投資家心理の変化
ベトナムの暗号資産(仮想通貨)ベンチャーキャピタル「Kyros Ventures」は25日、同国の仮想通貨市場レポートを公開。世論調査に参加した投資家の7割が、現在の弱気相場が終わりつつあると回答し、投資家心理が回復傾向にあることがわかった。
We are pleased to announce that the latest publication of "Vietnam Cryptocurrency Market Report H1/2023" featuring @coin68 and @animocabrands, is officially released!
— Kyros Ventures (@KyrosVentures) August 25, 2023
We hope that this report will serve as an essential guidance for those who participate in the #Vietnam crypto… pic.twitter.com/fLcUuf1Tz2
弱気相場について14.9%はすでに終わったと回答。55.3%が1年未満で終わると考えている。ビットコインの価格については、6割以上が今年末までに3万ドルから5万ドル(約430万円〜730万円)に到達すると回答し、2万ドル(約290万円)以下に下落すると考える投資家は2割にとどまった。
投資の情報源としては、半数が仮想通貨メディアやコミュニティグループを参照し、自身でリサーチしていることがわかった。一方、調査参加者の4分の3は投資に関して、友人・知人の紹介や推奨の影響を受けていると回答している。これは米国で報告された数の2.5倍に当たるという。
しかし、最終的な投資判断については、大多数の回答者がプロジェクトを徹底的に調査することを選択しており、投資判断には非常に慎重なアプローチをとっているようだ。
世論調査の概要
大手Web3企業アニモカブランズ(Animoca Brands)と現地仮想通貨メディア「Coin68」の協力で行われた世論調査には3,309人が回答。25歳から34歳の年齢層が5割以上で、18歳から24歳の年齢層が26%であるなど、若年層の投資家が大半を占めていることがわかる。
ベトナムは、2022年のGDPの年間成長率で8%を達成。同国では仮想通貨に対する税金がないことに加え、今年3月には、P2P融資及び仮想通貨サービスプロバイダーがマネーロンダリング規制から除外されるなど、仮想通貨に対し友好的な規制環境となっている。
Statistaによると、2023年の仮想通貨取引所の収益は約285億円(1億9,400万ドル)に達する見込みで、仮想通貨利用者数は2027年までに1,237万人に増加すると予想されている。
チェイナリシスの調査によると、ベトナムは2022年の仮想通貨普及率で世界1位、分散型金融(DeFi)の普及率で世界2位(2021年)となっている。
また、今年6月に仮想通貨決済企業「TripleA」が発表した世界の仮想通貨の保有状況によると、ベトナムは920万人ほど仮想通貨を保有しており、米国、インドに次ぐ3位となっている。ベトナムの人口は9,946万人であり、対する米国の人口は約3.3億人、インドは14.2億人であることから、ベトナムにおける普及率の高さが際立っている。
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高いステーブルコイン保有率
レポートによると、ベトナムの法定通貨ドン(VND)は中央銀行の政策により価値の変動が大きく、為替ヘッジとしてビットコインへの関心が高まっているという。そして、その傾向は投資家の高いステーブルコイン保有率にも反映されているようだ。
回答者の88.2%がステーブルコインを保有しているが、そのうち8.1%はポートフォリオの全てをステーブルコインに割り当てている。32%はポートフォリオの半分、31%は1/4、16.1%が3/4をステーブルコインで保有している。
ステーブルコインを保有する理由としては、53.8%がその価値の安定性と回答。18.3%が高い流動性を挙げた。
最も人気の高いのがUSDTでBUSD、USDCと続くが、76.8%の投資家はリスク回避のため、2種類以上のステーブルコインを保有している。
ステーブルコインの保有には、76.3%がバイナンスなどのCEX(中央集権型取引所)を利用しており、23.7%がメタマスクなどの分散型DeFiウォレットを使用している。
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DeFiに積極的に参加
ベトナムの仮想通貨市場の特徴の一つとして、DeFiの普及率の高さがある。今回の調査でも回答者の約9割がDeFiの使用を認めており、そのうち51.7%が分散型取引所(DEX)を利用している。
最も人気の高いエコシステムはイーサリアム(ETH)で、ユーザーの57.9%が利用。今年、BNBチェーンの56.7%を抜き1位となった。
3位以下で見るとソラナ(17.1%)は、主要プラットフォームの座をレイヤー2プラットフォームに譲る結果となった。Arbitrum(33.8%)やポリゴン(33.5%)、Optimism(24.4%)、zkSync(21.3%)などが、新たにユーザーの支持を集めている。
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