蘭、仮想通貨の全面禁止は非合理的
北欧オランダのWopke Hoekstra財務大臣は11日、同国における暗号資産(仮想通貨)規制は全面的な禁止ではなく、規制監督を促すべきと言及した。蘭経済政策分析局(CPB)のPieter Hasekampディレクターが全面禁止を促した発言に応じる形で見解を示した。
オランダ政府の経済見通しなどの分析を行う機関であるCPBのディレクターであるHasekamp氏は先週11日、ビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨の取引やマイニングなど、全面的な禁止を呼びかけた。仮想通貨は通貨として機能していない点、犯罪リスク、そして環境への悪影響を批判した格好だ。
同機関はオランダ経済省の傘下で、Hasekamp氏の役職は大臣に任命されるポジション。なお、調査などの分析結果は政府から独立して行われており、助言などは強制力は有さない。
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Hoekstra財務大臣はHasekamp氏の懸念に理解を示しつつ、完全な禁止令は規制監督に比べ、「あまり好ましくない」とコメント。資金洗浄のリスクなどもあるため、(取引)プロバイダにはルールが必要であると認めつつ、規制して(違法行為)を監督する方が「完全な禁止より効果的」であると述べた。
有識者からも反対の声
オランダ国内では、Hoekstra財務大臣以外でも仮想通貨の全面的な禁止を反対する声が挙げられている。
オランダの金融メディアRTL Zの株式市場コメンテーターであるJacob Schoenmaker氏は、「仮想通貨には本質的な価値がないと言うならば、それはユーロにも当てはまる」と述べ、仮想通貨には本質的な価値がないと主張したHasekamp氏に反論。
お金には(価値の交換手段として)信頼があるから価値があると述べ、厳密には50ユーロの紙幣も実際のコストは2セントに過ぎないと指摘した。
また、金融大手INGのTeunis Brosensエコノミストも全面的な仮想通貨禁止には反対すると発言。発表には驚いたと述べつつ、以下のように語った。
理論的には仮想通貨取引所やウォレット提供者を禁止することはできる。しかしブロックチェーンや個人保有のウォレット、そして海外で提供されるサービスなど、インフラ自体を禁止、制限するのは無理だろう。
仮想通貨全体を見渡せば、(Hasekamp氏の)言い分も分からなくはない。何百、何千ものコインは紙くず以下だ。単純にスキャムやネズミ講のコインもあるため、懸念は理解できる。
とした上で、その上で完全な禁止令は行き過ぎであると指摘。すでにスキャムや犯罪者に関する法律はあることから、「仮想通貨を全面的に禁止する必要はない」と主張した。
オランダの仮想通貨業界団体「Association of Bitcoin Companies」(ビットコイン企業協会)のPatrick van der Meijde会長は完全な禁止や良案ではない上、非合理的だと言及。ビットコインのオープンソースである性質から「(BTC)は人々が使えるソフトウェアで、占拠できるオフィスではない」とした。
オランダでは20年11月、中央銀行のオランダ銀行(DNB)が同国仮想通貨取引所に対し、ユーザーのアドレスや送信先アドレスなどの個人情報開示を要求していたが、業界団体の反対により規制要件の解除が決まったばかり。仮想通貨取引所Bitonicはオランダが「イノベーションを促進する事業環境」を謳っているのに対し、過度な規制はオランダ国内のイノベーションを害すると規制当局の対応を非難している。