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日本発のパブリックブロックチェーン「アスターネットワーク(ASTR)」とは|特徴や仕組みを解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

アスターネットワークとは

日本経済新聞にWeb3広告を出したり、国内の大手企業との提携を進めたりするなど、国内での存在感を急速に高めている「アスターネットワーク(ASTR)」。アスターネットワークは、日本発のパブリックブロックチェーンです。

本記事では、海外の大手企業からも大きな注目を集め、2022年9月にASTRトークンを日本で初めて上場させたアスターネットワークをご紹介します。

アスターネットワークの概要

アスターネットワークは、渡辺 創太氏が代表取締役CEOを務めるステイクテクノロジーズ(以下ステイク)が開発を主導しています。ステイクは現在シンガポールを拠点にしていますが、創設した場所は日本です。

もともとアスターネットワークは「プラズムネットワーク(Plasm Network)」という名称でしたが、21年6月にリブランディングとして名称を変更。最初にメインネットをローンチしたのは、プラズムネットワーク時代の20年5月です。

関連:日本発パブリックブロックチェーン「Plasm Network」がメインネットローンチ

アスターネットワークの最も大きな特徴は、マルチチェーン対応ができるように設計されていること。また、スマートコントラクト機能を備えているため、アスターネットワーク上にはNFT(非代替性トークン)やDeFi(分散型金融)など様々なサービスを構築することができます。

DeFfiLlamaのデータによると、アスターネットワーク上に運用のためにロックされた仮想通貨の総価値「TVL(Total Value Locked)」は、22年4月に一時570億円(3.8億ドル)超まで増加しました。

ポルカドットとの関係

アスターネットワークを理解する上で欠かせないのがポルカドット(DOT)です。

ポルカドットのネットワークは、ブロックチェーンの相互運用を実現するために開発されました。「リレーチェーン」と呼ばれる中心部分に、独立したブロックチェーンを接続することで相互運用を実現。

ポルカドットに接続する独立したブロックチェーンを「パラチェーン」と呼びます。

出典:Web3財団

関連:初心者でもわかるPolkadot(ポルカドット)|仕組みと将来性を解説

アスターネットワークは21年12月、ポルカドットのパラチェーンに接続するための枠(スロット)を、世界で3番目に獲得。同月にポルカドットに接続しました。

関連:Polkadot、国産Astarなど5つのパラチェーンが稼働開始 本格運用始まる

なお、ポルカドットには、実験的な環境という位置付けのクサマ(KSM)というネットワークがあります。アスターネットワークはポルカドット向けのブロックチェーンですが、ステイクは、「シデンネットワーク(SDN)」というクサマ向けのブロックチェーンの開発も主導。

シデンネットワークは、アスターネットワークと同様のコードを用いて構築されています。

アスターネットワークの特徴

アスターネットワークはポルカドットのネットワークを活用して、マルチチェーンに稼働するブロックチェーン。イーサリアムなど他のブロックチェーンがポルカドットに接続するための橋渡し的な役割も担います。

本節では、アスターネットワークの大きな特徴を3つ紹介していきます。

クロスバーチャルマシン(X-VM)機能

アスターネットワークは、より広範囲にマルチチェーン対応できるように、以下の2つの仮想マシン(VM)に対応します。

  • イーサリアムの仮想マシン(EVM)
  • WebAssembly(WASM)の仮想マシン

仮想マシンに対応しているとはどういうことなのか、より理解しやすいのはEVMへの対応です。EVMに対応しているということは、イーサリアム上のアプリをアスターネットワーク上でも容易に展開させられることを意味します。

しかし、EVMに対応しているブロックチェーンは他にも複数あります。アスターネットワークが他のブロックチェーンと差別化できる大きな特徴が、WASMにも対応している点です。

WASMとは「ブラウザで稼働するコード形式」のこと。このコード形式は仮想マシン向けに開発されています。

WASMは、15年6月からグーグルやアップル、マイクロソフトらによって設計や実装が進められてきました。

WASMに対応する大きなメリットの一つが、より多くのプログラミング言語で開発が行えること。これはアスターネットワークが、より多くの開発者に利用してもらえる可能性があることを意味します。

