
今後、複数の仮想通貨商品提供へ
ロシアの最大手銀であるロシア貯蓄銀行(Sberbank)は5月30日、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の仕組み債を発行開始したと発表した。
ロシアは仮想通貨取引に対して慎重姿勢を取っていたが、これが転換しつつあることを示す動きともとらえられる。
この商品は、投資家がビットコインのドル建て価格の動きと、ロシアルーブルに対するドル高の為替レート上昇の可能性の両方からリターンを得ることを可能とするものだ。すでに店頭市場で適格投資家限定で利用可能となっている。
ロシア貯蓄銀行によると、この仕組債は、すべての取引がロシアの法的・技術的枠組み内においてルーブル建てで決済される。このため、投資家には個人の仮想通貨ウォレットを開設したり、海外の取引所を利用したりする手間が省ける利点がある。
同行は、この商品をモスクワ証券取引所に正式に上場する形でも提供する予定だ。透明性や流動性が確保され、より多くの適格投資家にとって利用しやすくなることが期待される。
複数の仮想通貨関連商品を提供へ
さらにロシア貯蓄銀行は今後、仮想通貨に連動する様々な上場金融商品も提供していく。一例としては、ビットコイン先物を4日より、モスクワ取引所が取扱いを開始次第、提供開始する。
ロシア貯蓄銀行の投資プラットフォーム「スベル・インベストメント(SberInvestments)」で利用可能になる形だ。
関連:ビットコイン300万ドル到達の可能性は? 著名アナリストトム・リーが予測
背景としてロシアの中央銀行が5月28日、金融機関が適格投資家に対して仮想通貨価格に連動する金融デリバティブや証券を提供することを許可すると発表したところだった。
ロシアはこれまで、仮想通貨関連商品の提供を禁止していたが、今年3月に方針転換を発表。資産1億ルーブル(約1.8億円)以上などの条件を満たす「特に適格な投資家」を対象とした3年間の限定試験制度を提案した。
また3月には、ロシア石油会社の一部が、中国とインドとの石油の取引で仮想通貨を使っているとロイター通信が伝えている。今後、こうした取引が拡大する可能性もある。
例えば、TASS通信の5月30日の報道によると、ロシア農業銀行のイリーナ・ジャチキナ第一副総裁は、次のように語った。
仮想通貨は便利な代替決済手段になり得ると考えている。現在、ロシア中央銀行などの関係者と共に、穀物取引の決済に仮想通貨手段を活用する可能性を検討している。
ロシアは世界最大の小麦輸出国の一つであり、関係する市場取引での仮想通貨決済が広がる可能性もある。なお、ロシア農業銀行は2022年のウクライナ侵攻以来、欧州連合(EU)と米国による制裁の対象となっており、これを回避する目的も背景にある模様だ。
関連:『ビットボンド』提案、トランプ政権のビットコイン準備金戦略、年間10兆円の財政削減効果も