USDTの準備資産の内容が明らかに
米ドルのステーブルコイン、USDTを発行するテザー社が、その裏付けとなる準備資産の内訳を初めて公開した。
2021年3月31日付の準備資産の詳細は以下の通り:
- 75.85%:現金及び現金等貨物、その他の短期預金、コマーシャルペーパー
- 12.55%:担保貸付金
- 9.96%:社債、ファンド、貴金属
- 1.64%:その他(デジタルトークンを含む)
さらに、76%近くを占める「現金及び現金等貨物」の内訳は以下のような構成となっている。
- 65.39%:コマーシャルペーパー
- 24.12%:信託預金
- 3.87%:現金
- 3.6%:リバースレポ・ノート
- 2.94%:短期国債
保有資産の詳細
この内訳を見ると、準備資金で実際の現金保有が占める割合が非常に低い。しかし、テザー社のStuart Hoegner氏は、「実際の現金ではない資産項目を、流動性の欠如として混同するべきではなく、現金だけに注目することは誤解を招く」と述べた。
準備資産の約半分(49.59%)を占めるコマーシャルペーパーついて、同氏は「標準的な商習慣に従い」契約先企業の詳細を明かすことは避けた。社債、ファンド、貴金属についての詳細については、明らかにしなかったが、12.55%を占める担保貸付金に関しては、テザー社が発行していると述べた。
一方、Hoegner氏は、その他の準備資産として暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を保有していることを明らかにした。同氏は、ビットコインが、「企業のバランシシートの重要な構成要素となっており、リスク分散の役割を果たす」と語った。
テザー社は今回の準備資産の内訳公開に関して、「透明性に関する継続的努力の一環」だと述べている。
なお、USDT以外の米ドル建ステーブルコインの発行者であるサークル社やGeminiは、準備資産の構成は発表していない。ただし、Geminiの準備金については、連邦預金保険公社の保険でカバーされる米ステートストリート銀行の口座、もしくはゴールドマンサックス提供のマネー・マーケットファンドのいずれかに保管されていると、同社の会計士が認証している。両者とも流動性が高く信用度の高い資産だと認識されているようだ。
司法当局との和解
テザー社とその関連会社である仮想通貨取引所Bifinexは、今年2月 、8.5億ドル(930億円)の不正融資疑惑を巡る訴訟で米ニューヨーク司法当局(NYAG)と和解に至った。両社は不正行為は認めなかったが、1,850万ドル(20億円相当)の和解金を支払うことで、2年に及ぶ係争に終止符をうった形となった。同時にニューヨーク州におけるサービス提供停止という条件も受け入れている。
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また、和解条件の一環には、準備資産の内訳の定期的な公開も含まれており、テザー社は今後2年間にわたり、四半期ごとに内訳を公開するとしている。
米取引所大手コインベースで取り扱い
司法当局との和解から、2ヶ月後の先月、米大手仮想通貨取引所コインベースが、USDT(イーサリアム基盤)の取り扱い開始を発表した。ニューヨーク州の居住者は対象外となる。
コインベースでは、サークル社と共同開発した米ドルのステーブルコインUSDCの取引は行われていたが、USDTとの取引ペアを提供し、流動性の強化を行う。USDTのその他の取引ペアは、BTC/USDT、ETH/USDT、USDT/EUR、USDT/GBP、USDT/USDとなっている。
USDTの裏付け保証問題が一段落し、信頼性が回復に向かっている証左だとも取れる。
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現在、USDTの時価総額は約6.4兆円。4月30日には、調整後のオンチェーン取引量が、年間ベースで、1兆ドル(約109.6兆円)の大台を突破した。オンチェーン取引量は、ブロックチェーンネットワーク上のあらゆる価値移転(取引及び送金)を表す。
ちなみに一般的な取引所(CeFi)での取引量はオフチェーンであるため、オンチェーンデータには含まれない。現在、24時間あたりのUSDTのオフチェーン取引量は約28.3兆円となっている。