- SBI北尾社長、フィンサム2019講演
- SBI北尾社長はフィンサムにて、デジタル決済および仮想通貨領域について熱弁。米Rippleと提携したマネーグラムのほか、デジタル決済マネータップの展望、STOによる資金調達など、多岐に渡る事業展開に言及した。
SBI北尾社長、フィンサム2019講演
SBIホールディングスの北尾吉孝社長は3日、東京丸ビルで開催されたフィンテックの活用をテーマにした国際イベント「FIN/SUMフィンサム2019」にて、地域創生と第4のメガバンク、XRPなど暗号資産(仮想通貨)の展望について語った。
北尾社長は、大きなトピックとして「地域創生」と「次世代金融機関の創造」の2つを挙げ、国際送金、貿易金融分野についての項目では、デジタル決済および仮想通貨領域に関しても熱弁を奮った。
仮想通貨取引の手数料無料化へ
北尾社長は、ネオ証券化推進の一環として、最終的には「売買手数料などの無料化」を図ると言及。暗号資産取引もこの構想に含まれるとした。
狙いにあるのは、20〜30代の「若年層」の顧客基盤獲得だ。すでにSBI証券やオンライン銀行事業で、ミドル層の顧客基盤は強固なものがあり、次世代のための準備に余念がない。
例えば、レンタル大手「TSUTAYA」などで使用できる「Tポイント」を使って株の購入が可能になる「ネオモバイル証券」の設立では、投資初心者や若年層をターゲットにしている。「Tポイント」の年間利用者は累計6788万人に上るという。
手数料の無料化施策で成功した前例としては、世界最大級の米株式アプリ「Robinhood(ロビンフッド)」の仮想通貨取引サービスを挙げた。同社は、取引無料とする代わりに「月額有料制のプレミアムサービス」を行なっているが、これについては「十分な収益は確保できない。それだけに頼るような脆弱な収益基盤ではならない」と主張。「生態系としてのファンクションがないから厳しいと考えており、もっと緻密に、ロジカルな構想を描いている」と、さらに多角的な戦略を検討していることを示唆した。
ネオモバイル証券の成果としては、10万口座達成のため相応のプロモーションコストはかかっているものの、20〜30代の”若年層の顧客”を狙い通りに獲得できたと強調。今後も若い層を引き込むビジネスを徹底的に強化すべく、最大の武器は「手数料ゼロ(施策)」になると断言した。
ユーザーファーストで顧客基盤拡大
北尾社長による”ユーザーファースト(顧客第一主義)”の理念は、これまでもSBIグループが最も重視してきたスタンスであり、特に国内オンライン証券で独走態勢にあるSBI証券などを利用する、若い投資家層の支持率拡大の礎となっている。
北尾社長は、証券事業で提供するPTS(時間外取引市場)も例に挙げ、大引け後の不測の事態でも市場外取引が機能するように、日中取引と夜間取引を提供している唯一のPTSだと強調。投資家有利SORシステムのほか、これまでのように現物のみならず信用取引が開始できるようになったとする一方、日本国内における金融当局の承認プロセスの遅れにも、「金融サービスの受益者のためにやろうとしていることに対して、日本だとどうしていちいち障害があるのか。米国は違う。」などと苦言を呈する場面もあった。
また、連携事例の一つとして、仮想通貨交換業者の「VCトレード」との合同キャンペーンを取り上げた。
ネオモバイル証券の口座保有者限定で、「全員1,000円相当のXRPプレゼント + XRPの取引金額に応じて最大200,000円相当のXRP獲得のチャンス」を謳ったものだ。
これについて、口座開設数拡大と認知度アップにつながると自信を示し、以下のように続けた。
有機的な生態系での結びつきによって、”収益基盤”を確実に付けていく。満1〜2年を目処に、手数料の完全無料化を目指す。無料化が実現したら、一体どこがうち(SBIグループ)とまともに戦えるのか。
送金・決済分野について
なお、国際送金分野については、「スマートコントラクトのファンクション(機能)を持っているCordaは、さまざまな分野で使える。」「R3のDLT基盤cordaのユースケース拡大にも注力しており、SBIグループで、積極的にCordaを使用していく事を考えている。」などと言及した。
また、米Rippleが資金を入れて提携したマネーグラムについて、「マネーグラム創業時から、ネットワークを使用するなど非常に親しくしていた。」とした。
マネーグラムは世界200カ国以上の顧客基盤を持つが、SBIグループの国際送金会社として主体となるSBIレミットはこのネットワークを利用し、国際送金累計額は、7000億円を突破するなど、国内最大規模に成長しているという。
これについて北尾社長は、「海外送金時は、xCurrent。将来的にはxRapid。すなわち仮想通貨XRP(リップル)を使用する形で送金を行なっていく。SBIレミット、SBI Ripple Aisa、さらにSBIグループと関係の深い東南アジアの銀行と連携したシステムを開発中だ。これを遠くない将来に具現化し、次世代金融インフラを構築していく。」などと強調。
その上で、言葉に力を込めたのは、Rippleの技術を利用したスマホ向け送金アプリMoneyTap(マネータップ)の話に及んだ時だ。「マネータップをグループの主力商品にすべく注力している。米Ripple社とは、さまざまな形で色々な関係を結んで行く予定であり、今回の提携は非常に大きな意味がある。」と強調。
「既存インフラの改善のため、マネータップは、加盟店にとっての「(初期導入コスト)などの三重苦」を解消していく。米Rippleも、マネータップの株主として入る予定だ。」と明かした。
STOによる資金調達も視野
そのほか、「暗号資産組み入れファンドの準備は完了し、2020年4月の新法(金商法改正案)施行後に速やかにファンド設立および運用開始予定」との資料を公開。
これに伴い、STO(セキュリティートークンオファリング)が可能になることから、海外における仮想通貨トークン上場やSBI証券による募集・売り出しなど、STOによる資金調達のほか、「STO自主規制団体」の設立を目論んでおり、同時期の認定を目指すとした。