2026年1月26日から2月28日にかけて、羽田空港第3ターミナル内の2店舗でUSDCによる実店舗決済のサービス実証が実現した。
利用者がMetaMaskのウォレットでQRコードを表示し、店舗側が読み取ると、数秒で決済が完了し、加盟店は売上を日本円で受け取れる。
この決済フローの裏側で決済ゲートウェイ(加盟店への円建て入金までを一括処理する基盤)を構築したのが、マルチ決済ソリューション企業のネットスターズ。決済用QRコード生成アプリケーションを共同開発し、WEB3側の実装を担ったのがWeb3決済インフラ機能を提供するWEA JAPANだ。
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実証を支えたのは、単なる技術力だけではない。国内キャッシュレス決済の「現場」を知り抜くWEA JAPANの番所嘉基代表取締役に、既存決済インフラの構造的限界をどう超えるのか、そしてなぜ既存の決済プレイヤーこそがWeb3社会実装の担い手になれるのか。その設計思想を聞いた。
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Web3へ軸足を移した原点
NTTではインフラ、2社の決済代行に従事した経験から、業界の内側から構造を見てきました。
キャッシュレスの進展とともに、特にリテール領域では構造的な厳しさが増しています。小売業は利益率が非常に低いビジネスです。その利益率と比較して高い手数料を課され、さらに売上/入金のタイミングと仕入れ/支払いがずれるキャッシュフローの問題も抱えている。
本来は利便性を高めるはずの仕組みが、コストと資金効率の両面で加盟店の重荷になっている実態があります。この歪みは部分的な改善では解消できないと感じていました。
そうした中でステーブルコインが現れ、各国で規制整備も進み始めた。ステーブルコインの社会実装という意味では、日本はまだ手つかずの状態です。私達はその状況を好機と捉え、国内外のイノベーションを最短で取り込み実装することを狙ってこの事業に参画しました。既存WEB2の構造と、将来のWEB3の姿をつなぐ仕組み、いわゆるWeb2.5が重要で、そのためにはネットスターズのような既存金融を深く理解したパートナーの存在が最も大切です。
日本のQRコード決済黎明期、PayPayもまだない時期に、私は日本のリテールにWeChat Payを紹介しましたが、当初はQRコード決済のメリットや可能性がほとんどのリテールには伝わらないところからのスタートでした。
その後PayPayが大規模なキャンペーンで普及を牽引しましたが、それでも当時は「キャンペーンが終わったら終わる」とも言われていました。それがいま、予想を裏切り、あらゆる場所で使えるインフラになっています。この普及は直線的ではなく、アーリーアダプター期が続いた後に競合が一社入れ始めると一気に普及するという動き方でした。
そういう意味ではステーブルコインは今、ちょうどPayPayが登場する前夜くらいの雰囲気だと感じています。一度その本質的なインパクトが理解され、効果が検証されれば、QRコード決済の立ち上がりと似た指数的な普及曲線を描く可能性があり得ます。
加盟店目線での優位性は3つです。決済手数料の低減、キャッシュフローの改善、そして資金の活用とファイナンスの可能性。将来的にはオンチェーンでの資金活用や決済データを活かした金融サービスへの発展余地があります。そしてこれらの改善効果の一部をユーザーへのインセンティブとして還元することで、集客や利用促進につながるエコシステム構築に繋がります。
ステーブルコインやDeFiそのものをリテールや一般消費者に理解して頂く必要はなく、新たな決済手段が増えたというイメージで良いと考えていますが、その背景にある本質的なイノベーションの効用を理解してもらう必要があります。
店舗での実証実験が証明したこと
証明したかった点は技術検証とユーザビリティの2点です。
技術的なハードルは比較的少なく、短期間で構築でき、大きな技術的支障なく進めることができました。一方ユーザビリティに関しては利用者が違和感なく使えるか、加盟店が既存オペレーションのまま受け入れられるか、決済から入金までが実務として回るかを検証しました。将来的にWeb3を意識せずに利用できる状態をゴールとしています。
最も難しかった点もユーザビリティで、加盟店体験はネットスターズ、裏側のWeb3処理はWEA JAPANという役割分担で、既存と変わらないUXを維持しながら実装を可能にしました。
最大の成果は、実店舗オペレーションとして成立することを確認できた点です。UXや運用面の課題も同時に明確になり、次のフェーズへの判断材料が揃いました。
収益モデルは多層的です。決済手数料に加え、即時入金と資金管理を組み合わせて加盟店の決済コスト削減やキャッシュコンバージョンサイクル(CCC:仕入れから売上回収までにかかる日数)改善に対価をいただく構造です。
