- ハッキング被害のビットグレイルが破産申請
- 4月27日、同年2月に当時約204億円に相当する1700万ナノをハッキングによって流出していたイタリアの仮想通貨取引所、ビットグレイルが破産申請を行なったと発表しました。この事件はコインチェック社のハッキング事件のわずか2週間後の出来事でした。
- コインチェックとビットグレイル、事件後の対照的な展開
- 事件後、解決に向けて内外で協調して対応を進め、さらには自己資金での補填を発表するなどしていたコインチェックと、事件の責任の所在に関して内部での泥沼の争いを繰り広げ、補填も100%は不可能と発表していたビットグレイル。事件後の展開は対照的であり、特に資金力がネックとなって一方は買収と経営再建、一方は破産申請と明暗が分かれました。
4月27日、同年2月に当時約204億円に相当する1700万ナノをハッキングによって流出していたイタリアの仮想通貨取引所、ビットグレイルが破産申請を行なったと発表しました。
この事件はコインチェック社のハッキング事件のわずか2週間後の出来事でした。
共に話題に上がることも多かったこの二つの取引所の明暗を分けたものはなんだったのか、比較を交えながら解説します。
ハッキング被害のビットグレイルが破産申請
ビットグレイルの破産申請は先日27日、ビットグレイルの債権者を代表して、ボネリエレーデ法律事務所が提出しました。
これまで、すでに3000人もの被害者から債権者への連絡が発生しているとのことです。
ナノ開発者からは事件発生当時のチャットも公開され、ビットグレイルCEOのFirano氏がナノに対し事件前へ巻き戻すハードフォークを要求していたことや、それに対しナノは自らのシステムに欠陥はなかったとしてハードフォークを拒否したことが明かされていました。
これに対しFirano氏がさらに批判を加えるなど騒動は泥沼化してしまっています。
コインチェックとビットグレイル、事件後の対照的な展開
ビットグレイルのハッキング事件は2018年2月8日に起きました。
この事件ではナノ(XRB)が標的となり、当時のレートで204億円(現在価値は135億円)に相当する1700万ナノが盗まれました。
ビットグレイルはナノの取引の大きな割合を占める取引所で、今回の事件の原因となったシステムの欠陥が取引所にあるのかナノにあるのかについては未だ決着がついていません。
ビットグレイルCEOのFrancesco Firano氏とナノ開発陣営は責任の所在を巡って対立を深めており、いずれも相手にシステムの欠陥があるとしていました。
こういった状況は、ビットグレイルのハッキング事件の2週間前、同じくハッキング被害を受けていたコインチェックを取り巻く状況とは大きく異なる印象を受けます。
コインチェックは同年1月26日にハッキング被害を受け、当時のレートで約580億円相当のネム(XEM)が盗難されています。
この事件ではシステムの脆弱性は取引所に認められ、ネムに欠陥はありませんでした。
また、当初からネム財団が事件に対して協力的にはたらきかけ、有志のホワイトハッカーによって盗難されたネムの追跡が行われるなど、事件解決を最優先としたコインチェック内外の動きが印象的でした。
また、この二つのハッキング事件では被害者への保障対応も対照的です。
ビットグレイルでは事件直後、盗まれた1700万ナノに対し400万ナノしか保有していなかったため100%の払い戻しは不可能であると早い段階で発表していました。
その後正式に、盗まれたナノに対し20%をナノで、残り80%を独自に発行するビットトレイル・シェア(BGS)というトークンで補填するとし、その条件として補填を受けるユーザーに対して、いかなる法的措置も控えるという契約書に署名するよう要求していました。
一方コインチェックの場合は、盗難被害にあった全被害者に対し、事件後のレートを参考に、各ユーザーが保有していたネムに応じて総額460億円相当の補填を日本円で自己資金から行うと発表していました。
もちろんコインチェックのハッキングに対してもユーザーから常に厳しい意見が投げかけられていたことは間違いありませんが、通貨の運営サイドとの協力や、公式の場での記者会見からの迅速な対応などが見受けられ、ビットグレイルにはこういった状況との明確な差を感じざるを得ません。
また、ビットグレイルでは事件後もCEOがTwitterで挑発的な発言をしたり、ナノとの和解が進まないなど、未だ泥沼の様相を呈しています。
明暗分けた”資金力”
しかし、最終的に破産に至ったビットグレイルとマネックス社に買収され経営の立て直しを図るコインチェックの明暗を分けた最大の要因はその「資金」にあります。
ビットグレイルの売り上げなどの情報は公開されていないものの、破産に至るということは簡単に言えば今回の損失を補填するだけの資金がなかったということになります。
一方で、先ほども述べた通り、コインチェックでは460億円にものぼる補填を自己資金で対応する資金力がありました。
コインチェックに関しては先日正式な業績開示が行われたのでそちらの数値を改めて参照しておきます。
このようにコインチェックには事件の発生日を含む直近12ヶ月において、売上626億円、営業利益537億円という莫大な数字が築かれており、同時に公表された資料によると2017年12月一ヶ月間の取引高が3兆8537億円に到達しているなど、その異常なまでの成長ぶりが伺えます。
マーケットが日本とヨーロッパという違いもありますが、ビットグレイルが比較的新しい取引所であるのに対し、早くからサービスを開始して莫大なシェアを獲得したコインチェックの間には埋まることのない資金力の差があったことは紛れも無い事実です。
ビットグレイルにとっては残念な結果となった今回の破産申請ですが、被害を受けたユーザーからは破産時の資産の迅速な会計処理を求める声が多数上がっているとのことで、被害者を代表するボネリエレーデ法律事務所は「我々は公平な資産の分配を求めている」と語りました。
また、余談ではありますが、事件から10日後にビットグレイルCEOのFirano氏がTwitterでユーザーにアンケートを取ったところ、79%のユーザーがビットグレイルは再建ではなく破産すべきとの回答をしていました。