米財務長官、規制の厳格な適用を求める
米国のジャネット・イエレン財務長官は16日、暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの破綻を受けて声明を発表した。仮想通貨業界に対するより効果的な監督体制の必要性を呼びかけている。
イエレン氏は、財務省は過去一年の間に、規制当局とも協力して仮想通貨市場のリスクを特定してきたと説明。その中には「顧客資産を分別管理していないこと、透明性の欠如、利益相反」などのリスクが含まれており、FTX破綻に関しても、こうした問題が中心にあったと指摘した。
イエレン氏は、規制について次のように述べている。
私たちの金融商品と市場のほとんどについては、こうしたリスクに対処するための強力な投資家・消費者保護法が存在している。
既存の規制が適用できる場合は、仮想通貨や関連サービスにも同様の原則と消費者保護があてはまるよう、厳格に施行されなければならない。
イエレン氏はさらに、「議会を含め米国政府は、規制の隙間を埋めるために迅速に行動する必要がある」と続けた。
また、金融安定性の面からは、現在「仮想通貨市場で起きることがその外部にもたらす影響は限定的」とする一方、金融安定監督評議会が「従来の金融システムと仮想通貨市場の相互接続がさらに進めば、金融安定性に関して、今よりも大きな懸念が生じる可能性がある」と警告していることを指摘した。
このため、仮想通貨市場のリスクに対処するために必要なことを行い、消費者を保護し、金融システムの安定性を支えるために行動することが重要だと結論している。
金融安定監督評議会(FSOC)の報告書
イエレン氏が言及したように、金融安定監督評議会(FSOC)は10月、バイデン政権の仮想通貨大統領令に基づいて、「デジタル資産の金融安定リスクと規制に関する報告書」を公開していた。
金融安定監督評議会(FSOC)とは
英語でFinancial Stability Oversight Council。財務長官を議長として、米国の連邦・州の規制当局の幹部などから構成される。米国の金融システムの安定性を確保することを目的としている。
▶️仮想通貨用語集
FSOCは、伝統的な金融システムと仮想通貨セクターの接続は今のところ限定的だが、今後急速に拡大する可能性もあるとしている。
特に、ステーブルコインのシステムの中で伝統的な資産が保有されていることを指摘。他に、取引プラットフォームが、レバレッジ取引やカストディなど様々なサービスを投資家や金融機関に提供することで、従来型の金融セクターとつながっていく可能性もあると論じる形だ。
FSOCは、現在の仮想通貨セクターの脆弱性として次のような項目を挙げている。
- レバレッジが過剰にならないようにするための施策が不足しているプラットフォームが多い。
- 投機性が高い傾向が見られ、ボラティリティ(価格変動)が大きい。
- 仮想通貨企業などの多くは、リスクの高いビジネスを行っている、あるいは資本や流動性が不透明な事業体と相互関係を結んでいる。
- サービスの集中や、分散型台帳技術に関する脆弱性から運用リスクが発生する可能性がある。
FSOCは、こうした脆弱性に対応するために、「証券以外の仮想通貨スポット市場に関する当局の権限を規定する法律の作成」「仮想通貨企業の関連会社や子会社の活動を可視化し、監督する当局権限に関する法律」などを提唱している。