BTCマイニングアップデート
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)関連のユーザーと開発者で構成されるコミュニティDiamond Handsは14日、「2022 ビットコインマイニングアップデート」を公開した。
同レポートは、米大手暗号資産(仮想通貨)投資企業Galaxy Digital社が発行したレポートの日本語版で、ビットコインの価格下落がマイニング事業者にどのような影響を及ぼしているかを詳述している。
Galaxy Digitalのリサーチチームの調べでは、2022年の仮想通貨冬の時代にビットコイン・マイナーの収益性が低下。マイナーの資金繰りが悪化する中、適切なヘッジポジションを構築していなかった事業者の淘汰が進んでいる。
ビットコイン価格は、およそ1年前のピーク時価格約725万円(63,500ドル)に対して4分の1程に低下しているが、マイナー間の競争環境は現在の方が過熱している。ハッシュレート(採掘速度)は22年上半期に23%増加し、採掘難易度も上昇し続けている。
Diamond Handsによると、主な要因はロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーン(供給網)の乱れや、半導体不足などの影響から、発注した採掘マシンが時間差により市場に到着し、相場の価格下落後に最新鋭の採掘マシンを回し始めるマイナーが多かったことにある。
エネルギー価格の高騰も組み合わさり、運営コストの増加がマイニング収益を逼迫させた。資金金繰りに追われるマイニング企業は、蓄積したビットコインを市場で売却することで生き残りを図る。Galaxy Digitalによると2022年前半だけで24,000 BTC以上を売却した。
ビットコインの採掘難易度とは
ネットワーク上の演算能力となるハッシュレートの増減に応じて、1ブロックのマイニングに必要な時間を約10分にするよう自動的に調整するプログラム。ハッシュレートが高くなると難易度は高くなり、ハッシュレートが下がると難易度も下がる仕組み。
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マイナーの淘汰
こうした状況下で、ビットコインの採掘用に設計されたASICの価格は、ビットコイン価格を上回るペースで下落。BTC価格のさらなる下落により、廃業に追いやられたマイナーがASICを投げ売る「デススパイラル」が生じる恐れがある。
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実際に、大きな負債を背負い、深刻な問題に直面するマイナーが続出。22年9月には、米国の仮想通貨マイニング企業Compute Northが5億ドル(約700億円)の負債を抱えて米連邦破産法11条(チャプターイレブン)の適用を申請。米ナスダック上場企業のCore Scientificも合計約1,470億円(約10億ドル)の負債を抱え、10月に破産を検討する意向を示した。
一方で、上昇相場時に堅実に運営し、手持ち資金に余裕のあるマイナーにとっては、売り出されたASICを安価で買い取り、シェアを拡大する機会となっている。
カナダに本拠地を置く上場マイニング企業HIVE Blockchain Technologiesは11月7日時点に約95億円(6,800万ドル)相当のBTCを保有し、機器の負債がないことを明かしている。米企業のCleanSparkは6月にビットコイン向けのマイニングマシンを大量に購入しただけでなく、9月にはジョージア州のマイニング施設を46億円(3,300万ドル)で買収した。
Galaxy Digitalは、マイニング企業によるビットコインとASIC売却のトレンドはしばらく続くと見ている。また、マイニング産業に新規プレイヤーが参入する動きも予測される。
なお、米国では地域によってマイニング産業に対する規制状況が異なる状況だ。ニューヨーク州は炭素ベースの電力源を利用するマイニングを禁止している一方、ケンタッキー州はマイナー向けの電力・税金の優遇政策を取る。これらの規制アービトラージが、米国内でのハッシュレート分布に影響を及ぼす可能性も指摘されている。
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