はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

米仮想通貨業界で懸念強まる「インフラ法案」はなぜ危惧されるのか 投票は米時間土曜日に インフラ法案の重要性とは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

インフラ法案、投票は米時間土曜日に

米国の暗号資産(仮想通貨)界隈で物議を醸す超党派のインフラ法案における仮想通貨関連の規定について、法案支持派の米議員らが新たな修正案を提出。ブローカーの定義再変更でさらに狭まる形となり、業界からは批判の声が強まっている。

インフラ法案とは

米国で議論が続くインフラ法案とは、超党派で推進が進められ、バイデン大統領が推し進める主要経済政策の一角だ。米国各地の老朽化したインフラを整備、一新することによる経済効果などを期待している。

インフラ法案とは

米上院から提出され、今後8年間で1.2兆ドル(約130兆円)を道路・橋、鉄道、港湾・空港、水道、高速通信網、電力網などの国内インフラへの投資を提案する法案。バイデン政権の経済分野の主要政策の1つ。

▶️仮想通貨用語集

130兆円規模の大型政策実現のためには、草案段階で予算の埋め合わせも提出する必要があり、総額5,500億ドル(60兆円)分は他分野から浮いた予算や、納税強化で投資案の予算として充てる計画がある。

米議会両院税制合同委員会(JCT)の当初の予測によれば、仮想通貨領域の課税強化により3兆円規模の税収調達する狙いがあるとしていた。

これまでの流れ(米時間)

7月29日:インフラ法案の予算埋め合わせのために仮想通貨課税が含まれることが判明

同日:業界・ロビー団体のブロックチェーン協会やCoin Centerが反対の姿勢を表明

8月1日:クリプト界隈から物議醸すブローカーの定義を一部修正。

8月2日:電子フロンティア財団も仮想通貨領域の過度な規制を批判。仮想通貨擁護派のPat Toomey議員も反対を示す声明を発表。

8月4日:仮想通貨支持派の米議員3名(Ron Wyden、Pat Toomey、Cynthia Lummis)が修正案を提出。マイナー、ウォレット企業、そして開発者をブローカーの定義から外すよう求めた。

8月5日:インフラ法案支持派の議員らが新たな修正案を提出。上記の修正案同様、PoWのマイナーは適用外だが、PoS系のマイナーや開発者はブローカーに含まれる形に。

米時間5日、インフラ法案を支持する共和党のRob Portman議員、そして民主党bのMark Warner議員とKyrsten Sinema議員らが新たな修正案を提出。Portman議員は5日、修正案を提出した議員らと同意し、「仮想通貨に関する規定をより明確にするべきだ」とコメントしたばかりだった。

Portman議員が提出した第二の修正案では、課税・申告対象となるブローカーの定義から、以下の2グループが対象外になると記された。

  • PoW(プルーフ・オブ・ワーク)≒マイニングを通して分散台帳の取引を承認する人(マイナー)
  • 秘密鍵の管理を行うハードウェアまたはソフトウェアを販売する企業(ウォレット企業)

ただ、プルーフ・オブ・ワークが名指しされた一方で、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)などの仮想通貨銘柄が対象外になったことで、イーサリアム(ETH)などDeFi関連のエコシステムへの影響が懸念されている。

ブロックチェーン関連のロビー団体「Coin Center」のエグゼクティブ・ディレクターであるJerry Brito氏は、開発者が対象外になっていない点を批判。

CoinPost提携メディアThe BlockのニュースディレクターであるFrank Chaparro氏は、この修正案は予想外であるとコメント。「DeFi(分散型金融)領域への攻撃にも見える」と述べた。

ホワイトハウスも修正案を支持

さらに、ホワイトハウス側もインフラ法案支持派の修正案を支持する声明を発表。以下のような声明を公開した。

米国政府は、Warner、 Portman、Sinemaの各上院議員が提案した、超党派のインフラストラクチャーパッケージを前進させ、暗号通貨市場における脱税防止策を明確にするための妥協案が成立したことを喜ばしく思っている。

この提案は、この新たな金融分野における税務コンプライアンスを強化し、高所得納税者が法律に基づいて支払うべき金額を確実に負担することを可能にすると考えている。

Wyden議員が上院でこの問題を取り上げようとするリーダーシップを発揮したことに感謝するが、Warner、 Portman、Sinemaの各上院議員が提出した代替修正案は、適切なバランスを保ち、税務コンプライアンスを促進するための重要な一歩を踏み出すものと考えている。

