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AIが変える仕事と資産 加納裕三×田中渓が語るbitFlyer特別対談|WebX2026

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WebX 2026 | セッションレポート

AIが変える仕事と資産 加納裕三×田中渓が語るbitFlyer特別対談

加納裕三 × 田中渓

2026年7月13日、WebX 2026のCRYLステージで開催されたbitFlyer クリプト・レディオ特別編。「激変するAI時代に備える、仕事と資産の新しい考え方」をテーマに、株式会社 bitFlyer Holdings代表取締役CEOの加納裕三氏と、ゴールドマン・サックスで17年間にわたり投資部門を率いた田中渓氏が対談した。モデレーターは同社執行役員CPOの金光碧氏が務めた。3人はいずれもゴールドマン・サックス出身という共通点を持ち、AI時代における人間の価値、金融業界の変容、個人の資産形成について、実践者の視点から率直な言葉が交わされた。

加納裕三

加納 裕三(かのう ゆうぞう)

株式会社 bitFlyer Holdings
代表取締役 CEO

ゴールドマン・サックス証券等を経て2014年にbitFlyerを共同創業。暗号資産関連の法改正への提言や自主規制ルールの策定に尽力。日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事、JVCEA理事も務める。

田中渓

田中 渓(たなか けい)

投資会社 責任者
元ゴールドマン・サックス投資部門共同統括

2007年よりゴールドマン・サックスに17年勤務し、投資部門日本共同責任者を経て退社。現在は少数精鋭の投資会社にて数千億規模の資産を運用。ランニング・バイク・水泳を習慣化し世界大会にも出場。著書は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2026」でダブル受賞。

金光碧

金光 碧(かねみつ みどり)

株式会社 bitFlyer Holdings
執行役員 CPO(モデレーター)

米系投資銀行でデリバティブストラクチャリングに10年従事後、2016年にbitFlyer入社。CFO・PRを経てグループCPOに就任。2025年より株式会社Custodiem取締役として国内仮想通貨ETF組成プロジェクトを推進。


AIが変える仕事、人間に残る価値

セッション冒頭、金光氏が「生成AIの進化で調査・資料作成・プログラミングをAIが短時間でこなせるようになった。人間の価値が高まる仕事やスキルは何か」と問いかけた。加納氏は自らAIを駆使して社内アプリを開発する立場から口を開いた。
加納裕三
AIは1000年に1度の革命だと思っています。言語・文字・農耕と並ぶ人類の発明の中でも、AIはAI自身を自律的かつ分散的に改良できるという点で群を抜いている。そうなると、エンジニアや設計者がやっていた仕事はどんどん侵食されていく。さらに先には、AIだけが勝手にサービスを作ってAI同士でお金をやり取りする経済圏が、近い将来できると思っています。
そういう社会がやってくる前提で、人間が社会に対して付加価値を出せるものは何か、真剣に考えなければいけない時代に入った。論理的思考能力はもう陳腐化したと思っていて、どんな頭のいい人でもAIには総合力で勝てない。人間に残るのは「優しさ」。ちゃんと目を見て話して、笑ったり叫んだりできる感情。そして、頭の中で想像したものを言語化してAIに指示を出す経路と、「0から1を作る」創造力です。想像できないものは作れない。
田中渓
私の投資会社では、ゴールドマン時代に朝から夕方までやっていた仕事を全部棚卸しして、AIで代替できないか試しました。今は8割がたできるようになった。その分の時間は「1次情報に当たってください、人と会ってください」と伝えています。LLMが収集できる情報はウェブ上にある情報だけで、そこにない情報は取れない。
人間に残る能力は3つだと考えています。AIへの問いを立てる力、AIが出した答えの確からしさを判断する力、そして責任を取る力。この3つです。

