はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

『国税庁の計算書だけでは解決しない !?|仮想通貨の確定申告簡略化の背景』

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨の確定申告簡略化の背景
国税庁も本腰を入れる、仮想通貨の税金問題。投資家にとって重要な部分について、仮想通貨の確定申告支援サービスを提供する株式会社Aerial Partnersが解説。

仮想通貨の確定申告簡略化の背景

2018年11月21日に、国税庁から「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて、(FAQ)」が公表されました。

仮想通貨投資家は、この「FAQ」に従って2018年度の仮想通貨の所得を取り扱う必要があります。その中でも、投資家にとって重要な部分を仮想通貨の確定申告支援サービスを提供する株式会社Aerial Partnersが解説します。

国税庁による簡略化の動き

国税庁は2018年11月、仮想通貨の確定申告の課題となっている、煩雑な損益計算の簡略化を目的とした公表を行いました。

仮想通貨交換業者から交付される、投資家の年間の取引の概要がまとめられた「年間取引報告書」を利用し、国税庁が公開している「仮想通貨の計算書(総平均法用)」を使うことで、仮想通貨の損益計算が簡略化するというものです。

投資家が利用している取引所によっては、交付される「年間取引報告書」と国税庁の「計算書」を利用することで、シンプルに損益計算を完了することが可能だと考えられます。

専門的な知識は必要なく、国税庁のマニュアル通りに数字を入れるだけで仮想通貨の損益計算が完了します。ただし、計算書の名前にもある通り、計算できるのは総平均法の計算方法のみとなっています。

出典:国税庁HP

仮想通貨の損益の2種類の計算方法について

総平均法について、少しだけ説明します。

2017年12月に国税庁より『仮想通貨に関する所得の計算方法等について』という発表がありました。これによると、仮想通貨の損益計算(取得価額の計算)の方法は、原則としては移動平均法を利用し、例外として継続適用を条件に総平均法も認められています。

つまり、2種類の計算方法が認められていることを意味しています。

  • 移動平均法:通貨ごとに購入の都度取得価額を計算する方法
  • 総平均法:通貨ごとに購入金額の年間合計額を購入数量の年間合計数で割って取得価額を計算する方法

『仮想通貨に関する所得の計算方法等について』にもあるように、移動平均法を原則適用することとしているにもかかわらず、今回公表された計算書が総平均法のみなのは、移動平均法での計算難易度の高さが理由と考えられます。

移動平均法で計算を完了するためには、全ての仮想通貨取引を時系列順に並べて計算する必要があり、複数の取引所で取引を行なっている場合などは非常に複雑な作業を必要とします。

その一方、全ての取引を合計して計算する総平均法であれば、取引の順序は考慮しないですし、計算回数も少なくて済みます。

「年間取引報告書」と「仮想通貨の計算書(総平均法用)」で計算が簡略化可能なのはそのためです。

計算方法の変更について

総平均法を利用することで計算を簡略化する方針に付随する形で、移動平均法から総平均法に変更が可能ということが明確化されました。

これにより、昨年度以前に移動平均法を採用した申告者については、今後継続適用を条件に総平均法に変更することが認められます。この際、過年度分の総平均単価を計算する必要がありますので、注意が必要です。

「年間取引報告書」と「仮想通貨の計算書(総平均法用)」だけでは計算が難しい例

国税庁の提示する簡略化方針では対応できない事例がいくつかあります。

  • 移動平均法を適用する場合

先述の通り、「年間取引報告書」と「仮想通貨の計算書(総平均法用)」では、移動平均法で計算することはできません。

  • 海外取引所を1つでも利用している場合

仮想通貨の海外取引所を利用されている投資家は、「年間取引報告書」を交付される事がありませんから、自分で計算をする必要があります。

税務調査が入り、海外取引所での取引があるにも関わらず損益計算に含めなかったことが発覚した場合には、多額のペナルティが課される可能性もありますので、必ず網羅するようにしましょう。