Coin CenterのNeeraj Agrawal広報は、「ホワイトハウスが、Pos銘柄よりPoW銘柄を支持している」と批判。「米国内の仮想通貨領域における発展に重大な影響を与えるだろう」とコメントした。

一方、代替修正案を提出したPortman議員はインフラ法案がインフレ率と税率を上げずに、老朽化している米国のインフラを強化する手段だと述べている

代替案に反対する声も

ホワイトハウスからのお墨付きを得た代替修正案だが、前日に修正案を提出した議員らは以下のように見解を述べた。

Ron Wyden議員

代替修正案は、プルーフ・オブ・ワークと呼ばれる最も気候に悪影響を与えるクリプト技術を、政府が認可するセーフハーバーとするものだ。この修正案を進めることは、気候やイノベーションにとっては間違いとなるだろう。

Cynthia Lummis議員

我々の修正案は、マイナーだけでなく、ハードウェアやソフトウェアの開発者も保護する。もう一方の修正案はそうではない。

選択肢は明確だ。

今後の流れ

Lummis議員によれば、インフラ法案のクリプト関連の修正案に関する投票が行われるのは米時間土曜日になる。そのため、SNS上で米国市民向けに自身の自治区の政治家に対して代替修正案に反対する意思を示すよう呼びかけた。

仮想通貨界法律の専門家として定評のあるJake Chervinsky弁護士は、米議員の多くはスマホを常備し、ツイッターを頻繁に確認していると発言。電話とともに、政治家宛てにツイートすれば声が聞かれるとした。

米時間土曜日(7日)にはまず代替修正案について投票が行われた後、Lummis議員らの修正案の投票が行われる。必要となる投票数は50票で、両方とも50票に達した場合には代替修正案が導入する見込みだ。

インフラ法案が危惧される理由とは

新たなインフラ法案下では、仮想通貨セクターへの課税強化目的で業界のブローカーに対して納税、そして取引を行ったユーザーの個人情報の開示が求められる。米国のブロックチェーン協会などの業界団体からは、過度な報告義務が海外移転やイノベーションの阻害につながると批判している。

また、ブローカーの定義が不明瞭であることから混乱につながるだけではなく、分散化ネットワークに携われる様々な企業や人物が予期せぬ影響を受けるとして、ブロックチェーン協会は新興技術へのリスク削減を検討するよう呼びかける書簡を提出した経緯がある。

Coin CenterのBrito氏も「ソフトウェアまたはハードウェアをユーザーに提供するだけで、ユーザーの取引をまったく把握していない者も対象とする可能性がある」と草案の修正を求めていた。

仮想通貨取引所FTXのSam Bankman Fried CEO(通称SBF)

大手仮想通貨取引所FTXのCEOであるSBF氏もインフラ法案の現状について言及。コインベースやFTXといった取引所に報告義務を課すのは当然であるとしたものの、ノード運営者や開発者、そしてウォレット企業などに同様の報告を課すのは不合理であるだけではなく、実際のところ不可能であるとした。

仮想通貨のトランザクションを行うツールを提供していても、仮想通貨を利用するユーザーの個人情報へのアクセスはできないと説明した。

SBF氏は当初の修正案は仮想通貨所得の過小報告や顧客情報を管理する企業・団体を対象にした適切な法案だったが、代替修正案は「奇怪」であるとコメント。

PoW以外のプロトコルでもマイナーやノードはエンドユーザーの個人情報に関する情報へのアクセス権限は持っていないとし、これはイーサリアムがETH2.0にアップグレードしても変わらないと言及した。

