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米英星の当局・専門家、いま「お金のルール」を書き換える AI・量子脅威などを議論|MoneyX 2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

AIと仮想通貨が交差する「新たな金融秩序」へ

次世代金融カンファレンス「MoneyX 2026」が2月27日、東京・ザ プリンス パークタワー東京で開催された。

「国境を超えて:世界の規制当局が、いま『お金のルール』を書き換える」と題したGFTN連携セッションでは、AI・ブロックチェーン・ステーブルコイン・量子コンピュータという4つの技術が交差する現在の金融システムをめぐり、米英シンガポールの規制当局・政策アドバイザーが議論を展開した。

登壇者は以下の通り。

  • Alan Lim(シンガポール金融管理局〈MAS〉 金融インフラ・AI局 局長)
  • Colin Payne(英国金融行動監視機構〈FCA〉 イノベーション部門 ヘッド)
  • Carole House(元米国ホワイトハウス顧問・Penumbra Strategies CEO)
  • Prof. Chia Tek Yew(NUS アジアデジタルファイナンス研究所 客員教授)※モデレーター

AIガバナンス、「公平性・倫理・透明性」の原則は今も有効

MASのAlan Lim氏は、シンガポールの規制アプローチについて「政策の視点」と「産業の視点」の二軸から説明した。

「AIそのものは決して新しい技術ではない。MASは数年前から公平性・倫理・説明責任・透明性という中核原則を定めてきた。この原則は今日の文脈においても依然として有効だ」とLim氏は述べた。

MASはこれらの原則を基盤として、テクノロジーリスク管理やモデルリスクガバナンスに関するガイドラインを整備。さらに最近ではAIリスク管理に関するコンサルテーションペーパーを公表し、業界との対話を深めている。

産業面では、大手銀行・資産運用会社・保険会社が参加するAIリスク管理コンソーシアム「MindForge」の取り組みを紹介。規制当局のガイドラインと民間のフレームワークが連動することで、責任ある形でのイノベーションを促進できると強調した。

英国、FTXを入れなかった「厳格さ」

FCAのColin Payne氏は、英国の仮想通貨資産認可ゲートウェイが今年8月に正式開始されることを説明。「成長とリスク管理はどちらかを選ぶものではなく、両立させるものだ」と述べた。

FCAはいわゆる「アジャイル政策」を採用し、業界と共同で新しいコンセプトを開発するサンドボックス制度を活用。今回の認可制度に先立ち、全658ページに及ぶ3本のコンサルテーションペーパーを昨年末に公表した。

Payne氏は英国の姿勢を次のように語った。「FTXを参入させなかった規制当局として、英国は仮想通貨分野で一切の妥協をしていない。ブレグジット(英国のEU離脱)は多くの痛みを伴ったが、欧州から独立した柔軟な規制設計が可能になったという意味で、一つの恩恵でもある」

欧州のMICA、米国の独自フレームワークとは異なる「バランスの取れた信頼できる第三の枠組み」として英国を位置づけ、企業が安心して参入できる環境整備を強調した。

米国、ドル覇権とAML規制の狭間で

元ホワイトハウス顧問のCarole House氏は、米国の政策転換について率直に分析した。

「ドルの優位性確保はバイデン政権でもトランプ政権でも最重要課題として掲げられてきた。しかし現政権は、それと並行して規制緩和や競争力強化を明確な優先事項として打ち出している」とHouse氏は述べた。

一方で、AML(マネーロンダリング対策)・テロ資金対策について懸念も表明。「世界規模でこれらの枠組みの有効性を評価・測定する仕組みが、いまだ確立されていない。米国が最大規模のドル建てP2P送金システムへの直接監督を手放すことは、ドル覇権の観点からも整合性があるとは言えない」と指摘した。

ステーブルコインのASEAN流入、規制当局はどう見るか

モデレーターから米ドル建てステーブルコインが東南アジアへ急速に流入している現状を問われたLim氏は、慎重な見方を示した。

「ステーブルコインが本当に実体経済の活動、例えば効率的な決済に使われているのか、それとも単なる仮想通貨取引の手段なのかを見極めることが重要だ。準備金管理の場所や単一・複数管轄にわたる発行体制の問題、さらにAML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)対応、将来的なセルフカストディウォレットやAIエージェントを通じた取引など、規制当局が検討すべき課題は山積している」と述べた。

GFTN、98の規制当局をつなぐ「実験の場」

FCAのPayne氏が議長を務めるグローバル金融イノベーションネットワーク(GFTN)には、現在98の規制当局が参加。AI・トークン化・量子という3分野を重点テーマとして取り組んでいる。

「昨日も17の規制当局を集めてAIエージェント型決済に関する円卓会議を開催した。単なるペーパーワークではなく、エヌビディアやAWSが支援する実際のデジタルサンドボックスで実験を行い、相互運用性を検証している」とPayne氏は説明した。

また、GFTNのアプローチについて「IOSCOやFSB(証券監督者国際機構と金融安定理事会)のような多国間フレームワークと補完関係にある。二国間・三国間・多国間のプロトコルを積み上げ、オープンソースの発想で成果を広く共有することが重要だ」と述べた。

なお同氏は昨日、英国初のスターリングステーブルコインがFCAの独自デジタルサンドボックスで稼働したことを発表した。

量子コンピュータの脅威

House氏は量子コンピュータが金融セキュリティに与えるリスクについて強い危機感を示した。

「仮想通貨が依存する暗号技術の大部分は、暗号解読能力を持つ量子コンピュータに対して極めて脆弱だ。他の非対称暗号技術も同様のリスクを抱えている。問題は、サイバーセキュリティへの投資でさえ進まない現状で、この規模のインフラ刷新を実現するには5〜10年単位の時間が必要になるという点だ」と警告した。

対策として、早急な自社インフラの棚卸し・近代化計画の策定、クラウドなどのハイパースケーラーへのホスティング移行の検討を推奨した。「彼らが量子耐性暗号を実装すれば、その上に乗っているすべてのインフラが恩恵を受ける」と述べた。

2030年の金融システム、「消えるもの」と「強固になるもの」

セッション最後に登壇者は2030年の展望を語った。

Payne氏は「決済(セトルメント)という概念が消えるだろう。ステーブルコインの普及と相互運用性の確立により、即時かつ透明でプログラマブルな決済が当たり前になる。逆に最も強固になるのは『信頼』だ。信頼を失えば金融サービスは成り立たない」と述べた。

Lim氏は「金融サービスの提供形態は変わっても、融資・送金・決済などコア機能の本質は変わらない。サービスのアンバンドルとリバンドルが進むだろう」と分析した。

House氏は「信頼技術(トラストテック)への投資が圧倒的に不足している。デジタルアイデンティティ・コンテンツ認証・トラストアーキテクチャへの投資こそが、今最も必要なことだ」と締めくくった。

MoneyXとは

MoneyXは、ステーブルコインの正式認可が切り拓く「通貨の新時代」をテーマとした次世代金融カンファレンス。国内外から金融業界の有識者、大手金融事業者、スタートアップ、投資家、規制当局が集結し、技術革新・制度設計・社会実装をめぐる議論を展開する。参加登録は無料・承認制。

日本最大のWeb3カンファレンス「WebX」を主催するWebX実行委員会が主催し、JPYC、Progmat、SBIホールディングス、CoinPostが企画・運営に携わる。

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