- 米国議会の公聴会で仮想通貨を激論
- 経済学者のNouriel Roubini氏とCoin CenterのPeter Van Valkenburgh氏が識者として米国議会の公聴会へ招かれ、ブロックチェーンと仮想通貨エコシステムについて語った。
- 焦点はブロックチェーン技術が起こしうる問題と解決しうる課題
- Roubini氏は完全制御できない分散型台帳を企業や銀行が導入を進める訳がないと語り、仮想通貨は犯罪の温床だと批判した。 一方、Van Valkenburgh氏はブロックチェーンは社会インフラの脆弱性を改善しうる”希望”だと述べ、脱税などの犯罪には必ずお金が使われているものだと反論した。
米国議会の公聴会で仮想通貨を激論
経済学者のNouriel Roubini氏と、ワシントンを拠点とするロビーグループCoin Centerの調査ディレクターPeter Van Valkenburgh氏が識者として米国議会の公聴会へ招かれ、ブロックチェーンと仮想通貨エコシステムについて語った。
この公聴会は、上院銀行・住宅・都市問題委員会が主催したものだ。
正反対の立場を取る有識者2人
Roubini氏は、2008年の経済危機を予測した、数少ない経済学者の一人として知られる。
米国ニューヨーク大学で教授を務める同氏は、ブロックチェーン技術やその支持者に対して辛辣な姿勢を取っている。
彼は以前にも、仮想通貨の「ジニ係数」が北朝鮮並みだ、などと批判している。
「ジニ係数」とは、所得分配の不均衡を表す指標で、仮想通貨の富は”北朝鮮よりも偏って存在している”と主張した。
今回の公聴会でも、Roubini氏は以下のように口火を切った。
「仮想通貨は全ての詐欺の元凶だ…。ブロックチェーンは史上最も過剰評価された技術で、データベース以上のものではない。」
昨年のクリスマスやサンクスギビングでは会う人全てから仮想通貨を買うべきか問われたと述べ、「とりわけ、株と債券の見分けもつかないような金融知識ゼロの人間がビットコインや仮想通貨の狂気に取り憑かれている。」などと述べた。
一方、Van Valkenburgh氏は極端な態度はとらず、ブロックチェーンと仮想通貨は完璧でもなければ、現時点で完全に仕上がったものでもないが、様々な金融事情を改善しうる大きな一歩なのだと語った。
「ビットコインは、世界中から使える初の公共通貨だ。
完璧かと問われればそうではない、1972年にEメールが発明された時もそうだった。
ビットコインは全ての面で最高の通貨という訳ではなく、どこでも使える訳でもない。相場通りの値段で使えないこともあるし、安定した価値を有してもいない。」
「ただ、それでも機能している。信頼のおける仲介人もなしに機能するなんて驚きだ。」
とVan Valkenburgh氏は付け加えた。
激しい論戦の焦点は
委員会の1/3に相当する8名の上院議員が質問を投げかけ、犯罪活動や市場の動き、ユースケースなどについて満遍なく尋ねた。
今回の公聴会は議員教育を行うに留まったが、ブロックチェーン技術が起こしうる問題と、解決しうる課題について焦点が当てられた。
30ページに渡る事前資料を用意して臨んだRoubini氏は、完全なコントロール下におけない限り、企業や銀行は分散型台帳を導入することはないだろうと指摘した。
一方、Van Valkenburgh氏はお粗末なセキュリティの中央機関に情報集積することの潜在的リスクについて述べ、
「アメリカ人の約半分にあたる、1億4千万人分の社会保険番号が、Equifax社の漏洩で盗まれてしまった。」
と指摘している。
4億人分のクレジットヒストリーを保管する3大消費者信用情報会社のEquifax社は、2017年9月に巨大規模の情報漏洩を起こしている。
変更できない社会保険番号の漏洩による被害は計り知れない。
また、Roubini氏は仮想通貨が脱税などの犯罪の温床となっていると指摘し、匿名性が法務当局からの隠れ蓑になっていると批判した。
これに対しVan Valkenburgh氏は、
「脱税するのにお金を使わない方法があるなら知りたいものだ…匿名でもない。ブロックチェーン上の行動は追跡できるので、法執行機関や捜査官は、ブロックチェーンを使った捜査に取り組んでいる。」
と答えた。
イノベーション繁栄のために議会ができること
Van Valkenburgh氏はブロックチェーンの理想形を語るにあたって、多くの私的企業が社会に重要な銀行、通信などのサービスにおいて単一障害点(SPOF)となっている現状を指摘した。
単一障害点とは、その部分にダメージを受けると機能全体の障害が発生してしまうようなポイントを指す。
重要なインフラが何か1つや2つのものに完全依存しているべきではないと彼は述べた。
「ブロックチェーンはまだ全ての問題を解決できた訳ではないが、我々にとって最も大きな望みだ。90年代のインターネットのように、全てのアメリカ人が利益と安全を享受できるよう、アメリカにおけるイノベーションの繁栄をもたらす政策が必要だ。」