- 中国はブロックチェーンの中央集権的利用を考えている?
- 中国の金融規制当局関係者が、ブロックチェーンは完全に分散化されず、中央集中型システム上に構築される方が、より効果的に機能するとの考えを述べました。ここから中国政府のブロックチェーン技術に対する姿勢が読み取ることが出来るかもしれません。
中国のブロックチェーン技術に対する姿勢
北京で開かれた全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)で、中国の金融規制当局関係者が、ブロックチェーンは完全に分散化されず、中央集中型システム上に構築される方が、より効果的に機能するとの考えを述べました。
中国証券監督管理委員会(CSRC)情報センター主任であり、今週の中国人民政治協商会議で政策顧問を務めている張野氏(Zhang Ye)は、政府はブロックチェーン技術の開発に多大な努力を尽くすべきだとの意見を述べ、公共サービスに人工知能やブロックチェーン技術などの先端技術を積極的に取り入れるよう、国の公共部門に提言しました。
同氏は、ブロックチェーン技術の持つ可能性を大いに評価する一方、ブロックチェーン技術から最大限の恩恵を受けるためには、集中化された基盤を利用できるかどうかにかかっているとしています。
同氏は、中国証券業界の正式報道機関であるセキュリティタイムズ紙とのインタビューで次のように述べました。
「技術的な観点からは、完全な分散化を主張するブロックチェーン推進派は、その論拠に乏しいと言わざるを得ません。
なぜなら、ブロックチェーンそのものが、中央集中的に開発されたソフトウェアであり、ブロックチェーン技術に不可欠な要素はID認証ですが、その認証技術である公開鍵基盤(PKI =Public KeyInfrastructure )も同様だからです。」
さらに、一部のケースでは分散化が必要だと認識しているが、現在のすべてのアプリケーションを分散化する必要があるかどうかは慎重に検討する必要があると、同氏は述べました。
「肝要なのは、集中化された基盤を通して、どのようにして分散化を達成するか、その方法を探求していくことです。」
なお、中国の関係者からのこのようなコメントが出されるのは、これが初めてではありません。
中国の流れ
昨年10月に、中国人民銀行(PBoC) デジタル通貨研究所所長のYao Qian氏を含む関係者は、政府が発行するデジタル通貨というビジョンの概要を示し、その中で通貨は中央で発行管理されるとしたものの、分散化の技術の利用を完全に否定はしませんでした。
一方で、1月には人民銀行副総裁が、中央発行のデジタル通貨からは、公共ブロックチェーンの基本的機能であるPtoP機能や、匿名性を排除する可能性もあるとの筋書きを示しました。
さらに、中国銀行元代表取締役で、現在、中国のフィンテック自主規制組織でブロックチェーンリサーチを統率する 李礼輝氏(Li Lihui)は、現在、BMやR3などの企業でのブロックチェーン技術導入の取り組みは、本質的に、完全な分散化ではなく、複数の集中化の組み合わせを取り入れて設計されていると述べています。
ここから読み取れるのは、中国政府が、システムの根底にある基盤のコントロールを完全に掌握しつつ、ブロックチェーン技術の恩恵をどのようにしたら受け取れるのか、模索し、格闘している姿かもしれません。