- 欧州連合で新しい仮想通貨規制の動き
- 欧州議会で、ICOに対する新たな規制の基準設定を模索する動きが確認された。影響力の大きい国々のリーダーに対し、ヨーロッパ共通の仮想通貨に対するルールを採用するよう呼びかけるとされている。
欧州連合で新しい仮想通貨規制の動き
9月7日と8日の両日、欧州連合加盟国28カ国の財務大臣が一堂に介し、仮想通貨が社会にもたらす影響を考慮し、全欧州規模での規制の厳格化が必要かどうかを協議する予定であることが、わかりました。
ブルームバーグの報道によると、オーストリアのウィーンで開催されるこの会合では、仮想通貨の透明性、資金洗浄や脱税及びテロ活動への資金供与等の不正行為に用いられる可能性について議論されるものとされています。
また、ロイターの報道では、ブリュッセルに拠点を置くシンクタンクBruegelが作成した、この会合で提起される予定のレポートでは、特に影響力の大きい国々のリーダーに対し、ヨーロッパ共通の仮想通貨に対するルールを採用するよう呼びかけるようです。
しかし現実的には、ヨーロッパ各国で、仮想通貨の取り扱いに対する態度は温度差があり、様々な思惑が絡む中、規制に対する足並みを揃えることは困難で、この会合が具体的な規制設定につながる可能性は低いようです。
欧州議会は規制基準を策定
一方で、欧州議会の経済金融問題委員会(ECON)では、ICOに対する新たな規制の基準設定を模索する動きがあります。
去る9月4日、欧州議会内の超党派議員連盟であるイノベーショングループは、会合を開き、より広範囲なクラウドファンディングの枠組みの中で、ICOのルール作りを行うという提案について議論を交わしました。
この提案は、イギリス選出の欧州議会議員であるAshley Fox氏により作成されたもので、ヨーロッパのクラウドファンディング・プラットフォーム事業者および企業のための規制案のための草案という形をとっています。
ヨーロッパにおけるクラウドファンディング規制は、昨年より討議されており、3月に欧州委員会が「クラウド及びP2P金融」の枠組み策定を義務付ける正式な提案を行なっています。
Fox氏によると、この枠組みは、トークンセール(ICO)を規制する機会を与えてくれるものだとして、次のように述べています。
この規制は、規制の要件に準拠する姿勢を証明したいと望むICOに、そのチャンスを与えてくれる。
ICO市場規制に対する解決策を提示するものではないものの、テクノロジースタートアップ企業にとって、優れた資金調達方法であるICOに対し、基準と保護を課すための、真に望まれているステップとなるだろう。
ICOは「新しく革新的な資金調達方法を提供する」一方で、詐欺の温床となったり、サイバーセキュリティのリスクを高める可能性もあるため、この草案では、800万ユーロ(約10億円)の資金調達額上限を儲けること、また、身元確認や資金洗浄対策を組み入れることを課すことを要件としています。
「立法者として、私たちの目的は、ICOをより実現しやすく、かつ成功するものにしたいということであり、そのための努力をしているということを保証する。」と、Fox氏は、述べています。
また、フランスのスタートアップコミュニティの支援団体である、France Digitaleの代表責任者、Nicolas Brien氏は、この会合の中で、次のように発言しています。
確実性とともに、正当性をもたらすという意味において、私はヨーロッパ全域を対象とした提案を歓迎している。
なぜならこの提案は、人々に自分たちはちゃんと理解しているという確信を与えてくれるからだ。それが「ユーティリティトークンなのか、譲渡可能な証券なのか、また、規制当局がどのような判断するのか」については、はっきりさせなくてはならない。
しかしICOは、異なる部分はあるにせよ、クラウドファンディングの一つの形態であるため、この提案は可能だと思っている。
ネガティブな主張も
このような前向きな姿勢が示される一方で、イギリスの金融行動監督機構(FCA)のLaura Royle氏は、次のように述べています。
仲介業者のコストを払うことなく、企業が幅広い投資家から資金を調達できるという点において、(ICOが) 大きな恩恵をもたらす可能性を持っていることは確かだが、透明性の欠如と、高いボラティリティのため、詐欺などが発生するリスクがある。
Royle氏は、正確な数値を確立することは難しいものの、FCAはICOの25%から81%が詐欺に終わる可能性があると推定しており、より厳格な監視の必要性を強調しています。
今回の会合では、この先の明らかな進路についての合意形成には至らなかったものの、9月11日までに、欧州議会議員が、この提案に対する修正案を提出することで、さらなる議論を重ねる機会を設けることができるとしています。
もし最終的に、欧州議会がこの規制を採択することになった場合、欧州レベルでのICO基準が策定されることとなり、欧州28の加盟国で、スタートアップ企業のプロジェクトが資金を調達し、事業を行うことが可能となる道が開けることになります。