネンシャイン氏が退任
ソネンシャイン氏がCEOだったグレースケールは過去の10年間、仮想通貨ビットコイン投資信託だけでなく、イーサリアムやソラナなどさまざまなアルトコイン投資商品も打ち出し、伝統金融に代替的な資産クラスを提供してきた。
07:45
バイナンス、中小プロジェクトの支援を発表
30年までに24兆円相当のトークンがアンロックを予定することなどを記載したレポートを発表した後、バイナンスは、優秀な仮想通貨プロジェクトに対し上場プログラムに応募するよう呼びかけた。
07:00
STEPN、ソラナスマホ保有者にコラボスニーカーを配布
STEPNはソラナスマホのGenesis Tokenの保有者に、特別なソウルバウンドトークン「STEPN x Saga Badge」も配布した。
06:20
最終判断期限迫るイーサリアム現物ETF、予想外の進展で承認観測強まる
仮想通貨イーサリアムの現物ETF上場申請に関して、SECから主要な提出書類を更新するよう突然求められていることが報じられた。イーサリアムの価格がニュースを受け高騰した。
05/20 月曜日
17:07
コインチェック、ブリリアンクリプトトークン(BRIL)のIEO予定を発表
コインチェックは20日、「Coincheck IEO」において、暗号資産(仮想通貨)ブリリアンクリプトトークン(BRIL)のIEO予定を発表した。本IEOは国内における6例目で、上場企業100%子会社による初のIEO。
16:39
仮想通貨企業の資金調達、2024年第1四半期に急増=レポート
大手投資データプロバイダー「PitchBook」は、2024年第1四半期の仮想通貨市場レポートを発表。ビットコインETFの承認を背景にスタートアップ企業が518件の取引で総額3,741億円の資金調達に成功したことが明らかになった。
14:03
米国の経済制裁対象国ベネズエラ、仮想通貨マイニングファームへの電力供給停止へ
ベネズエラ政府は、電力需要への影響を避けるため国内すべての仮想通貨マイニングファームを電力システムから切り離すと発表した。
11:46
ビットコインの週末相場は高止まり、オンチェーンデータは「利確フェーズ」の終焉を示唆
FRBの利下げ期待を背景にNYダウが史上初の4万ドルに達するなど米国株指数が好調に推移する中、オンチェーンアナリストはSOPR指標を分析。2ヶ月間の利確フェーズが終わりつつあることを指摘した。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/05/21 16:30 ~ 19:30
東京 SHIBUYA QWS (渋谷キューズ)
2024/05/23 14:30 ~ 15:30
その他 オンライン
重要指標
一覧
新着指標
一覧