全額を仮想通貨現物で返済へ
米大手暗号資産(仮想通貨)取引所Gemini(ジェミナイ)は29日、利回りサービス「Gemini Earn」のユーザーに、総額21億8千万ドル(約3,300億円)相当の仮想通貨を現物で返却したと発表した。
これは、Gemini Earnのユーザーに返済すべき仮想通貨の97%に当たる。残りの資産については、今後12か月以内に分配する計画だ。最終的に、すべてのユーザーがその資産の100%を現物で受け取れることになる。
例えば、ユーザーがEarnプログラムで1ビットコインを貸し出していた場合は1ビットコインが返ってくる。ジェミナイは、ユーザーへの100%返済のために5,000万ドル(約79億円)を寄付した。
「Gemini Earn」はビットコインやイーサリアムなど、様々な銘柄の仮想通貨を預けることで利子を獲得できるサービスだ。今回の返済により、売り圧の可能性を指摘する声も一部で上がっている。
投資家のエヴァン・コーエン氏はEarnユーザーが「2年間塩漬けにされていた資産を売却できるようになった」と指摘した。
ジェミナイは、これまでこうした資産の回復は稀であったと強調している。他の事例をみると、例えば破綻したFTX債権者のほとんどは、請求額の118%以上を受け取れる。
しかしこれは仮想通貨ではなく2022年11月時点での価格による現金での返済となる。その後、多くの仮想通貨が値上がりしているため、元ユーザーからは、この返済方法に不満の声が上がった。
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背景
ジェミナイは、仮想通貨融資企業ジェネシスと連携して「Gemini Earn」を提供していた。しかしジェネシスは2022年、スリーアローズキャピタル(3AC)やFTXの破綻が影響して、11月より顧客資産の引き出しを停止。提携先であるジェミナイ「Gemini Earn」ユーザーも出金ができない状態にあった。
その後2023年10月に、ジェミナイはグレイスケールのビットコイン投資信託GBTCの16億ドル相当の株式の権利を求めてジェネシスを提訴した。この株式を「Gemini Earn」ユーザーへの返済に充てることを目指していた格好だ。
ジェネシスはこれをジェミナイに引き渡すことはなく、ジェミナイはその資本の一部を「Gemini Earn」ユーザーへの返済に使用した。ジェミナイを運営するウィンクルボス兄弟も私費を投じたと伝えられる。
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規制の明確化を求める
ジェミナイは、今回の発表の最後で、次のように付け加えた。
最後になるが、ジェネシスの破産は仮想通貨の性質に起因する問題ではなかったことに留意することが重要だ。これは、規制が明確ではなかったことによって悪化した、昔ながらの金融詐欺のためだった。
私たちは、イノベーションと消費者保護の両方を促進するような明確なルールとガイダンスを求めて戦い続ける。私たちはこの戦いに勝利し、未来は明るいだろう。
「詐欺」とはFTXによる顧客資金の不正流用などを指しているとみられる。現在米国では、仮想通貨市場における規制の不確実性を解消しようとする法案がいくつか起草されている。
そのうち「21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法」は下院で可決したところだ。
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FTXとは
サム・バンクマン=フリード氏が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、破産申請を行なっている。
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