  • マイニング/ICOへ参加/仮想通貨で購入を行なった場合

マイニング、ICOへの参加や仮想通貨での購入などの、仮想通貨の売買以外の取引は、自分で計算をする必要があります。

マイニングは通貨取得時点で収入となります。また、ICOへの参加や仮想通貨での購入に使用した通貨は、仮想通貨を売却した際と同様の取り扱いになります。

  • 2017年以前に仮想通貨取引をしている場合

仮想通貨交換業者から交付される予定の「年間取引報告書」は、2018年以降分のみとなります。2017年以前に取引がある投資家も自分で計算をする必要があります。

仮想通貨投資家の中にはこれらに該当する方が多くいるものと考えています。Gtaxなどの、国内外の取引を移動平均法・総平均法両方で計算できる無料計算ソフトを使うか、仮想通貨に精通した税理士に相談するようにしましょう。

出典:国税庁HP

国税庁が仮想通貨取引の税申告漏れ事例を初公表

先日、仮想通貨取引で得た利益を適切に申告していなかった不正事案が、国税庁により初めて公表されました。

また、富裕層に対する調査状況や無申告者に対する調査状況が公表され、いずれのケースでも調査件数や追徴税額は前年度と比較すると増えています。

今後は仮想通貨に関する税務調査もより一層徹底されることが想定されるので、必ず仮想通貨に関する損益を把握し、適切に確定申告を行うことを心がけましょう。

最後に

2017年以降大きな盛り上がりを見せた仮想通貨市場ですが、その実、2017年度以前の確定申告を正確に行うことができなかった投資家は少なくありません。

そして、その大きな要因となっている損益計算の煩雑さを解消するための取り組みが行われることは評価に値すると思います。

一方、仮想通貨をとりまく個人利用者の取引形態は日々多様化しており、限られた取引所での純粋な売買だけでなく、国内外の取引所やウォレットをまたいだ新たな取引形態が日進月歩で生まれています。

今回公表された「年間取引報告書」や「仮想通貨の計算書(総平均法用)」を利用した確定申告は、仮想通貨利用者のうち相対的にシンプルな取引を行う利用者にとって大変有益ですが、今後も仮想通貨利用者の実態に即した効果的、且つ効率的な制度改正がなされることを切に願います。

株式会社Aerial Partners代表取締役・沼澤健人

仮想通貨の確定申告サポートを行う「Guardian」・仮想通貨の損益計算ソフト「Gtax」を提供し、仮想通貨投資家の支援に務める。また、Twitterの仮想通貨アカウント「二匹目のヒヨコ(@2nd_chick)」の中の人としてブロックチェーン業界の会計・税務領域を中心に啓蒙活動を行っている。

会計コンサルティングファームであるAtlas Accounting代表も兼任し、仮想通貨交換業者やクリプトファンド、複数のICOプロジェクトの顧問を務めており、一般社人日本仮想通貨税務協会(JCTA)理事も兼任。

