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「ハマスへの巨額の仮想通貨寄付の証拠はない」=データ分析企業Elliptic

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Ellipticの分析

暗号資産(仮想通貨)分析企業Elliptic社は25日、「ハマスによる仮想通貨クラウドファンディングについての事実関係をはっきりさせる」と題した声明を発表。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙や、エリザベス・ウォーレン上院議員による「ハマスがイスラエル攻撃の資金として多額の仮想通貨寄付を受け取った」という主張を裏付ける証拠はないと指摘した。

Ellipticは、追跡可能という仮想通貨の特徴は「テロ資金供与(調達)ツール」としては不適切であり、ハマスが仮想通貨によって資金調達した額は、他の資金源と比較して微々たるものに過ぎないと述べている。

実際、ハマスは2023年4月、「寄贈者の安全が懸念されており、危害が及ばないようにする」ため、全ての仮想通貨による資金調達を停止したという。

この動きは、米国の法執行機関が、寄付金の洗浄に使われたウォレットを差し押さえ、寄贈者を特定し、資金調達サイトを閉鎖したことを受けてのものだったとEllipticは説明した。

このような背景を踏まえることなく、WSJ紙は「イスラエル攻撃の背後にあるハマス過激派が仮想通貨で数百万ドルを集めた」と題する10月10日の記事で、9,000万ドル(約135億円)超の仮想通貨がハマスの手に渡った主張。その根拠として、Elliptic社のデータを示していた。

さらに10月17日、このWSJの記事の情報を唯一の根拠として、ウォーレン上院議員と100名以上の米国連邦議員が連名で、ホワイトハウスと米財務省に宛て、テロ資金供与における仮想通貨利用の防止策の詳細を求める書簡を送付。「ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦(PIJ)は、米国の制裁回避のために、2021年8月から今年6月までの間に、仮想通貨で1億3,000万ドル(195億円)を調達した」と主張した。

政治家やジャーナリストは、仮想通貨による資金調達がハマスをはじめとするテロ組織の重要な資金源であるかのように描いてきたが、データはそのような描写をサポートしていないとEllipticは指摘。事実関係を明らかにするためにWSJとウォーレン議員と協議したと述べた。

資金凍結

Ellipticは、10月7日のハマスによるイスラエル奇襲以降、仮想通貨募金キャンペーンを運営してきた親ハマスの報道機関「Gaza Now」を具体的例として取り上げ、仮想通貨業界の努力により、寄付された資金のほとんどが凍結されていると説明した。

まず、10月7日以降に寄付された仮想通貨は2万1000ドル(約315万円)に過ぎない。そのうちの約2,000ドルをGaza Nowは取引所に送金したが、即座に凍結された。さらに、ステーブルコインによる寄付約9,000ドルは、発行者であるテザーにより凍結されたという。

欠陥のある分析方法

ブロックチェーン分析会社Chainalysis(チェイナリシス)も、テロ資金供与の手段として仮想通貨が利用されているとの主張に一石を投じている。

同社は18日に発表したレポート、「事実関係を正す:テロ資金供与における仮想通貨の役割を推定する際の、不的確な方法論」で、サービスプロバイダーへの資金流入を追跡することで、誤った結論が導き出された可能性があると指摘した。

チェイナリシスがイスラエル攻撃に関する資金の推計を確認したところ、テロ資金供与に関連する資金を受け取っていたサービスプロバイダーへの「全ての資金の流れ」が含まれていた可能性が高いという。

つまり、WSJが推測した金額には、明らかにテロ資金とは関係ない資金も含まれていたということだ。

チェイナリシスは、サービスプロバイダーの取引活動の全てがテロと関連していると考えるのは間違いであると指摘。ハマスに関する取引の実際の規模は、広く報道されている数字の約0.5%にあたる45万ドル相当(6,750万円)と推定している。

チェイナリシスは、「ブロックチェーン技術の本質的な透明性と、テロ資金供与キャンペーンの公共性を考慮すると、仮想通貨は大規模なテロ資金調達には、効果的な解決策ではない」とまとめた。

元議員も批判

元連邦議会議員でブロックチェーン・イノベーション・プロジェクトの共同議長を務めるデービッド・マッキントッシュ氏とティム・ライアン氏は、ウォーレン議員宛の書簡で、同議員らがホワイトハウスに送った書簡は、「ハマスの仮想通貨使用を著しく誤って伝える、重大な欠陥のある報道に基づいている」と批判している。

WSJの報道は、「著しく欠陥のあるブロックチェーン分析手法」に依存しており、これまでハマス関連の取引をおこなってきた取引所やサービスプロバイダーを経由するすべてのフローがハマスへの支払いを表していると仮定していると両氏は指摘。以下のような例えで説明した。

取引所が 20億ドル相当の取引を処理し、そのうちの2,000ドル相当の取引がハマスに関連していた場合、あなたの書簡で使われた会計基準では、20 億ドル相当の取引はすべてハマスへの資金提供であると想定されることになる。

マッキントッシュ氏らは、ハマスは資金のほとんどを仮想通貨ではなく、法定通貨経由で受け取っていくことに、議論の余地はないと主張。「仮想通貨をテロなどの違法行為に使用することは、ほぼ実行不可能といえるほど、非常に困難だ」と述べた。

記事の撤回は

米仮想通貨メディアCoinDeskのコラムニストであるニック・カーター氏は今回のWSJの報道を厳しく批判してきた一人だ。カーター氏は、Ellipticが事実関係を正した今、今度はWSJの番だとツイートした。

このツイートに応える形で、仮想通貨の銀行サービスを提供する「Custodia Bank」のケイトリン・ロングCEOは、約20%の議員が誤った事実に基づいて、書簡に署名したと批判。Ellipticが事実関係を明らかにしているが、WSJと当該議員らは、主張を訂正するのだろうかと問いかけた。

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