SBI決算説明会
SBIホールディングスの北尾社長は30日、決算説明会を実施した。
関連:SBI決算資料
連結業績の収益(売上高)は前年同期比20.6%増の1,111億円と、四半期収益として創業以来の過去最高を更新。アナリスト予想を大幅に超えた。金融サービス事業は、株式・為替市況が前年同期に比べ好調に推移したため、証券事業やFX事業は好業績を実現している。
ウィズコロナの事業環境下において好業績を実現できた要因について、北尾社長は「3月のコロナショック後に急速に回復し、好業績を実現したことが予測値の上方修正に繋がった。」と言及。「経済成長のマイナス予測にも関わらず、世界中至る所でマネタリーベース(現金の通貨と民間の金融機関が中央銀行に預けた金銭の合計)が増えたことが大きい。」との見解を示した。
新型コロナ対応の特別オペ拡充のため、量的金融緩和がより一層強く推し進められ、マネタリーベースが急増したという。20年5月末の日銀マネタリーベースは、544兆円と過去最高を更新している。
また、株式市況の回復を受け、個人投資家の活発な取引により、2市場合計の個人株式委託売買代金は前年同期比48.4%増加と好調に推移し、SBI証券における委託手数料の拡大に寄与した。
なお、先日全株式を取得したライブスター証券については、「信用手数料無料化などの施策が好評を得ている証券で、トレーダーの支持率が非常に高い証券会社の買収により、シナジーを徹底的に追求していく」とした。SBI証券の口座数は、20年2月に500万口座を突破し、すでに最大手の野村証券を抜いて業界No.1となっている。
老後資金2000万円問題の影響
SBIは、「金融庁によって提起された老後資金2000万円問題は、国民的な議論を引き起こし、老後資金問題は全ての年代において、自らがいつか直面する自分の問題として捉えられるようになる」と指摘。若年層においても貯蓄から資産形成への流れが生み出されると見ている。
仮想通貨関連事業について
北尾社長は、「暗号資産(仮想通貨)は、次の時代に必ず脚光を浴びる」と強調。
仮想通貨(暗号資産)関連事業について、SBI VCトレードは、2020年5月での改正資金決済法等の施行を契機に、事業拡大のための諸施策を実行中。北尾社長は、「法改正を契機に、新しい商品をどんどん提供する方針」を示した。
20年8月にCFDサービスを開始するほか、20年9月には、ビットコイン(BTC)やXRP(リップル)を組み入れた運用ポートフォリオを元にした「暗号資産ファンド」の業務開始を控えている。20年夏に募集開始する予定だ。
これは、SBIグループのリソースを結集した「暗号資産ファンド」を個人投資家に提供するもので、株、債券等の伝統的資産との相関性が低い「暗号資産」は分散投資の効果を高めるとしている。
今後は、「暗号資産、未上場株式など、新しい資産クラスを組み入れた新ファンドを設定し、顧客の分散投資ニーズに対応する」とした。
eSportsでXRP(リップル)支給検討
北尾社長は決算説明会で、「eSports市場規模は、これからもどんどん膨れ上がる」と強調。「SBI eSports」を先日設立したことで、若年層に人気の「eスポーツ」事業を通じたデジタル世代との接点強化にも言及した。
eスポーツとは、コンピューター・ビデオゲームによる対戦をスポーツ競技として捉えたもの。SBIは、eスポーツチームの運営、eスポーツメディアの運営、eスポーツに係るコンサルティング等について、選手年棒を仮想通貨XRP(リップル)にて支給することも検討するとしている。
新たな資金調達手段となるSTO
電子的手段を用いた資金調達手法であるセキュリティトークンオファリング(STO)の概要は以下の通り。
- 株式や債券、不動産などの実社会における資産を有価証券としてブロックチェーン上で流通するトークンとして管理
- 経営支配権を手放さない外部資金調達など、既存の有価証券にはない自由度の高い設計での資金調達が低コスト・短期間で行えると期待される
決算資料では、不動産業界とファンビジネスを例に出し、前者では「不動産収益権の小口化を通じた幅広い投資家層からの資金調達」を。後者では「ファンとして応援している事業が成功した場合に、所持するトークンを通じた収益の配分が得られるなど、関係性が双方向化」することを可能性として挙げた。
SBIは、STO市場の発展に向けたグローバル生態系の構築として、「STO市場の拡大を目指したセカンダリーマーケットの整備に向け、トークンに表示されるデジタル有価証券を取扱う、日本国内でのPTS設立を検討開始」すると強調した。
SBIHD主導で進める一般社団法人日本STO協会は、2020年4月に自主規制団体の認定を取得している。