CoinPostで今最も読まれています

国際決済銀行GM「デジタル通貨発行は必要ない」|仮想通貨や新たなお金に関する考えも示す

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

国際決済銀行のゼネラルマネージャー、「デジタル法定通貨の必要性はない」
国際決済銀行のゼネラルマネージャーCarstens氏は22日、ダブリンでの講演で「CBDC(デジタル法定通貨)の必要性はない」と発言。それが既存の技術より優れて機能することが示されていない点や、中央銀行が金融システムの変革を迫られていない点などを要因として挙げた。
CBDCとは
「Central Bank Digital Currency」の略。中央銀行が現在発行している紙幣を中銀の管轄下、ブロックチェーン上で仮想通貨として発行するデジタル法定通貨。世界各国の政府関係者がその可能性に言及しているが、現状実現化には至っていない。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

国際決済銀行GM、「デジタル法定通貨の必要性はない」

国際決済銀行(BIS)のゼネラルマネージャーを務めるAgustín Carstens氏は22日、アイルランドの首都ダブリンに位置する同国中央銀行で講演を行い、中央銀行発行のデジタル法定通貨(CBDC)の必要性は無いことを強調した。

世間の技術的変化は著しいが、その中でも中央銀行はその金融システムの見直しを迫られているとはしないのがCarstens氏の考えである。

同氏は、そのような技術的変化に関連してビットコインにも言及し、以下のように述べた。

歴史を通じて技術的革新は、マネーの性質や支払いシステムを含めた金融システムを継続的に変化させてきた。ここ最近についても例外でない。

ビットコインやそれに類似したものへの熱狂は今は冷めているようだがイノベーションは続くだろう。

そして昨今の新たな流れは、膨大な量のイノベーションと、金融システムの構成要素がターゲットにされている事実だ。

歴史的に支払いシステムの変更はめったになく、お金の性質の変化となるとさらにまれになる。しかし今では、新たなマネーや支払い方法を生み出す試みが毎週のように行われている。

Carstens氏は、「フィンテックスタートアップのがむしゃらな精神は金融システムに害を与える信頼性の低い技術を解き放つ可能性がある」とも発言しており、そのようなマネーに関連した活発にイノベーションを生み出す動きを懐疑的に捉えている。

中央銀行発行のトークンについても、それはマネーに大きな影響を与えることから慎重な姿勢が必要であるとして以下のように発言した。

通貨システムは金融システムのバックボーンだ。大手術の前に、我々が試みていることの完全な結果を理解する必要がある。

そして同氏は、世界人口の80%をカバーし60の国を代表する中央銀行を調査したが、それらはデジタル法定通貨に対して魅力を感じていなかったと結論づけた。

短期あるいは中期的にCBDCを発行する可能性が高いと考えている中央銀行は非常に少数だ。それに伴う問題を考慮した結果、中央銀行はそこへは立ち入らないことを決定した。

また、Carsten氏は、中央銀行はその金融政策の実施方法の変化を強いられていないとしながら、新しいテクノロジーが既存のテクノロジーよりも優れて機能することは証明されていないと主張。それに対する社会的な必要性も不明確であるとした。

そしてキャッシュレスシステムについても講演中で言及。依然としてほとんどの国において”現金が王“(cash is king)であると位置付けながら、以下のように述べている。

消費者や小売業者が電子的手段を採用するにつれて、多くの国で現金の需要は大幅に減少した。

その顕著な例はデンマークとスウェーデンであり、そこでは店やレストランは現金を受け入れることにますます消極的だ。インスタントモバイル決済ソリューションは急速に成長しており、スウェーデンの最新の調査によるとモバイル決済は現金と同じ頻度で利用されているという。特に若者については、現金の2倍の頻度でモバイル決済を利用しているデータが出ている。

しかし、依然としてほとんどの国で現金には高い需要がある。

実際に、流通する現金の量は電子決済と並行してここ10年で増加している。短期的には現金の代替となるものを用意する必要はないだろう。

しかし、将来的に様々な物事の変化が起こり得ることを考慮すると、中央銀行はそれへの準備を進めることを望むだろう。

日本の中央銀行である日本銀行の雨宮副総裁は2018年4月、「日銀がデジタル通貨を発行する計画は現段階で無い」と述べながらも、昨年後半などにも度々デジタル法定通貨(CBDC)について言及している。

雨宮副総裁の詳しい発言内容はこちらから

日銀雨宮正佳副総裁が語る「仮想通貨決済利用」と「中銀発行デジタル通貨」
日本銀行の雨宮正佳副総裁が、仮想通貨や中央銀行発行通貨に関する独自の見解を述べた。その中で、仮想通貨決済利用の普及の難しさとソブリン通貨に関連するデジタル通貨発行の見方が示された。

また国際決済銀行のゼネラルマネージャーであるCarstens氏はデジタル法定通貨に関して現在の需要は低いと述べているが実際に真剣に検討している国もあり、その主な代表例としてはマーシャル諸島と東カリブ海諸国が挙げられる。

マーシャル諸島のHilda Heines首相は米ドルが主に利用される同国のアメリカへの依存を危惧して、独自のデジタル法定通貨「ソブリン」発行に向けて昨年からデジタル法定通貨発行の計画を進めていた。

その他にも東カリブ海近辺の9ヶ国を統合する「東カリブ諸国機構」は今月上旬、独自のデジタル法定通貨「EC Dollar」発行に向けて今後1年間のパイロットテストを行なっていく計画を明らかにしている