加盟店の収益改善がユーザーへのインセンティブ余力を生み、利用促進が新たな収益機会につながる。決済単体ではなく、エコシステム全体で価値を生むモデルです。
ファーストケースは、すでにステーブルコインを保有しているインバウンドユーザーへの訴求です。現状、USDTやUSDCの保有者はアジアを中心とした海外ユーザーが多く、今回の実証実験での枠組みでもMetaMaskを使い慣れた旅行者への訴求がまず現実的なシナリオです。
さらに一部の高額購買シーンでは、既存決済手段では取りこぼしが生じており、例えば一部の百貨店では、海外富裕層が高額商品を購入する際にクレジットカードの上限に直面し、購買を断念しているケースが実際に起きています。ステーブルコインで利用上限を設定の考えを変えることで、そうした場面での需要取込の可能性があります。そしてインバウンド富裕層の取り込みは、その先にWeChat PayやAli Payの普及の足跡をたどると考えています。
規制環境と円建てステーブルコイン
ステーブルコインの制度整備が進んだことは事業環境上の追い風です。WEA JAPANはグローバル展開を前提としているため、最も厳しい環境で実績を積むこと自体がグローバルでの信頼性に繋がることから、規制は制約ではなく競争優位の基盤だと置き換えて考えるようにしています。
日本は2022年の改正資金決済法と2023年6月の施行により、ステーブルコインが電子決済手段として制度上明確に位置付けられました。そしてこの規制をクリアした実績そのものが、グローバル展開における信頼性の証明になります。
普及の壁とロードマップ
技術は実用水準にあり、規制も段階的に整いつつあるとすると、最終的な壁は加盟店の意思決定のタイミングになります。導入判断に足る材料がまだ不足しているので、今回のような実証を通じてメリットを可視化し、「導入しないことによる競争優位を逸するリスク」も含めしっかり説明していきたい。
直近1〜2年は日本市場での実装と標準化を最優先に、ユースケースと収益モデルを確立するフェーズです。オンチェーンでの資金活用やトレジャリー機能を含む周辺プロダクトを構築します。
並行してグローバル展開については、まずはアジアを中心にPSP連携によりリアル店舗×Web3決済を各国に横展開することでネットワーク効果を高めます。
L1/L2チェーン、ステーブルコイン発行体、金融機関、そしてリテール企業と連携し、資金調達はシナジーを創出できる戦略パートナーを中心に進めていく方針です。
決済インフラの将来展望としてAIエージェントが使う決済手段は、ステーブルコインになると考えられていますが、ポイントはその「出口」で、AIエージェントが蓄積したお金をリアルワールドで使う際に、オンチェーンのまま決済できる経路が必要になる。
オンチェーンに入ったお金は、為替コストや手数料回避の観点から法定通貨に戻さずにオンチェーンのままでの利用ニーズが強く、ステーブルコインのオフラインでの購買が可能なインフラがあれば、AIエージェント/リアルな人間を問わず、同じプールでお金が循環し続けられると考えてます。WEA JAPANが作るリアル店舗の決済経路は、そのための基盤でもあります。
「オフライン×Web3の独自ポジション」
多くのWeb3プロジェクトは技術を起点にユースケースを探すアプローチですが、その結果としてリテラシーの高いオンラインの世界に閉じており、社会実装というには道のりは遠い状況です。
そこでWEA JAPANは、リアル店舗における実装からバックキャストしてふさわしい技術を選択し導入します。
商流面では「Web3×オフライン」の領域には商業的に先行する事業者が不在です。しかしネットスターズはすでに国内リテールを大きくカバーするPOSネットワークを持っており、カード決済を入れ、QRコードを入れ、「次」を問われる立場にある事業者がステーブルコイン決済を接続できる。この経路の活用に、WEA JAPANとしてサポートしていきたいと考えています。
技術面では、複数のステーブルコインやブロックチェーンへの拡張を見据えたマルチチェーン設計を採用しています。今回の実証ではUSDCとSolana、NetXを用いながら、将来的には特定チェーンに依存しない柔軟な基盤づくりを志向しています。この構造が、加盟店ニーズへの柔軟な対応と将来的な拡張性を担保します。
(将来的にはNetXなどさらに多くのチェーンへ拡張する予定。詳しい情報は以下の記事から確認できる)
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真のイノベーションは技術の話ではなく、実際に使われることだ、というのが私達の考えです。



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