他、HashHubアドバイザー・Neutrinoコミュニティアドバイザー等。

CoinPostの関連記事

「Aerial Partners」:会計税務・法務・資産活用のプロ|ブロックチェーン社会実装の道を開く
仮想通貨税制の現状及び今後の課題、少額決済に対する法整備と資産を安全に移す方法、ブロックチェーンがエンドユーザーにもたらすこと等について株式会社Aerial Partners代表取締役沼澤健人氏に話を伺った。
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
05/19 月曜日
18:00
Bitcoin革命、ZK技術で実現するBitcoinOSのアプローチ
ビットコインの可能性を広げるBitcoinOS(BOS)は、ZK技術を活用してビットコインのコードを変更せずにスマートコントラクト機能やスケーラビリティを実現。BitSNARK、Grailブリッジ、xBTCなどの革新的プロダクトで、ビットコイン中心の統合エコシステムを構築。
17:15
リミックスポイント、最大56億円を調達へ 44億円でビットコイン買い増し
リミックスポイントがEVO FUND向け新株予約権で約56億円を調達。44億円で仮想通貨ビットコイン買い増し、12億円をWeb3バリデーター事業に投資へ。
16:50
変わるWeb3業界の投資地図 今注目のVC3社が語る「実需とインフラ」重視の新戦略
TEAMZ WEB3 AIサミットで取材したC² Ventures、DFG、Jsquareの3社が語るWeb3投資の現在地。実需・収益性・規制対応を軸に見極めが進む中、インフラやAIへの関心、そしてアジア市場の可能性にも注目が集まる。
15:05
アーサーヘイズが今夏以降の「アルトシーズン」再来の見通し 年末までにビットコイン2.5倍予想も
アーサー・ヘイズ氏が仮想通貨の強気相場を予測、今夏を目処にBTC20万ドルへの上昇とアルトシーズン開始を見込む。自身のポートフォリオは20%を金(ゴールド)に配分し「最終的に1〜2万ドルまで上昇」と展望する。米国債務拡大がビットコイン高騰の追い風になると分析した。
14:15
中国系上場企業DDC、5000BTC保有目標のビットコイン準備金戦略を発表 
米国上場の中国系食品企業DayDayCook(DDC)が、ビットコインを戦略的準備金として3年間で5,000BTCの蓄積を目指す計画を発表した。同社は、すでに100BTCを購入済みで、2025年末までに500BTCの取得を目指す。一方、中国の仮想通貨規制をいかに回避するかにも注目が集まる。
13:22
メタプラネット、151億円でビットコイン追加購入 保有数7,800 BTCに
メタプラネットが約151億円で暗号資産ビットコイン1,004BTCを追加購入。保有総数は7,800枚に拡大。5月の資金調達・債務償還の経緯も紹介。
11:40
過去最高値目前のビットコイン、迫るゴールデンクロスが中・長期の買いシグナルを示唆
ビットコインは投資家が重視する50MAと200MAのゴールデンクロスによる買いシグナルが形成間近に。米国債格下げでドル安圧力も追い風にとなるか。トランプ米政権の貿易・関税政策とインフレ懸念がのヘッジ需要を高める可能性が指摘される中、さらなる上昇を示唆する。
11:11
CMEグループ、XRPの先物取引を本日より提供開始へ 
米CMEグループが本日より暗号資産(仮想通貨)XRPを先物取引サービスを開始する。機関投資家の参入機会の拡大とリップル社とSECの裁判の和解進展状況も含め、その背景を解説。
05/18 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、企業のETH大量購入やアーサー・ヘイズのBTC100万ドル到達予測など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
12:49
UPCXが2025 Tokyo E-Prixスポンサーに 次世代決済とFanlinkの可能性を解説
UPCXが「2025 Tokyo E-Prix」のスポンサー契約を発表。世界標準決済を目指すブロックチェーンプラットフォーム「UPCX」と、ファン支援サービス「Fanlink」の特徴をCEO中野誠氏が解説した。秒間10万件の処理能力やグローバル展開の展望とは?
11:00
週刊仮想通貨ニュース|メタプラネット株価1340円到達の可能性に高い関心
今週は、仮想通貨ビットコインの専門家アダム・バック氏によるメタプラネットの株価試算、資産運用会社によるイーサリアム価格急騰の要因分析、空売り投資家ジム・チェイノス氏の投資戦略に関するニュースが最も関心を集めた。
05/17 土曜日
14:00
アブダビ政府系ファンド、ビットコインETF買い増しで保有額750億円突破
アブダビのムバダラ・インベストメントが第1四半期にブラックロックのビットコインETFを49万株追加購入。ゴールドマン・サックスは最大保有者として3000万株を保有。
13:05
ビットコインETFフェイクニュース事件、犯人に懲役14か月の判決
米SEC公式Xアカウントを乗っ取り、ビットコインETFについてのフェイクニュースを流した26歳の被告に懲役14か月の判決が下りた。偽情報で仮想通貨市場を混乱させたことが重大視された。
12:43
史上最高値を試すのは時間の問題か、米中貿易緩和も上値トライ失敗|bitbankアナリスト寄稿
米中関税115%引き下げ合意やインフレ指標下振れもビットコイン上値を抑える展開。アリゾナ州知事の暗号資産準備金法案への拒否権行使も影響。短期筋による損切り送金増加で売りをこなした可能性。史上最高値トライは時間の問題か。bitbank長谷川アナリストが週次相場分析を解説。
11:00
ビットコイン長期保有数1437万BTCに到達も、利確売り強まる=アナリスト分析
ビットコインの長期保有者が3月から5月にかけて利益確定を加速。支出利益率は71%増加し227%の平均リターンを記録。長期保有量は1437万BTCに達するも、市場サイクルの分配フェーズへの移行を示唆。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