上記2例の共通点として国家の規模が小さい島国である点と米ドルへの依存が大きなものとして挙げられるだろう。

キャッシュレス化に向けた政策が掲げられているものの、世界基準で見るといまだに大きく現金に依存している日本におけるデジタル法定通貨実現の可能性は低い。

しかし現金の利用率が低い国や規模の小さく、独自の法定通貨が米ドルなどに依存しているマーシャル諸島などでは実現へのステップも少ないため、東カリブ海諸国やマーシャル諸島の結果を伺う国家も見られるだろう。

▶️本日の速報をチェック

CoinPostの関連記事

世界初の「中央銀行発行デジタル通貨」実現へ|東カリブ中央銀行が1年間のテスト実施を発表
西インド洋の東カリブ諸国が加盟する東カリブ諸国機構の中央銀行は6日、仮想通貨技術を応用したデジタル法定通貨の発行に向け、1年間のテスト版を施行することを公表した。世界初の中央銀行発行通貨の事例として注目が集まる。
マーシャル諸島政府、年内のデジタル法定通貨「ソブリン」の発行を予定|仮想通貨の市況が戻り次第開始へ
独自のデジタル法定通貨「ソブリン(SOV)」の発行を目指すマーシャル諸島はイスラエルの送金企業Neemaと提携して、年内の発行を目指すことが判明した。
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
05/18 土曜日
13:00
米国のビットコイン現物ETFへの5月の流入額、4月の流出上回る
ブルームバーグのETFアナリストは、5月に入ってからの米国ビットコイン現物ETFへの流入は、4月の流出を埋め合わせたと指摘した。
11:10
米下院、SECの仮想通貨規制役割明確化の「FIT21法案」を採決へ
米国下院は、仮想通貨に対する規制を明確化し、CFTCに追加権限を与える「21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法」の採決を行う。
10:15
米コインベース、「来週イーサリアム現物ETF承認確率は30~40%」
米仮想通貨取引所コインベースはイーサリアムの今後を予測するレポートを発表した。ETH現物ETFが承認される時期などについて分析している。
08:50
仮想通貨取引所クラーケン、欧州でUSDT非対応を検討
テザーCEOは最近、MiCA規制を批判し、仮想通貨USDTで規制を受けるつもりはないと述べた。この姿勢が、欧州で事業を行っているクラーケンが、それらの通貨ペアの提供を停止する理由と見られる。
08:00
「仮想通貨上昇の鍵はマクロ経済」コインベース分析
仮想通貨相場上昇の鍵は今もマクロ経済であるとコインベースは分析。他にも、イーサリアム現物ETFの審査など規制動向も注視すべきだとした。
07:10
ソラナ価格、月末までに200ドル復帰か ヘッジファンド創設者が予測
仮想通貨ソラナの今後の価格について、ヘッジファンドSyncracy Capitalの創設者は強気な予測を示した。その根拠とは?
06:10
zkSyncエアドロップ期待再燃、分散化加速のアップグレードを実施予定
zkSyncは未だ独自の仮想通貨をリリースしていないが、主要zkロールアップであるライバルのStarkNetは2月にエアドロップを実施した。
05/17 金曜日
17:34
東京ビッグサイトで第5回ブロックチェーンEXPO【春】開催へ 無料申し込み募集開始
東京ビッグサイトで、日本最大級のブロックチェーン専門展である第5回ブロックチェーンEXPO【春】が開催されます。最新の研究からアプリケーションまで、ブロックチェーン技術のすべてが一堂に出展するイベントは必見です。
13:00
ワールドコイン、秘匿化技術で生体認証データの保護・オープンソース化を発表
暗号資産(仮想通貨)でベーシックインカム実現を目指す、ワールドコイン・ファンデーションが生体認証データ保護にSMPC技術を導入。そのシステムをオープンソース化した。セキュリティとプライバシーを強化するとともに、システムの普及拡大を目指す。
12:32
短期トレンド変化のビットコイン続伸なるか、ミームコインが牽引する場面も
CPI発表で急反発を見せた暗号資産(仮想通貨)相場ではビットコイン(BTC)が下降チャネルをブレイクアウトした。16日には賛否両論渦巻くミームコインが相場を牽引する場面も。
12:00
世界最大の証券清算機関DTCC、チェーンリンク活用した「Smart NAV」を実験
世界最大の証券清算・保管機関DTCCは、チェーンリンクを活用した「Smart NAV」の実証実験を行った。JPモルガンなど金融大手10社が参加している。
11:10
Slash Fintech、暗号資産決済でVプリカ販売サービス開始 NFT特典も実施中
Slash FintechがVプリカ販売サービスを開始。暗号資産(仮想通貨)決済でVプリカ購入可能。特典としてSlash Genesis NFTをプレゼント。利用方法から使い方まで解説。
10:00
ブラックロックのビットコインETF、アナリストが高評価
ブラックロックの仮想通貨ビットコインETFの購入者数は記録的な数字であると、ブルームバーグのシニアアナリストが高評価。レポートが提出され、ビットコインETFのパフォーマンスを分析した。
09:30
SECの仮想通貨保管ガイドライン覆す決議案、米両院で可決
米連邦議会上院は、下院に続き、SECが発行した仮想通貨の保管に関する会計公報を覆す決議案を可決した。議員やSECがコメントを発表している。
08:35
TON基盤の「Notcoin」、800億トークンをエアドロップ
仮想通貨NOTトークンはエアドロップの実施に際しBybitやOKX、バイナンスに新規上場した。現在0.0075ドルで取引されている。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア