SECもMango Marketsハッカーを立件
米証券取引委員会(SEC)は20日、仮想通貨デリバティブ取引所Mango Marketsへの攻撃を指揮したとしてアブラハム・アイゼンバーグ被告を提訴した。
アイゼンバーグ被告に対しては、すでに米司法省と米商品先物取引委員会(CFTC)から刑事・民事で訴えられているところだ。今回、新たにSECからも裁判を起こされることになった。
SECは、ニューヨーク州マンハッタンの連邦地裁に訴状を提出。アイゼンバーグ被告を、証券法および市場操作条項違反で訴えており、差し止め命令、不正に得た利益の返還や罰金を求めている。
アイゼンバーグ被告は、2022年10月、Mango Marketsから約150億円(約1億1,600万ドル)の暗号資産(仮想通貨)を盗んだ攻撃に関与していた。
アカウントを複数用意して、自己売買により価格操作を行ったものである。まず、取引所トークンであるMNGOトークンの永久契約(パーペチュアル)を大量に自身の別アカウントに売った。その後、MNGOトークンの価格を人為的に引き上げる目的で、同トークンの一連の大量購入を行った。
この結果、MNGO永久契約の価格が上昇。被告は、自分の永久先物ポジション価格上昇を利用して、Mango Marketsから大量の仮想通貨を借り出し、プラットフォームから資産を流出させた。
永久契約(パーペチュアル)とは
ある資産を将来の日付に、あらかじめ定められた価格で売買する先物契約の一種。永久契約の場合は、一般的に清算日付に定めがなく、無期限で保有し続けることができる。
▶️仮想通貨用語集
アイゼンバーグ被告は、ハッキングから数日後、自ら名乗り出て価格操作を認めたものの、プロトコルを設計された通りに使用した行為は「有益な取引戦略」で合法なものだったと主張していたところだ。
しかし米捜査当局はアイゼンバーグ被告を追及。12月下旬にプエルトリコで逮捕した。
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経緯として、被告は攻撃後、不正に得た資金の大半を返還するのと引き換えに、犯罪捜査を要請しないようMango DAO(自律分散型組織)に提案。Mangoコミュニティは、被告が約87億円(6,700万ドル)を返還する代わりに、報奨金として約61億円(4,700万ドル)を支払うことを承認していた。
このような場合でも、被告は、その後当局により告発されることになった。当局が立件へと動いたことで、今後同様の価格操作を防ぐ方向で働くことが期待されそうだ。
SECの仮想通貨ユニット
SECの仮想通貨・サイバーユニットのチーフを務めるDavid Hirsch氏は、次のようにコメントした。
アイゼンバーグ被告は、仮想通貨証券として売買されたMNGOトークンの価格を人為的に膨らませ、Mango Marketsから利用可能な資産をほぼすべて引き出した。この結果、トークン価格が攻撃前の水準に戻ったときには、プラットフォームの保有資産は赤字になった。
今回のように、今後もSECは、証券の種類にかかわらず、市場操作を根絶することに引き続き尽力していく。
SECは、MNGOトークンを「証券」とみなして立件した形である。
SECは、2022年5月に仮想通貨領域に携わる調査チームを20名増員。仮想通貨の提供などの他、レンディングとステーキング、DeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン)にも取り組んでいくとしていた。
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