WLFIは「厄介な事例」
米下院監視・政府改革委員会の民主党幹部であるジェラルド・コノリー議員は、同委員会のジェームス・コマー委員長宛ての書簡で、トランプ大統領の暗号資産(仮想通貨)事業に関する調査を要請した。
コノリー議員は、昨年5月にコマー委員長が民主党のケイティ・ポーター議員と共同で提出した「大統領倫理改革法案」に言及。この法案は大統領及び副大統領の職務に関連した金銭のやり取りの透明性を高めるため、財務情報開示を義務付けるものだ。
コノリー議員は、トランプ氏が大統領就任時に「重大な利益相反」を抱えていた可能性を示唆し、委員会は、この法案の基盤となる「大統領の透明性と説明責任」を追求するために、直ちに行動を起こすべきだと主張した。
同氏が「厄介な事例」として問題視しているのは、トランプ大統領の子息らが中心となって進めるDeFiプロジェクト「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)」だ。
コノリー氏は、昨年11月にある外国人起業家が3,000万ドル(約47億円)のWLFトークンを購入するまでは、同プロジェクトは「業績が振るわず低迷していた」と指摘。この起業家の投資によりWLFIは目標とする収益基準を上回り、「トランプ大統領とその家族に直接資金を流し始めることが可能になった」と述べた。
WLFトークンを購入しても経済的利益は得られないことから、「悪質な市場参加者や外国の利害関係者が大統領の歓心を買うための、簡単な仕組みを提供している」と同氏は批判。当該起業家の仮想通貨プラットフォームは、証券詐欺の疑いで米証券取引委員会(SEC)から調査を受けていると付け加えた。
トロンとの提携強化
コノリー議員が言及している起業家とは、トロンの創設者ジャスティン・サン氏で、トロンDAOはこれまでに、トークン購入という形でWLFIに合計7,500万ドル(約117億円)を投資している。
WLFIは21日、トランプ氏の大統領就任を記念して、470万ドル(7.3億円)相当のトロン(TRX)を含む様々な銘柄を購入したと発表。この動きについて、サン氏は「仮想通貨への大きな貢献である」と称賛した。
(投資によって)強化されたパートナーシップは、WLFIにとって重要な支援となるだけでなく、トロンをトランプ一家の重要な同盟者として位置付けることにもなる。
今後、トロンはWLFIとDeFi、ステーブルコイン、クロスチェーン技術で協力し、さらなるブロックチェーンのユースケースを共同で模索する予定だ。
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トランプ大統領のミームコイン
コノリー議員は、大統領就任の3日前にトランプ氏が販売開始したミームコイン「TRUMP」についても苦言を呈した。
TRUMPコインの事業は、トランプ一族の関連会社CIC Digitalが運営しており、他の関連企業とともにトークンの80%を所有していると指摘。「トランプ大統領、ひいてはトランプ一族会社の金銭的絡み合いと見返りの約束の範囲が拡大していることは憂慮すべきことだ」と批判した。
倫理の専門家はすでに、トランプ氏は「人々が大統領の家族に資金を送金できるような金融商品を作ることで、文字通り、大統領職を利用して金儲けをしている」との懸念を表明している。
TRUMPの価格は就任前日の1月19日、最高値の73.43ドル(11,417円)に達したが、就任後に暴落。執筆時点では、史上最高値から63%下落し、26ドル台(約4,000円)で取引されている。
ビットコイン準備金実現の可能性は
トランプ氏の仮想通貨に関する選挙公約で最も注目されているのが、米連邦政府によるビットコイン準備金設立だが、その実現を疑問視する人々も多いようだ。
トランプ大統領が署名した仮想通貨関連の大統領令には、「戦略的国家デジタル資産備蓄の創設を評価する」とあるが、ビットコインへの具体的な言及はなかった。
予測市場Polymarket(ポリマーケット)では、「トランプ大統領は就任後100日以内にビットコイン準備金を設立するか」という質問に対し、肯定的なのはわずか19%にとどまっている。
一方、州レベルでは、ビットコインを州の戦略的準備資産として採用するための法案提出が相次いでいる。テキサス州やオクラホマ州など13州が法案を検討していたところに、ワイオミング州とマサチューセッツ州が加わり、直近ではオハイオ州が16番目の州として加わった。
サトシ・アクション・ファンド (SAF) の共同創設者であるデニス・ポーター氏は、わずか3か月前には、ビットコイン準備金法案の導入を検討していた州はゼロだったと指摘し、この運動は「州が先導する」と述べた。
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