申告義務が生じるマイナーやノード、開発者などはブロックチェーン上で公開されている情報以外は有していないため、このような過度な規制は事業停止、または仮想通貨団体やクリプト関連のイノベーションが海外流出につながるとの見解を示した。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/04 金曜日
11:35
米雇用統計好調でビットコイン一時11万ドル超、アーサー・ヘイズが下落リスクを警告する理由は?
米国6月雇用統計が予想を上回る14万7000人となり、ビットコインは一時11万500ドルまで上昇した。しかしBitMEX創業者アーサー・ヘイズ氏は、米財務省がステーブルコインを国債購入の受け皿として活用することで市場から流動性が奪われ、8月開催のジャクソンホール会議前に9万ドル水準へ下落すると予測した。
11:00
アルトコイン取引の増加傾向続く 仮想通貨OTCレポートが公開
Finery Marketsは、仮想通貨のOTC取引に関する2025年上半期のレポートを公開。ビットコインやイーサリアム、ステーブルコインの他にアルトコインの取引が増加傾向を継続していると指摘した。
10:35
「1兆ドル予測は楽観的すぎた」、 JPモルガン ステーブルコイン時価総額の2028年予測を下方修正=報道
JPモルガンはステーブルコイン市場の2028年予測を5000億ドルとし、他社の1-4兆ドル予測を否定。決済利用は6%に留まり、主用途は仮想通貨取引と指摘。
10:00
ビットコイン、クジラによる売却と機関投資家の需要が拮抗=報道
仮想通貨ビットコインの大口保有者が過去1年で50万BTCを売却する一方、機関投資家の需要増加により価格が膠着している。今後のビットコイン価格については様々な見解がみられる。
09:30
ロビンフッドCEO OpenAI株式トークン化を「革命の種」と表現も、提携否定で波紋広がる
ロビンフッドがOpenAI株式トークン化サービスを欧州で開始したが、OpenAIは提携を否定。テネフCEOは「トークン化革命」と強調するも、未上場株式の権利問題が浮き彫りに。
09:16
仮想通貨SEI、国内取引所OKJに新規上場へ
国内暗号資産取引所OKJが2025年7月8日からセイ(SEI)の取扱いを開始。ゴールドマンサックス・Robinhood出身者が開発した高速ブロックチェーンで、米国でETF申請も話題。入出庫は7月8日、売買は7月11日17時開始予定。
09:00
ビットコイン今年4度目11万ドル超え、株価相関強まり最高値更新も視野に|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは3日に今年4度目となる一時11万ドル突破を記録した。7月3日から4日にかけて、トランプ政権の大きく美しい法案が可決されたことに加え、米雇用統計が底堅い推移を示したこと、さらにシンシア上院議員が暗号資産の減税法案を提出したことが追い風となった。
08:05
ETF購入減速でビットコイン価格上昇に陰りか、ETHは蓄積量が過去最高に=Cryptoquant分析
仮想通貨ビットコインETFとMSTR(ストラテジー)の購入は大幅減速、全体需要の縮小で価格上昇が鈍化。一方、イーサリアムは6月に蓄積アドレスが史上最高を記録、機関投資家による大量保有が続く。
07:45
米下院、7月14日の週を「仮想通貨週間」と指定 3つの主要法案を審議
米下院指導部が7月14日の週を「仮想通貨週間」に指定し、GENIUS法、CLARITY法、反CBDC監視国家法を審議すると発表。
07:25
IMF、パキスタンの仮想通貨採掘などへの補助金提供提案を却下
IMFは、パキスタン政府による仮想通貨マイニングなどのための電気代補助提案を却下。同国は、ビットコインのマイニングとAIのデータセンター向けに2,000MWの電力を割り当てる計画を発表している。
07:20
ビットコイン今後の価格、9.5万ドルまで下落の可能性も=アーサー・ヘイズ分析
仮想通貨アナリストのアーサー・ヘイズ氏は、8月のジャクソンホール会議まで市場が横ばいか軟調な展開を予想。TGA補充の影響でビットコインが9万~9.5万ドルまで下落する可能性があるという。
06:30
米国初のソラナ現物ETF、取引開始初日で出来高約48億円の好スタート
「REXオスプレイ・ソラナ・ステーキングETF」が7月3日に取引開始。米国初のステーキング機能付き仮想通貨現物ETFとして約100万ドルの運用資産で滑り出し。
06:10
米上場ナノ・ラボ、72億円で仮想通貨BNB追加購入
ナスダック上場のナノ・ラボが74,315BNBを約5000万ドルで購入。総額5億ドルの転換社債プログラム第1弾として、BNB流通量の5-10%保有を目指す。
05:50
上場企業の仮想通貨トレジャリー戦略に警鐘、F・テンプルトンが「負の連鎖」リスク指摘
フランクリン・テンプルトンのアナリストが流行する企業の仮想通貨トレジャリー戦略について分析。プレミアム維持の困難さと市場下落時の負の連鎖リスクに警告。
05:35
ルミス議員、仮想通貨税制改正法案を再提出 300ドル未満取引の免税など盛り込む
ルミス上院議員が仮想通貨税制改正法案を再提出。300ドル未満の小額取引免税、マイニング・ステーキング報酬の二重課税解消など包括的な改正を提案。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