ETHの「ProgPoW」が否決
3月6日に行われたイーサリアム開発者会議では、ASIC耐性を強化したマイニングアルゴリズムへの移行案「ProgPoW」の承認は見送られた。
ETHは今後大型アップグレード=2.0の「フェーズ0」を控える。このアップグレードが実装される前にProgPoWの実装が行われるべきかが争点となる。
ProgPoWに関する論争
ETHではGPUを利用するより、マイニングに特化したチップである「ASIC」を利用したほうがマイニング効率が高い。ProgPoWは、従来のマイニングアルゴリズムを変更しASICの優位性を弱める提案だ。
ETHの現行のマイニングアルゴリズム「Ethash」の下では、ASICによるマイニング効率はGPUの2倍程度になっている。ビットコインなどで採用されているアルゴリズムの下では両者の間に数百倍の効率性の差があることから、Ethashは比較的ASIC耐性を備えていると言える。
しかしながら、ETHアップデート「セレニティ(ETH2.0)」でコンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSに移行する期間では、マイニング報酬をより多く受けるためにASICマシンでネットワークを独占するリスクが高まる。ProgPoWはこの移行期間に備えたアルゴリズムの変更案だ。この変更案の導入により、ASICのマイニング効率性がGPUの1.2倍程度に抑えられるという。
ProgPoWには賛否両論存在する。賛成派は、この変更案がETHの目指す非中央集権的ネットワークの理念に合致していると考えている。ASICマシンはGPUと比較しても高価なため、ASICマシンが優位性を持つと個人によるマイニングへの参入障壁は高くなる。ProgPoWによって、ASICマシンを大量に保有する少数企業によるネットワークの寡占を阻止したい狙いだ。
反対派は、この変更が蛇足であると指摘する。前述の通り、ProgPowはETHのコンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSに移行されるまでの一時的な変更案だ。PoSが実装されてしまえば、マイニング自体が不要になる。したがって、よほどの危険性がない限り不必要にマイニングアルゴリズムを変更する必要はないと主張している。
ProgPoW実装への最終結論は出ず
6日の会議でも意見の対立が見られた。
同会議では、賛成派の意見として「最近のETHマイニングではASICマシンが支配的になっている」ことが挙げられた。
一方、反対派の意見としては、「ネットワーク参加者の完全な同意を必要とするアップグレードを実行するほど重要な変更ではない」という慎重な意見や、「GPUチップを供給する企業の利益になるだけの提案だ」という批判が挙げられた。
会議は時間内に結論が出ずに終了した。当面の間ProgPoWの実装は見送られることになる。