
ビットコイン財務戦略の持続可能性
暗号資産(仮想通貨)ベンチャーキャピタル企業Breedは、米ストラテジー社などに代表される企業のビットコイン(BTC)財務戦略についての分析レポートを発表した。
ビットコインによる株価プレミアム戦略を維持できる企業は一握りだろうとの見解を示している。
Breedは、ストラテジー社は2022年から2023年の弱気相場において、厳しいストレスに耐えたと指摘。この間に、ビットコインは過去最高値から80%下落し、mNAVプレミアムが崩れ、新規資本へのアクセスは失われたと述べている。
mNAVとは、企業の株価がその純資産価値に対してどの程度のプレミアムまたはディスカウントで取引されているかを示す指標だ。これが1.0を超えている場合、株価はプレミアム(割高)であり、1.0未満の場合は、ディスカウント(割安)だとみられる。
Breedは、ストラテジー社の過去の状況を踏まえ、ビットコイン蓄積により株式価値を上昇させる戦略を取る企業にとってのリスクを次のように説明した。
こうした企業の存続にとっての脅威は、債務の満期を迎える時期にmNAVプレミアムを崩れさせる長期的な弱気相場だ。
株価がNAV(ある企業の資産から負債を引いた額)と同水準かそれを下回り、貸し手が借り換えを拒否した場合、ストラテジー社は債務履行のためにビットコインを売却せざるを得なくなる可能性がある。
これが、価格下落とさらなる売却の必要性という悪循環を引き起こすことも考えられる。
なお、ストラテジー社のマイケル・セイラー会長は、弱気相場が到来して同社の株価が大幅下落しても、切り抜ける手段はあると話している。そうした場合は、ビットコインに対して過剰担保された株を売却して利益を上げると述べていた。
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Breedは、ストラテジー社のような規模、評判がない新規ビットコイン財務戦略企業の場合、弱気相場が訪れた際のリスクが大きくなるとも指摘している。より厳しい条件と高いレバレッジ比率で資金調達を行うことを迫られる可能性があると指摘した。
ビットコイン財務企業の株については、様々な議論がなされているところだ。ブロックチェーンのインフラ開発を行うBlockstream社のアダム・バック創設者は23日、アルトコインからビットコインやビットコイン財務株に資金を移すべきだとの自論を展開した。
一方で、時価総額が小さな企業が株価を引き上げるために大規模な資金調達を行い、本業とは別でビットコインを買うことには高いリスクがあると指摘する論者もいる。
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Breedによると、2025年5月現在で、199の企業が合計301万BTC(時価約47兆円相当)を保有しているところだ。
Breedは、mNAVプレミアムを永続的に維持できるのは、ごく少数の企業に限られるだろうとしている。ソラナ(SOL)やイーサリアム(ETH)などのアルトコインを財務戦略に採用する企業も相次いでいるが、その多くが失敗するだろうと述べた。
そうした仮想通貨財務戦略の破綻が避けられない状況に陥った場合には、最も有力なプレーヤーが不良資産を買収し、業界を統合する可能性が高いとも意見している。
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