CoinPostで今最も読まれています

イーサリアムが直面する健全性と検閲耐性の葛藤、リレイヤーの偏重

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

リレイヤーの集中化

暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のブロックチェーンについて、健全性と分散性に疑念の目が向けられている。

14日に生成されたブロック(トランザクションの束)のうち51%が、米財務省外国資産管理局(OFAC)の制裁措置に準拠した形で構成された。

主な要因は、バリデーターがブロック構築を委託する“リレイヤー”が、Flashbotsという制裁準拠型のプロバイダーに偏っていることにある。

リレイヤーとは、トランザクション処理の順序アレンジからMEV(最大抽出価値)を創出し、フィーを抜いた収益をバリデーターへ還元する中継組織。最終的にはバリデーターに紐づくステーキング参加者の収益率にも関わる。

リレイヤー経由のMEV市場は、Flashbotsチームがリリースしたオークションシステム「MEV-Boost」がトップシェアを占める。執筆時点で、イーサリアム・ブロックチェーンで検証された全ブロックの57%がMEV-Boostを使用したもの。このうち80.66%がFlashbotsでリレーされた。

Flashbotsは米VC大手Paradigm社の資本提供を受けており、トルネードキャッシュ等の制裁対象のアドレス関連の取引はブロックに含めない方針だ。

トルネードキャッシュとは

取引を匿名化するミキシングサービス。本来はユーザーのプライバシーを守る目的でイーサリアムチェーン上で構築されたが、ハッキング後の資金洗浄に使用される事例が続いた。

8月9日には米国財務省外国資産管理局(OFAC)がトルネードキャッシュのスマートコントラクトを制裁対象者リスト(SDN)に指定。米国人によるトルネードキャッシュの使用や事業関係を禁止した。OFACは同サービスが2019年の創設以来、1兆円(70億ドル)以上の資金の洗浄に使用されてきたと指摘した。

▶️仮想通貨用語集

関連:米制裁対象のトルネードキャッシュ、不正流出した7,000万円相当のDAIが入金

イーサリアムの検閲耐性

イーサリアムのリレイヤーの中には制裁非準拠型もあるが、ManifoldとbloXroute(Max Profit)以外はすべて制裁準拠型である。Flashbots(MEV-Boost関連)は取引の検閲を行うため、制裁対象関連のトランザクションを除外する。

出典:mevboost.pics

MEV-BoostやFlashbotsへの集中とトランザクション検閲の増加は、イーサリアムコミュニティに重大な危険をもたらすとして度々議論の的となってきた。

イーサリアムのPoS(プルーフオブステーク化「The Merge(マージ)」をきっかけに、イーサリアム上で生成されるブロックの制裁準拠シェア監視サイト「MEV Watch」が立ち上がった。

Flashbotsも分散性を強化する方向で、より多くのコードをオープンソース化してきた。現在までに、非検閲型のMEV-Boostリレイヤーとして2つ「ManifoldとbloXroute(Max Profit)」がリリースされている。

バリデーターは経済的インセンティブに基づいて複数のリレイヤーから選択できるが、現在のところFlashbotsを使ってブロックを生成する方がより最大抽出収益(MEV)を得られる状態にあるようだ。

ヴィタリック氏の見解

イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は17日、バリデーターが特定経路のトランザクションを除外(検閲)する行為について、「容認すべき」との見解を示した。

同氏はこれをバリデーター権限を損なうような問題ではないとしたが、検閲耐性や分散性を重視するビットコインコミュニティなどから批判を集めている。

きっかけは、単体のイーサリアムバリデーター(@latetot)が意見を求めたコミュニティ投票。仮に戦時中に対戦国への寄付を行うトランザクションを排除したバリデーターが存在した場合、どのようなペナルティを受けるか聞いた。

選択肢はイーサリアムのプロトコルに基づいて、①検閲により処罰(スラッシュ)の対象となる、②強制的 (非自発的) 退場の対象になる、③容認される、の3つ。

ブテリン氏は③を選択。①や②は、「ETHコミュニティを道徳警察に変えるリスクがある」とした。

私なら「容認される」かな。スラッシングや強制退場などは、他人のブロックを大量に作り直す場合にのみ検討されるべき。ブロックに何を入れるかについて用いるべきではない。

前提として、ETHバリデーターは不正レベルに応じてペナルティ(罰則)が課される。軽度のペナルティはETH残高が削減される。一方、スラッシュでは将来のある時点で強制的に除外され、かつそれまでの期間でETH残高にペナルティが課せられる。

ブテリン氏は「バリデーターが積極的な検閲を行うことはゴールではない(望ましくはない)」としつつ、スラッシュや退場の対象ではないと述べている。「どのレベルの違反に対してどのレベルの対応が適切かが問題だ」と加えた。