また、仮想通貨に馴染みのない開発者を呼び込むことができる可能性も高まります。

さらにアスターネットワークは、EVMとWASMの相互運用も実現できるように開発されています。

dApps Stakingの導入

アスターネットワークは、ブロックチェーンにおける以下の3つの課題を解決すると説明しています。

  • 相互運用性
  • 拡張性(スケーラビリティ)
  • 開発者のインセンティブの欠如

1番上の相互運用性については、これまで述べてきた通りです。2番目の拡張性とは「ネットワークの規模が拡大しても機能する能力」を指します。

この2つはブロックチェーンにおける課題として長期に渡って指摘されているため、他のプロジェクトも問題解決に取り組んでいます。

アスターネットワークの大きな特徴は、3番目の課題を解決するために「dApps Staking」を導入していること。dApps Stakingとは、開発者がアスターネットワークで開発を行うことで、インセンティブを得ることができる仕組みです。

アプリの開発や改良に集中できるようにするため、定期的で継続的な収入(ベーシックインカム)を得られるように開発者をサポート。dApps Stakingに登録した開発者は、アプリを制作・発展させることでASTRトークンを稼ぐことができるようになっています。

また、開発者以外でもASTRトークン保有者は、応援したいアプリに対してステーキングし、報酬を得ることが可能です。

報酬の分配方法は以下の通り。新規発行されるASTRトークンのうち、40%が開発者、10%がステーカーに配分されます。

L2ソリューションに対応

アスターネットワークは、ロールアップという技術を活用したL2ソリューションに対応できるように設計されています。

ロールアップとは、L1のメインネットワークの処理をサポートする技術。2層目のネットワークとして、メインネットワークのセキュリティを活用しながら、L1のトランザクション処理をサポートします。

関連:スケーリング問題の打開策「ロールアップ」とは|仕組みや注目点を詳しく解説

ステイクの渡辺氏は19年10月、「L1のメインチェーンはすでにキャパシティが飽和しており、L2ソリューションを使わなければ、ユーザー数が増えた時に対応できなくなります」と指摘。

そして「ポルカドット上で全てのL2ソリューションを展開することができれば、様々なDeFiやIoT(モノのインターネット)といったユースケースに対応することができ、ネットワークの価値を高めることができると考えています」と述べていました。

L2への対応は、アスターネットワークが解決しようとしている課題の「拡張性」に関する取り組みです。

エコシステム

アスターネットワークには、すでにエコシステム(経済圏)が構築されています。以下は、アスターネットワーク上で利用が多いアプリ等を掲載した画像です(22年9月28日時点)。

「ArthSwap」などDeFiプロジェクト、「tofuNFT」などのNFTプロジェクト、「メタマスク」などのウォレットプロジェクトなどがすでに稼働。インフラや出資企業の欄には、マイクロソフトやアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、コインベースやバイナンスといった大手企業の名前も並んでいます。

関連:Astar(ASTR)基盤のDEX「ArthSwap」とは|機能や特徴を解説

関連:Web3ウォレットMetamask 利用上の注意点を解説

ASTRトークンについて

トークンの用途

 

アスターネットワークのネイティブトークンはASTRトークンです。ユーティリティトークンのため様々な目的で利用されることが想定されますが、主な用途は以下の3つです。

  • dApps Staking
  • トランザクション
  • オンチェーンガバナンス

最初のdApps Stakingでの利用は上述した通り。次のトランザクションとは、手数料の支払いにASTRトークンが利用されるという意味です。手数料は、20%がバーン(焼却)される設計です。

3つ目の「ガバナンス」とは、アスターネットワークの運営のこと。コミュニティの意見を聞くために投票を行う際、トークン保有者に投票権を与えたりしてガバナンスを促進するために、ASTRトークンを活用します。

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トークン配分

ASTRトークンの初期発行量は70億ASTR。その後は新規発行によって、毎年最大10%ずつインフレーションする設計です。

初期発行分は以下のように配分されます。

グラフにある「パラチェーンオークション」とは、ポルカドットのパラチェーンを決めるための仕組み。100枠が上限のスロットを競うため、各プロジェクトが参加します。

このオークションでは、一定期間でDOTトークンの保有量が1番多いプロジェクトが勝者になりますが、この際、コミュニティからDOTトークンを集めることも可能です。

21年のオークションでは、DOTトークンをロックし、アスターネットワークを支援したコミュニティは、見返りとしてASTRトークンをもらえるなど報酬を受け取ることができました。

