中国の国家ブロックチェーン・サービスネットワーク始動
「ブロックチェーンのインターネット」を目指し、国家情報センターの主導で開発が進められてきた、中国の国家ブロックチェーン・プラットフォームである「BSN」(ブロックチェーン・サービスネットワーク)が、4月25日、正式に立ち上げられた。
昨年10月の計画発表後、6ヶ月にわたるテスト期間を経て、中国本土向けには公式サービスが開始され、海外向けには商用利用を目的とした国際バージョンのパブリックベータ版の提供が開始される。
BNSの特徴
BSNは、インターネットがあらゆるウェブサイトをホストし、グローバルネットワークを築き上げたように、ブロックチェーンアプリの開発や導入を迅速かつ低コストで行えるグローバルなインフラネットワークとなることを目指している。BNSは、暗号化された強力なセキュリティとプライバシー対策を講じ、快適なブロックチェーン動作環境を提供することで、インターネットのTCP / IPプロトコルを踏襲しようとしているようだ。
BSN自体はブロックチェーン・プロトコルではなく、様々なブロックチェーンを組み合わせて使用できる中央集権的な許可型のプラットフォーム。 ゆくゆくはイーサリアムやEOS等のパブリックブロックチェーンも統合し、相互運用が可能になるという。(海外対応のみ)
BSNを利用することで、ブロックチェーンを一から設計する必要がなくなるとともに、規制に関連するコストなども大幅に削減できるため、ブロックチェーン技術の活発な開発や普及を促進すると考えられている。
具体的には、コンソーシアム型ブロックチェーンを構築し運用した場合、年間約152万円かかる費用が、BNS利用で3万円から4万5000円程度まで抑えることができると、ホワイトペーパーでは試算しており、中小企業や個人でもブロックチェーンを利用することも可能だと主張している。
なお、BSN設立の主要メンバーは、中国の政府機関である国家情報センター、通信大手の「中国移動」(チャイナ・モバイル)、決済・金融大手の「銀聯」、招商銀行。 その後、ブロックチェーン企業のBeijing Red Date Technologyがブロックチェーンアーキテクトとして参加している。
BSNを支えるのは
BSNに直接参加する事業形態は以下の三つが想定されている。
1.クラウドサービスプロバイダー 2.ブロックチェーン・フレームワーク・プロバイダー(コンソーシアムブロックチェーン 等) 3.ポータルの開発・運営者(ブロックチェーンアプリの開発等)クラウドサービスプロバイダーとしては、AWS、China Mobileや Baidu Cloudなどが参加、フレームワーク・プロバイダーとしては、Huobi Chinaが参加している。特にHuobi はBNSのセキュリティ機能の面で大きく貢献しているという。
一方で、BSNで利用するBaaSの開発も同時に進められており、公共料金の支払いや会社の登記など公共サービスの提供を可能にするアプリが、地方自治体レベルで導入されつつあるという。
世界6大陸にもノードを配置
中国本土でBNSの導入が進むことは、その人口や国土の広がりと考慮すると、グローバルな展開に向けての大きな一歩となる。 現在、中国全土の主要都市をカバーする120のノード(44は構築中)が配置されていると発表されたが、海外でもアジア、ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、オセアニアの世界6大陸全てをカバーする8つのBNSノードの展開が完了しているという。Huobi グループCEOのLeon Li氏によると、その内訳はシンガポール、日本、アメリカ、フランス、ブラジル、南アフリカ、オーストラリア。 今年中には、合計200のノード配置を予定している。
昨年10月、習近平国家主席がブロックチェーン技術を国家戦略の一環とすることを発表し、世界の注目を集めたが、そのトップダウンの構想と強い意志は、次世代の情報インフラを目指すBSNとして形になってきている。
中国政府による中央銀行発行のデジタル人民元の実用化もここにきて急速な展開を見せている。国家をあげて革新技術の推進に取り組む中国の姿勢を、これからも注視していきたい。
出典:BNS