チェーン横断するNAVデータを実験
世界最大の証券清算・保管機関DTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)は16日、DTCCのデジタル資産機能と、チェーンリンク(LINK)を活用した「Smart NAV」の実証実験を行ったと発表した。
様々なプライベートチェーンおよびパブリックチェーンに渡り、あるファンドの純資産価値(net asset value:NAV)データを持ち運ぶための標準化プロセスを探っている。分散型台帳技術を使用して現実資産(RWA)トークン化を推進することを目指すものだ。
DTCCが提供している、ファンドの価格や利率などのデータ(NAVデータ)を送信するための業界標準サービスや、投資信託に関する様々なデータを配信するMFPSサービスを広げることを検討するものである。
チェーンリンクの提供する相互運用性プロトコルCCIPも活用されている。CCIPとは、様々なブロックチェーン同士が、スケーラビリティ、取引スループットなどの機能で互いの強みを活かすことを可能にする技術だ。
今回の発表を受けて、チェーンリンクの価格は20%以上上昇した。昨年10月には、住友商事やボーダフォンらがCCIPを用いて、貿易に関するブロックチェーンの概念実証に成功している。
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RWAとは
「Real World Asset(現実資産)」の略。ブロックチェーン上でトークン化されるRWAには不動産、アート作品、トレーディングカード等の実物資産、株や債権等の有価証券などが含まれる。
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応用事例が広がる可能性
今回の実証実験には、BNYメロン、フランクリンテンプルトン、インベスコ、JPモルガン、MFSインベストメント・マネジメント、ステート・ストリートその他10社が参加した。
現在のところ、Smart NAVの中心的な機能は、特にビジネスワークフローにおいて、理論的にはすべてのブロックチェーン上で、信頼できる検証可能なデータを利用できるようにするものだ。
DTCCは、そうしたデータのプロバイダー、およびデータを保存するオンチェーンソリューションの運営者として役目を果たす。チェーンリンクのCCIPは相互運用性レイヤーとして機能することになる。
この実証実験では、構造化データをオンチェーンで配信し、標準化された機能やプロセスを作り出すことで、基礎データを多くのオンチェーンの用途に組み込めることがわかった。
ユースケースとしては、トークン化ファンドや、複数のファンドのデータを保持するスマートコントラクトなどが挙げられている。DTCCは、将来的には価格やレートのデータを分配する以外にも、様々な応用を検討できると述べた。
現在、資産トークン化は金融業界などから注目されているところだ。例えば決済大手マスターカードは、シティ、JPモルガン、スウィフトその他10社の大手金融と連携して、銀行決済用の分散型台帳技術をテストしている。
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また、国際決済銀行も4月、日銀など7つの中央銀行とともに、トークン化預金とCBDC(中央銀行デジタル通貨)で国際決済実験を行うと発表した。
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