- gumi國光社長に独占インタビュー
- 5月30日に仮想通貨・ブロックチェーン事業への参入と、子会社gumi venturesを通じて仮想通貨ファンド(gumi Cryptos匿名組合)を組成し、仮想通貨への投資を開始していることを併せて発表したgumiの國光宏尚社長にCoinPost独占インタビューを行いました。前編、後編の二部構成となっており、今回はブロックチェーンファンドの話や、ブロックチェーンじゃなければできないことなどの本質を突いた興味深い話が多く語られております。
gumi、仮想通貨・ブロックチェーン事業参入へ
5月30日のプレスリリースにて、株式会社gumiは仮想通貨・ブロックチェーン事業に参入することと、子会社gumi venturesを通じて仮想通貨ファンド(gumi Cryptos匿名組合)を組成し、仮想通貨への投資を開始していることを併せて発表しました。
仮想通貨・ブロックチェーンに関する具体的な事業内容はまだR&D段階とするも、市場が急拡大している同分野において、投資やコンテンツの自社開発を行っていく方針であることをプレスリリースで明らかにしております。
また仮想通貨ファンドにおいては、シリコンバレーで25年以上Executiveを務めた経験を持つMiko Matsumura氏を共同事業者に迎え、国内大手金融機関や韓国の大手ゲーム開発・運営企業等が同ファンドに出資しているとのこと。
このたび、gumiの國光社長から今回の仮想通貨・ブロックチェーン事業への参入と、同分野への投資ファンドについて、CoinPostでインタビューの機会をいただきましたので、以下ご覧下さい。
國光宏尚社長へ独占インタビュー
※以下、青線部は全て國光氏が語っている部分になります。
新規事業の必勝法、ブロックチェーン事業の戦略にも
國光氏:
gumiがやっている新規事業は三つありまして、一つ目はモバイル動画、二つ目はVR/AR、三つ目は最近はじめた仮想通貨・ブロックチェーンになるのですが、新しい事業を作る際には、僕なりの必勝法というものがあります。
まずここから3年から5年後に来る市場はどこかというのを見定めて、次に市場が立ち上がってきたらそこで成功する会社はこういう会社だという仮説を立てて、最後にファンドを設立して様々な会社に投資をしながら、投資先間で情報共有を徹底して、仮説検証を高速に回していくという戦略です。
gumiが上場したのが2014年なのですが、そのとき、次の新しい事業の軸を作っていこうと考え準備したのがモバイル動画でした。
当時、今から3年から5年後にモバイル動画が来ると考え、そのときに勝つ会社というのは、スマホファースト、つまりスマホ「ならでは」の動画コンテンツ、体験、UI/UXを一から作ったところと仮定して、gumi venturesという20億円規模のファンドを通じて投資をしました。
今回のブロックチェーンにも繋がるのですが、僕がやっぱり信じているのは、新しいテクノロジーが出て来ると、そのテクノロジーじゃなければできないコンテンツ、体験、UI/UXというのを一から構築したところが成功するのだろうと考えています。
スマホゲームの時も、多くの企業は最初、家庭用ゲームやガラケーのゲームをスマホに移植しようとしましたが、やはりそういったものは成功せず、結局ヒットしたのはスマホの機能を最大限に活用したパズドラやモンストのような、スマホじゃなきゃできない、スマホならではのゲームで、そういったものが流行っていきました。
僕はブロックチェーンでも全く同じだと考えていて、重要になってくるのはブロックチェーンファーストで、ブロックチェーンならではのコンテンツ、体験、UI/UXを一から発明したところが成功していくと思っています。でも結局、今ほとんどのプロジェクトを見渡すと、ブロックチェーンじゃなくてもできるプロジェクトが多く見受けられます。
ブロックチェーンじゃなければできないこと
國光氏:
僕がブロックチェーンじゃなければできないことで見ているものが大きく分けて二つあり、一つ目は「トラストレスで自律的でDecentralized(非中央集権)」なネットワークです。
ビットコインの面白い部分を挙げるとすると、今までは信用保証をどこかの機関がやっていました。
例えば日本円であれば、政府や日銀で、楽天ポイントであれば楽天、AmazonポイントであればAmazonです。
一方でビットコインは、誰も信用保証をやっていません。これがトラストレスな点です。
では誰が信用保証をしているかというと、マイナーになるわけですが、マイナーは誰かに頼まれたわけではなくて、自分の利益の為に勝手にやっています。これが自律的な点です。
さらに、マイナーはどこか一社でやっているわけではなく、皆それぞれ分散してやっています。これがDecentralizedです。
もう一つブロックチェーンじゃなければできないこと、面白い特徴だなと考えているのが、「デジタルデータがコピーできないからユニーク、つまり唯一性を持ち、かつトレーダブルなものになったことから資産性を持った」という点です。
コンテンツビジネスは、インターネット以前はデータを売っていて、音楽であればCD、映像であればDVD、ゲームであればパッケージですが、インターネット時代になってデータが複製可能になってしまったため、価値が無くなってしまいました。
だからコンテンツそのもの、歌や映像、ゲームが売れなくなってしまいました。
そのため、コンテンツを売るビジネスからサービスを売るビジネスに変わり、僕らも基本無料でコンテンツを展開して、そこから様々なサービスを提供することでお客様から対価を頂いています。
映像業界も、コンテンツを売るわけではなく、自分が観たいものを見つけやすいというサービスを売るようになって、コンテンツ販売業からサービス業になりました。
データが複製可能なインターネット時代で、データそのものを売るのが難しくなってきている中、ビットコインを見てて面白いなと思うのは、ただのデジタルデータにも関わらず価値がある点です。
ブロックチェーンの特徴として、改ざんができないことを挙げる人が多いですが、それよりもはるかに重要だと感じているのは、コピーできないことです。
ビットコインも音楽ファイルみたいにコピーが可能になったら、価値がなくなります。
コピーできない、これがユニークなデータだということをブロックチェーンが保証することで、ただのデジタルデータが資産性を持ったということが、非常に興味深い点なのです。
ゲームにブロックチェーンを用いるとどうなるのか?