Consensysによると、バリデーターがスラッシュの対象となる要因は以下の2つだ。

  • ブロック提案者として、同じスロットに2つの異なるブロックに署名する
  • アテスターと​​して、バリデーターが定期的に提出する証明に矛盾を生じさせる

スラッシュを発動するにはバリデーターの内部告発により、違反者を明確にする必要がある。違反を含む特定のメッセージがネットワークに伝播し、提案者がそれをブロックに含めると、提案者と内部告発者の両方に報酬が与えられる。

関連:制裁準拠かステーキング事業停止か、コインベースCEOがPoS版イーサリアムへの葛藤示す

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
05/18 土曜日
13:00
米国のビットコイン現物ETFへの5月の流入額、4月の流出上回る
ブルームバーグのETFアナリストは、5月に入ってからの米国ビットコイン現物ETFへの流入は、4月の流出を埋め合わせたと指摘した。
11:10
米下院、SECの仮想通貨規制役割明確化の「FIT21法案」を採決へ
米国下院は、仮想通貨に対する規制を明確化し、CFTCに追加権限を与える「21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法」の採決を行う。
10:15
米コインベース、「来週イーサリアム現物ETF承認確率は30~40%」
米仮想通貨取引所コインベースはイーサリアムの今後を予測するレポートを発表した。ETH現物ETFが承認される時期などについて分析している。
08:50
仮想通貨取引所クラーケン、欧州でUSDT非対応を検討
テザーCEOは最近、MiCA規制を批判し、仮想通貨USDTで規制を受けるつもりはないと述べた。この姿勢が、欧州で事業を行っているクラーケンが、それらの通貨ペアの提供を停止する理由と見られる。
08:00
「仮想通貨上昇の鍵はマクロ経済」コインベース分析
仮想通貨相場上昇の鍵は今もマクロ経済であるとコインベースは分析。他にも、イーサリアム現物ETFの審査など規制動向も注視すべきだとした。
07:10
ソラナ価格、月末までに200ドル復帰か ヘッジファンド創設者が予測
仮想通貨ソラナの今後の価格について、ヘッジファンドSyncracy Capitalの創設者は強気な予測を示した。その根拠とは?
06:10
zkSyncエアドロップ期待再燃、分散化加速のアップグレードを実施予定
zkSyncは未だ独自の仮想通貨をリリースしていないが、主要zkロールアップであるライバルのStarkNetは2月にエアドロップを実施した。
05/17 金曜日
17:34
東京ビッグサイトで第5回ブロックチェーンEXPO【春】開催へ 無料申し込み募集開始
東京ビッグサイトで、日本最大級のブロックチェーン専門展である第5回ブロックチェーンEXPO【春】が開催されます。最新の研究からアプリケーションまで、ブロックチェーン技術のすべてが一堂に出展するイベントは必見です。
13:00
ワールドコイン、秘匿化技術で生体認証データの保護・オープンソース化を発表
暗号資産(仮想通貨)でベーシックインカム実現を目指す、ワールドコイン・ファンデーションが生体認証データ保護にSMPC技術を導入。そのシステムをオープンソース化した。セキュリティとプライバシーを強化するとともに、システムの普及拡大を目指す。
12:32
短期トレンド変化のビットコイン続伸なるか、ミームコインが牽引する場面も
CPI発表で急反発を見せた暗号資産(仮想通貨)相場ではビットコイン(BTC)が下降チャネルをブレイクアウトした。16日には賛否両論渦巻くミームコインが相場を牽引する場面も。
12:00
世界最大の証券清算機関DTCC、チェーンリンク活用した「Smart NAV」を実験
世界最大の証券清算・保管機関DTCCは、チェーンリンクを活用した「Smart NAV」の実証実験を行った。JPモルガンなど金融大手10社が参加している。
11:10
Slash Fintech、暗号資産決済でVプリカ販売サービス開始 NFT特典も実施中
Slash FintechがVプリカ販売サービスを開始。暗号資産(仮想通貨)決済でVプリカ購入可能。特典としてSlash Genesis NFTをプレゼント。利用方法から使い方まで解説。
10:00
ブラックロックのビットコインETF、アナリストが高評価
ブラックロックの仮想通貨ビットコインETFの購入者数は記録的な数字であると、ブルームバーグのシニアアナリストが高評価。レポートが提出され、ビットコインETFのパフォーマンスを分析した。
09:30
SECの仮想通貨保管ガイドライン覆す決議案、米両院で可決
米連邦議会上院は、下院に続き、SECが発行した仮想通貨の保管に関する会計公報を覆す決議案を可決した。議員やSECがコメントを発表している。
08:35
TON基盤の「Notcoin」、800億トークンをエアドロップ
仮想通貨NOTトークンはエアドロップの実施に際しBybitやOKX、バイナンスに新規上場した。現在0.0075ドルで取引されている。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア