決済企業参入がビットコインの流動性低下を防ぐ可能性
米大手投資銀行モルガンスタンレーが、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)についてのレポートを発表した。
モルガンスタンレーによると、発行されたすべてのビットコインについて、100以上のビットコイン(執筆時現在約4.7億円相当)を保有するアドレスは、60%以上を占めているという。
ビットコインを取引したり決済に使うよりも、長期的に保持する投資家が増えており、このまま流動性が低下し続ければ、ビットコインは魅力的な「価値の交換手段」ではなくなるだろうと論じている。
一方で、PayPalなどによる大手決済企業による仮想通貨関連サービス提供により、この状況が変わる可能性についても言及。使い勝手の良い取引・決済サービスの登場で、新たな仮想通貨ユーザーが流入して、流動性を高める可能性を指摘した格好だ。
決済手段としてのビットコインを追求するPayPalやVisa
決済大手PayPalは昨年10月、米国で仮想通貨の売買・保有ができるサービスを開始している。取扱銘柄はビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)の4種類。今後は米国以外にもサービスを拡大する方針だという。
さらに2021年内には、提携する小売店での仮想通貨による決済サービスも開始予定。消費者の日常的な決済におけるデジタル通貨の利用をサポートしていくと述べている。導入すれば世界の小売店2,900万店舗においてビットコインなどで決済が行えるようになるため、利便性は大幅に向上しそうだ。
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またクレカ最大手のVisaも「コモディティではなく決済面で」仮想通貨に注目するとして参入を進めている。投機されるより、決済に実利用されるものとしての仮想通貨の可能性を探っていくようだ。
実際に、仮想通貨関連企業と連携して、仮想通貨決済を加盟店で可能にするVisaカードの発行を行なってきた。今月には、銀行などがビットコイン売買サービスを行う仕組みを提供すると発表している。
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モルガンスタンレーの責任者がビットコインに前向きな理由
モルガンスタンレーの新興市場の責任者・チーフグローバルストラテジストのRuchir Sharma氏も、ビットコインの将来性について前向きな意見を披露している。
同氏のレポートによると、2020年には新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、市場に流通する米ドルの20%もの量が新たに刷られており、比較して供給上限のあるビットコインの魅力を後押しする形になったという。
ビットコインの時価総額は現在、約8300億ドルに達しているが、伝統的なインフレヘッジである金(ゴールド)の約12兆ドルに比べれば、成長の余地は十分に残されていると続ける。
また、米国のミレニアル世代(一般的に1981年以降から1990年代中盤に生まれた世代)の27%が仮想通貨を保有しており、若い世代でビットコインなどの採用が拡大していく可能性が高いこと、国際送金市場で有望なこと、規制当局が関連犯罪を抑制し業界をクリーンにしていることを挙げた。
これらのことから、「現在のビットコイン価格上昇は、非合理な熱狂であるとはみなせない」と独自の結論を述べている。