國光氏:
ゲームって例えば様々なキャラクターが出てきますが、現状は資産性が無いですよね。
もしゲーム中のキャラクターが資産性を持ったらどうなるでしょうか。
昔、セカンドライフの土地を買った人がいましたが、もしあのセカンドライフの中の土地がブロックチェーン上で管理されて資産性を持ったらどうなるでしょうか。
他にもMMOのRPGで、そこに登場する剣や、鎧などが、仮にブロックチェーン上で管理されてユニークで資産性を持ったらどうなるでしょうか。
そう考えると、今までのゲームとは大きく変わっていくのではないか、と考えています。
例えば、MMOのゲームにブロックチェーンを組み込み、海賊王を目指す大海賊ゲームみたいなものがあると仮定します。
MMOでトッププレイヤーが引退する時、その引退する次の日くらいに、そのトップレイヤーが、持ち物や宝をその世界のどこかに置いてきた、見つけたやつが海賊王だ、といった感じで発表したとすると、みんな探しにいくわけじゃないですか。
それで、どこかのゲーム内のエリアで、そのトッププレイヤーの剣を発見した人がいて、ブロックチェーン上でそれが昔トッププレイヤーの持っていた剣だと参照できると、その剣はプライスレスな価値を持ちます。
そういうMMOの世界で自分の持っている持ち物が誰かに渡って継承されていくような形になれば、今までにないゲームになるのだろうなと考えております。
他に例を挙げれば、サバイバル系のシューティングゲームが流行していますが、こういうゲームはゲーム上でキャラクターが殺されても大したペナルティはなかったのです。
しかし、もし全ての武器がブロックチェーン上にあったと仮定すると、それらが資産性を持つことになり、この銃は10万円、この鎧は20万円で、全部の装備を合計すると50万円、といったようなことになります。
そして、キャラクターが殺されると武器が奪われてしまう、となると、キャラクターが死ぬことって凄く怖くないですか?(笑)
だからもしゲームにブロックチェーンの技術を取り入れれば、ゲームの中に新しい経済圏を作れるようになると思います。
さらに面白いのが、リアルの人生の中のことがほとんどゲームで再現できると思うのです。
友情や愛情もその範疇で、ゲームの中で結婚する人や親友を作る人がいますが、ここからVRがさらに進化してくると、視覚とか聴覚とか触覚などの五感が、現実と変わらなくなる世界がここから数年で到来してくるのではないかなと考えております。
唯一ゲームでできなかったことがあって、それはお金を稼ぐことでした。
しかし、もしゲームの中にブロックチェーンの技術が入ってきて、ゲーム内アイテムに資産性が出てくると、リアルで働くことが得意な人は、リアルで稼げばいい一方で、ゲームの中でモンスターを狩るのが得意な人はモンスターを狩りまくってお金稼ぎができるようになります。
今までのリアルな世界だけじゃない、ゲームの中に新しい経済圏を作っていけること、そしてデジタルデータがブロックチェーン上にあり、ユニークなものになり、資産性を持つようになることは大きな意味を持ちます。
國光社長が仮想通貨、ブロックチェーンを知るようになったきっかけ
國光氏:
仮想通貨領域のところは、どちらかといえば元々僕は否定的でした。
ブロックチェーンじゃなくてもできることをやるような話が多かったからです。
しかしその後、仮想通貨事業に取り組もうと思った一つのきっかけとなったのが、起業家仲間から「起業家が食わず嫌いしてどうするんだ」と言われたこと。
確かにそうだと思って、調べ尽くした上で全力で批判しようと思っていたのですが、いざ調べてみると、「あれ?これは凄いんじゃないか?」と気づき、そこから一気にのめり込んでいきました。(笑)
起業家仲間とそういう話をしていたのが去年の6月で、そこから急いでファンドやプロジェクトの準備を進めていったという感じです。
【後編】(近日公開予定)へ続く
國光社長略歴
経歴
2004年、カリフォルニアのサンタモニカカレッジを卒業後、株式会社アットムービーへ入社し、同年取締役に就任。映画やドラマのプロデュースを手掛ける一方で、様々なインターネット関係の新規事業を立ち上げる。
2007年、株式会社gumiを創業し、代表取締役に就任。
2012年、投資事業開始のため株式会社gumi venturesを設立し、取締役に就任。
2015年、VR/AR関連のスタートアップを支援する100%子会社Tokyo XR Startups 株式会社を設立し、代表取締役に就任。
2016年、主に北米のVR/AR企業への投資を目的としたVR FUND,L.P.のジェネラルパートナーとして運営に参画、また韓国にてSeoul XR Startups Co., Ltd.を設立し取締役に就任。
2017年、北欧地域のVR/AR関連スタートアップを支援するNordic XR Startups Oy.を設立し、代表取締役に就任。
2018年、株式会社gumi venturesを通じてgumi Cryptos匿名組合を組成し、仮想通貨・ブロックチェーン事業に参入。