NFT活用による映画業界の未来|SSFF & ASIA 2022イベントレポート

The Rhetoric Starについて

米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(SSFF & ASIA)は7月26日、「NFTと映画」をテーマにしたオンラインセミナーを開催した。

同映画祭は、6月20日に明治神宮会館で行われたSSFF& ASIA 2022アワードセレモニーを開催し、その終幕で暗号資産を題材とした実写映画「The Rhetoric Star」製作チームの紹介を行った。

本セミナーは、アワードセレモニーのクロージングイベント。「The Rhetoric Star」製作チームを再び招き、NFT技術を用いた新しい映画のインフラサービスについてディスカッションした。

セミナーには、映画祭代表 別所哲也氏、「The Rhetoric Star」製作チームより、国際映画製作チームのNOMA(ノマ)所属でEDLEAD代表の映画監督 太一氏、株式会社CoinPostの各務貴仁 代表取締役が登壇した。

The Rhetoric Starについて、監督の太一氏は、「本作は、暗号資産から始まる物語であり、業界のキラキラしたイメージや如何わしいイメージ等を含めた真実の姿を社会派サスペンスとして描いた実写映画」だと説明した。

CoinPostの各務代表は、「暗号資産をテーマとした映画を作るだけでなく、暗号資産を活用して新しい映画製作プロセスの確立にチャレンジしていきたい」とし、技術的なサポートや映画のマーケティング支援を中心に携わっていくと語った。

製作チームは、カンヌ国際映画祭にて同作のローンチを公表しており、すでに世界的に有名なサウンドデザイナーのセフィ・カーメル氏が加入している。

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日本の映画製作の現状

日本の映画製作の現状について、各務は自身がウェブメディアを運営していることを踏まえ、「ウェブメディアはメディアの中でも消費が一番早く、『軽い』ものである。一方、映画は製作プロセスや費用を考えると、消費が『重い』媒体であるというイメージがある」と説明。ヘビーなコンテンツほどビジネス側に寄ってしまい、利益を出す必要にとらわれると指摘した。

「暗号資産を活用して、資金調達など映画の『重い』製作プロセスをファンと協力してさらに『軽く』していくことで、作品内により表現の自由を生み出せるはずだ」と語った。

太一監督は、「映画誕生から127年目にしては、老けすぎている。業界のサイズだけが大きくなった。視聴方法には進化がみられるが、映画の製作過程に関しては、映画誕生からほとんど変化していない」と述べた。

また、別所氏も映画業界の先人に敬意を払った上で、20世紀の日本映画ビジネス独自の製作委員会方式の課題について触れ、「21世紀に適した映画の配給モデルを考えていく必要がある。Web3.0によって、これまでになかった映画業界のリスクヘッジ手段が誕生する」と語った。

NFTとは

出典:SSFF & ASIA

続いて、各務はNFTの特徴として以下の4点を挙げた。

  • 固有性:他のデジタルデータと判別可能になること
  • 取引可能性:所有者が明確になり取引が可能になること
  • 相互運用性:さまざまなサービスを跨ぐデジタルコンテンツ利用が可能になること
  • プログラマビリティ:スマートコントラクト活用で、自動ルール設定が可能になること

さらに「相互運用性」に関して、「映画コミュニティにNFT化した会員権を配布することで、映画コミュニティ会員の情報に誰もがアクセスできる」とし、「そうした情報は、映画製作に参加したい人々にとっては非常に価値のあるものであり、次につながるサービスなど映画コミュニティの枠を超えたサービス提供を実現することができる」と映画業界での活用例を挙げて説明した。

また「プログラマビリティ」に関して、「『何人以上が賛同したら可決する』といったルール設定が可能になるため、コミュニティ内にルールを設定することやグローバルで仲間を募ることができるようになる」とし、NFTの革新性について強調した。

太一監督は、「これまで映画のプロセスを言語化する慣習がなかった。日本独自の明確に言葉で語らない文化で、皆が察し合いながら作ってきた映画が日本市場である」とし、「各務さんのような知識と実行力を有する新世代が、NFTを活用しつつ、全てを検証しながら徹底的に最適化していくことで一つの答えに達することができる」と語った。

別所氏からの「クラウドファンディングとNFTの違いは何か?」という質問に対して、各務は「クラウドファンディングはモノの購入に近く、返礼品をもとに支援を行うことから支援者との接点は『点』となる。一方、NFTは半匿名で支援者のコミュニティに属する『線』の接点が作りやすい。映画の共同制作やコミュニティへの継続的な還元を行うことで、映画の運営方法にも変化を促すことができる」と回答した。

太一監督は「映画が一つの著作物として扱われることが多かったが、NFTの登場で映画製作に携わった多くのアーティストの一人一人による一つ一つの作業までをエコノミー化することができる。映画は、NFT化された巨大な価値の集合体という世界観になる」とクリエイター視点でNFTの可能性を述べた。

また具体的なNFTのユースケースについて、各務はアニメーション製作を例に、「アニメの1期の視聴率があまり上がらず、製作会社から続編の予算が出ない場合であっても、NFTを活用することでファン主導でプロジェクトを立ち上げることが可能となる」とコメント。