金融業界の変容、1次情報の価値

金融の現場ではAIによってどこが変わり、何が残るのか。田中氏が自社の運用現場から具体例を交えて語った。
田中渓
従来の金融の仕事は、ニュースを読んで企業情報を分析して、エクセルで計算してパワーポイントにまとめてプレゼンするというプロセスでした。これが時間の7割を占めていたが、もう99%いらなくなった。AIに代替してしまった。
ただし、LLMはウェブ上の情報しか扱えない。AI登場以降、業界のシニアたちは情報をしまい込むようになっている。たとえば2年前、日本のオフィス市場は「終わった」と言われていたが、現場では麻布台ヒルズに入りたい企業が殺到して空きがないという情報は、プロの間だけで流れていた。そのタイミングでオフィスを取引した人たちは2年後に20〜30%の値上がりを享受した。最先端を走っている人に直接意見を聞く以外、そういった情報は分からない。コミュニケーションが取れること、コミュニティに入るための処世術が、回り回って一番大事だというところに落ち着いています。
補足:LLM(大規模言語モデル)はウェブ上の公開情報をもとに学習するため、クローズドなコミュニティや現場の口頭情報には本質的にアクセスできない。金融・不動産など情報の非対称性が高い分野では、この制約が投資収益に直結する。
加納裕三
トレーダーはいなくなります。リサーチャーもいなくなる。トレーダーの付加価値はリサーチにあるが、そのリサーチをAIがやれるようになると、パブリック情報からのフェアバリューはすぐに到達してしまい、トレーダーの付加価値がなくなる。ボタンを押す作業もプログラムで代替できる。残るのは責任を取るヘッドだけ。そして金融に残るのは結局「セールス」、つまり優しさ、Loveが必要なところです。

個人の資産形成とAI活用の考え方

AIが投資情報を即座に提供できる時代に、個人はどのように資産形成に向き合えばよいか。田中氏が段階的なフレームを示した。
田中渓
資産形成は人によって目標が全然違う。まず「自分がどのレベルの資産を目指すのか」を明確に想像することが最初のステップです。次にフェーズを考える。余剰資金が5,000万円貯まるまでは、インデックスでコツコツやるほうが精神的に安定しやすい。そこからさらにリターンを狙いたいなら個別株や仮想通貨を組み合わせていけばいい。自分のリスク許容度を把握することも重要です。
AIについては、全部任せるのは危険です。走るのをやめると老化するように、思考をAIにゆだねると判断力が衰える。AIは仮説を検証する相談相手として使うのが正解で、「何を買えばいいですか」とAIに聞くのではなく、自分の仮説をAIにぶつけて、足りない部分を補完してもらう使い方をする。その繰り返しで自分自身もパワーアップしていける。
補足:田中氏はAIバブルへの見方として、「株価クラッシュ時は他の資産も同時に下がる」として流動性の確保と逆張り先の事前リサーチを戦略に挙げた。仮想通貨については、業界が成熟するにつれて先鋭的な人材がAI分野に移動するのは健全な変化であり、揺り戻しも周期的に起きると分析した。

bitFlyerのAI戦略とステーブルコインの未来

金光氏がbitFlyerとして提供するサービスとAIの接点を問いかけると、加納氏は当日発表した新UIと今後の展望を語った。
加納裕三
今日のWebX会場でbitFlyerの新しいUIを発表しました。初心者向けとプロ向け(bitFlyer Lightning)を明確に分けて、使いやすさを大幅に改善したものです。開発にはAIを積極的に使いましたが、全自動ではうまくいかない。1ピクセル単位で人間が関与する部分はまだ多い。ただこれは今のフェーズの話で、AIが賢くなるにつれてカスタマイズされたUIを簡単に作れる時代がくる。
社内では「AIカンパニーに変わる」と言い続けています。エンジニアだけでなく、ビジネスサイドもコンプライアンスも全員AIを使うことをマストにしている。AIが使えない人と使える人では、これから本当に給料が変わってくる。
ステーブルコインについては、AIエージェント同士がタスクを発注し合い、その決済にステーブルコインを使うエコシステムがブロックチェーン上で実現すると見ています。AIとブロックチェーンを組み合わせたAmazon、FacebookのようなサービスがAI同士で自律的に動く世界が来る。LLM競争は1モデルの開発に約400億円かかるとも言われ、どこかで収束に向かうでしょうが、その先にある「AIとブロックチェーンの融合」こそが次の大きな産業になると確信しています。

セッション総括

最後に金光氏が「明日から1つ実行してほしいことは」と問いかけると、2人は対照的でいて本質を突く言葉で締めくくった。
田中氏は「できるだけ自分に近いコミュニティに属し、プレイヤーであり続けてください。コミュニティのレベルは自分のレベルとともに上がっていく。それが最終的に、最上流の情報だけが交換される場所へのパスポートになる」と語った。
加納氏はビットコインとの対比でこう締めた。
「僕はビットコインが100円の時から触っています。みんな『あの時買っておけばよかった』と言う。AIも同じです。今すぐClaude Codeを触る、何かを作る。明日からじゃなく、今日から。それだけがイノベーターとそうでない人の違いだと思います」
AIがあらゆる情報処理を代替する時代においても、1次情報を取りにいく行動力、コミュニティに根を張る人間力、そして「今すぐやる」という起動力こそが個人の価値を決める。3人の認識はその点で一致していた。

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