「ユーザーと初期支援者」に30%、「パラチェーンオークション(21年)」に20%、一方で「初期の経済的な支援者」に10%、「チーム」に5%といった配分を見ると、ユーザーやコミュニティにASTRトークンが多く配分されているのがわかります。この配分もアスターネットワークの大きな特徴です。

ここには「アスターネットワークはコミュニティ主導のプロジェクトである」という意思が反映されています。また、ステイクはもともと、最終的に企業を解散し、DAO(自立分散型組織)にすることを計画しています。

最終的にはASTRトークン保有者にアスターネットワークを開発・運営していって欲しいという想いが、トークンの配分にも反映されているのです。

仮想通貨取引所への上場

ASTRトークンはすでに、バイナンスやクラーケン、Huobiグローバル、OKX、Crypto.comといった大手暗号資産(仮想通貨)取引所に上場しました。

関連:Astar(ASTR)、米国版バイナンスに新規上場

そして22年9月、ASTRトークンは初めて日本の取引所に上場。bitbankが日本円との通貨ペアで取引を提供しています。

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資金調達

コミュニティ主導のプロジェクトであるアスターネットワークは、以前に多くの仮想通貨プロジェクトが行った「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」を行っていません。

渡辺氏は19年のトークン発行を控えた時期に、「ICOという時代に適していないトークンの発行方法を取らない」とも宣言していました。

それでも開発に資金は必要です。そこでアスターネットワークはまず、助成金の仕組みを活用しました。

ポルカドットの開発を主導するWeb3財団から7回の助成金を獲得しており、この回数はポルカドットのエコシステムで最多とされています。

そして、コミュニティへのトークン配分を考慮しながら実施した資金調達の主な事例は以下の通り。

21/2/9 バイナンスラボがリードし、HashKeyなど5社から約2.5億円調達。(関連記事
21/6/11 Fenbushi Capitalがリードし、ポルカドット共同創業者設立のファンドや出井伸之氏らから約11億円を調達。(関連記事
22/1/28 Polychain主導で約25億円を調達。Alameda Research、Alchemy Ventures、Crypto.com Capital、ギャビン・ウッド氏、本田圭佑氏らも出資。(関連記事
22/1/28 コインチェックのスタートアップ支援プログラムが出資。出資額は非開示。(関連記事
22/3/8 コインベースのVC部門から資金調達。調達額は非開示。(関連記事

提携事例

本節では、アスターネットワークの提携や協業の主な事例をまとめています。

21/5/6 マイクロソフトのスタートアップ支援プログラムに採択。マイクロソフトが技術開発やビジネスを支援。(関連記事
22/3/23 NFT・ブロックチェーンゲーム専業開発会社「double jump.tokyo」と提携。エコシステム拡⼤のために協業。(関連記事
22/4/13 GameFiプラットフォーム運営企業「Digital Entertainment Asset」と提携。アスターネットワーク上で、GameFiコンテンツの拡大に向け協業。(関連記事
22/6/7 アマゾンウェブサービス(AWS)と連携。AWSが開発支援。(関連記事
22/7/21 博報堂がアスターネットワークを活用して、企業のWeb3参入支援を開始。
22/8/4 Web3開発プラットフォーム「Alchemy」と提携。アスターネットワーク上の開発者を支援。(関連記事
22/9/27 SMBC日興証券が「Astar Japan Lab」に加盟することを公表。(関連記事
22/9/29 世界的アーティストの天野喜孝氏がWeb3プロジェクトを発足。アスターネットワークを活用し、グローバルに日本コンテンツを発信。(関連記事
22/10/4 自治体として初めて福岡市が「アスタージャパンラボ(Astar Japan Lab)」に参加。(関連記事

関連:Astar Network、国内での連携強化を進める|動向まとめ

まとめ

以上が、アスターネットワークの主な特徴です。

ステイクはシンガポールを拠点にしていますが、渡辺氏は本当は日本で事業を継続したかったと述べています。日本では税金など規制面で仮想通貨企業に適していない点が指摘されており、国外に拠点を移しました。

しかし、bitbankにASTRトークンを上場させ、日本企業との提携事例も増えてきました。渡辺氏の働きかけもあり、現在は日本でもスタートアップ企業の環境整備が進められております。

関連:「なぜ、日本の仮想通貨税制問題で人材の海外流出が起こるのか?」Astar Network 渡辺CEOが意見

関連:岸田政権「仮想通貨法人税の課題は来年度税制改正で結論を得る」

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