「さらにグローバルでもファンを集めることができ、かつそのリストを名簿として個人情報全てを会社が保有せずとも接点を作っていくことが映画製作の大きなプロセスの変化として実現できる」と説明した。

Web3.0時代の映画づくり

映画業界のNFT活用事例について、各務は「資金調達の領域が一番大きい。株式のようにNFT保有者に対して将来儲けた分の利益を還元することは証券に該当するため難しい。一方、初期から参画してくれたファンをNFTは可視化できるため、作品がヒットした際に初期のファンに対して還元できることがとても大きい」と説明。

太一監督は、「クリエイターは皆NFTに関心を持っている。しかし、皆何ができるのか模索している。NFTは何でもできるからこそ、まだ何もできてない」とし、映画でのNFTの活用について「映画は人間がつくる作品である。NFTという技術を駆使することで、アーティスト一人一人を可視化することができる。映画の製作プロセスに革新を起こすことができる」と語った。

続けて、各務も「グローバルなリーチを取ることができる点がNFTの圧倒的な革新性である。日本発の映画製作に様々な国のクリエイターやファンが参加することができる。また、映画製作の段階からファンの人数を可視化でき、それをもとに映画ビジネスを展開することも可能」だと述べた。

別所氏からの「DeFiやDAOが普及しつつあるWeb3.0時代の映画製作のあり方とは?」と言う質問に対して、各務は「NFTや暗号資産の使い方は、必ずしも分散的である必要はない。もっとビジネスとして扱うユーザーや企業が出てきてもいい。その中でより洗練されていく」とし、「同様に、映画製作も全て分散化する必要はない。映画の製作過程はこれまでのようにプロフェッショナルが担い、クリエイターがより多くの挑戦ができる環境を分散的かつグローバルなネットワークをNFTを活用して生み出したい」と語った。

太一監督は、「分散型組織であっても、指揮者がいなければ答えには辿り着けない。監督やププロデューサーが指揮者となって映画製作をリードしていくことは変わらない」と説明。また、同作のプロデューサーである中辻氏の言葉を引用して「ユーザーが映画を『観る』だけでなく、映画製作に『参加』することが、Web3.0時代の映画づくりである」とし、音楽業界のように個人が消費するだけでなく、発信する対象になると語った。

コミュニティドリブンの映画とその実現可能性

コミュニティ主導型の映画について、各務は、「ファンのつながりをどのように意識させるのかが大きなポイントとなる。ユーザーが作品を製作する側に参加できる機会を用意することは、映画製作の新しい形のきっかけになる」と話した。

またそうした形の映画の実現可能性については、「The Rhetoric Starがモデルケースとなり、新しい製作プロセスを実証していき、後々は他のクリエイターや映画関係者が使いやすいものを作っていきたい」と語った。

別所氏も「ここ数年は、メイキング映像を配信した作品の方が売り上げが良い。製作プロセスを公開した方が、ユーザーが仲間となり、味方となり、最終的な成果物である作品を観に来る。こうした参加型の映画をよりグローバルかつシームレスにする道具がNFTであり、ブロックチェーンだと思う」と述べた。

出典:SSFF & ASIA

コミュニティドリブンの映画の実現可能性について質問に対して、太一監督は「ハリウッド、中国に次いで日本の映画コンテンツは世界第3位。ハリウッドは老朽化し始め、サイズが大きいから小回りが効かない。一方フランス、イタリア、ドイツなどのヨーロッパはカルチャーとしての映画は強いが、マネタイズの視点で見ると日本ほど大きなことができていない。まさに今、映画業界の中心は日本を含めたアジアに移りつつある。やるべきことの一つとしてNFTを位置付けている」と熱く語った。

The Rhetoric Starが目指すもの

The Rhetoric Starが作りたい世界として、各務は「映像作品を作っていく領域における資金調達からコミュニティへのアプローチ、その後のマーケティングなどビジネスとしての収益の多角化を含めて、より新しい映像製作の形を提供していきたい。映像作品の作り方を新しい仕組みとして示し、皆が使えるプラットフォームとして提供していくことに注力する」と語った。

NFTのリスク

イベント終盤、別所氏からNFTのデメリットや注意点について質問がされると、各務は「リテラシーが必要になってくる点が大きなデメリットである。ブロックチェーン技術のUI・UXなどの様々な点がハードルとなり、誰もがNFTに気軽に参加できる環境ではない。NFTがわからない一般層にも価値を感じてもらえるサービスを作っていくことが重要である」とし、「NFTには技術・規制面で解決できていない問題が多いので、NFTのデメリットを考慮した上で事業や参入を進めていくべき」と説明した。

太一監督は「業界の標準が決まってから参入しようとしてもできない。観客の意識が変わり続ける中で、気になった時点で参加し、近くにいて、肌で感じながら自分を変えていくしかない。一番のデメリットは参加しないこと」とクリエイターに対して呼びかけた。

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