- 台湾の「クリプト議員」にV20サミットで取材
- 大阪で開催されたFATF合同の国際仮想通貨(暗号資産)サミット「V20」にて、”クリプト議員”の異名をとる台湾の政治家・Jason Hsu氏に取材を実施。貴重な見解を伺った。
台湾は、他国に負けない勢いがある
先日、大阪で開催されたFATF合同の国際仮想通貨(暗号資産)サミット「V20」にて、”クリプト議員”の異名をとる台湾の政治家・Jason Hsu氏に取材を実施。貴重な見解を伺った。
多くの国が仮想通貨規制について模索する中、台湾は昨年5月に一足早く、SRO(自主規制管理)組織およびブロックチェーン議会連合を同時に発足させた。SROは取引所規制と税制のガイドラインを含む行動規範の作成を目的に結成され、ブロックチェーン議会連合はブロックチェーン業界の支援を行うことを意図するものだ。
Hsu氏は昨年8月のフォーブス誌の取材で、「ガイドラインは台湾だけではなく、日本やシンガポール、韓国など他のアジア諸国における地域的な合意となるだろう」と明かしていた。
台湾では昨年11月、マネーランドリーコントロール法(AML法)の改正が施行されて以降、仮想通貨プラットフォーム事業者もマネーロンダリング防止規制の対象となっている。Hsu氏は、最近の動きとして、仮想通貨とデジタル資産をAML法の規制対象とする法律を制定したことなどを挙げた。
有機的な規制の必要性を主張
FinTechや仮想通貨の登場、市場のグローバル化など様々な要因が、金融セクターを凄まじい勢いで変化させている。Hsu氏の指摘通り、既存の規制はインターネットが普及する以前に制定されたという事実を考慮すると、既存の規制と市場の間に歪みが生じるのも当然だ。
Hsu氏はこの点についても、より多くのサンドボックス、さらには市場や社会の動きに柔軟に対応できる「有機的な規制」の必要性を主張した。
規制にもイノベーションが必要な時期にさしかかっている。既存の規制とユースケースの両方を考慮したバッファーのようなものが必要だ
台湾の金融監督委員会(FSC)は今年6月、台湾初のセキュリティートークン・オファリング(STO)の規制フレームワークを作成。これは既存の証券法に基づいて作成されたもので、Hsu氏によると、台湾で発行されたセキュリティートークンはセキュリティーロスから除外されるなど、STOの取引に免除が適用される。
中国は自国が抱える問題が足枷か
仮想通貨の取引やICOだけではなくマイニングも禁止するなど、引き続き監視体制を強化している中国に関しては、対米貿易戦争や政府の中央集権化に対する挑戦を含め、沢山の問題を抱えている点を指摘。そのため「仮想通貨産業の発展については、保守的で警戒心の強いスタンスを維持している」との見解を示した。
ブロックチェーン企業の誘致、デジタルIDなど台湾の取り組み
台湾をブロックチェーン国家に転換させることを目標に掲げるHsu氏は、仮想通貨やブロックチェーンの普及のカギを握るのはユースケースだと見込んでいる。 トレードで利益を得るという利用法以外に、仮想通貨やブロックチェーンが日常生活にインパクトを与える利用法を発見できない限り、「ブロックチェーンという素晴らしいテクノロジーをメインストリームに押し上げるチャンスを逃すだろう」とHsu氏は指摘した。
台湾は国内に経済特区を設け、世界中から200社のブロックチェーン企業を誘致する戦略を展開しているほか、市民がブロックチェーンでビザを取得可能なデジタルIDソリューション・「台湾グローバルID」の開発にも取り組んでいる。また、国家間のデジタル経済政策の実現にも関心を示している。
Hsu氏は多くの仮想通貨産業関係者が台湾市場に関心を寄せている理由について、オープンマインドな規制観やスタートアップへの支援体制、また世界最大規模の半導体チップメーカー、台湾積体電路製造(TSMC)を筆頭に、ASICチップの製造が盛んであることなどを挙げた。
日本、韓国、シンガポール、香港というアジア市場の強敵を相手に、台湾の健闘はまだまだ続きそうだ。