「データ法」対象範囲の明確化求める
欧州ブロックチェーン協会などの暗号資産(仮想通貨)業界団体らは15日、EU委員会にあてて書簡を提出。スマートコントラクトが意図しない形で規制対象になるリスクが指摘される「データ法」について修正を提案した。
業界団体らは、使用されるテクノロジーに関係なく、規制などを適切に施行する「技術的中立性」を提唱しており、次のように問題を指摘している。
現在の条文は、パブリック型あるいはパーミッションレス型ブロックチェーンに基づくスマートコントラクトについて、その使用を不適切に制限し、すでに展開されているスマートコントラクトに規制上の不確実性をもたらす可能性がある。
このため、データ法の条文をさらに明確化する必要性がある。
また、条文がこのままであれば、こうしたスマートコントラクトに事業で依存している中小企業にとって、重大な問題を引き起こす可能性があるとも続けた。
書簡には、リップル社やコインベース、クラーケン、カルダノ財団、ステラ開発財団などをはじめ、名だたるブロックチェーン・仮想通貨関連企業も名前を連ねている。
パーミッションレスとは
ブロックチェーンにおいては、管理者の許可(パーミッション)なく、誰でもネットワークにアクセスできるという意味。ブロックチェーンは政府や銀行などの中央機関を介在させずに送金などを可能にしている点でパーミッションレスであると言える。パーミッションレスな仕組みの特徴としては、透明性、データの可用性、データの相互運用性などを挙げることができる。
▶️仮想通貨用語集
背景として、欧州(EU)理事会は3月、データ法に基づく法案に合意。データへの公正なアクセスと利用に関する規則を定めるものだが、範囲が明確に定義されない場合、スマートコントラクトにも影響を与えるのではと懸念の声が上がっている形だ。
データ法は主にモノのインターネット(IoT)のデータを対象とするものだが、条文の範囲が限定されていないため、仮想通貨業界も影響を受けるのではないかと警戒されている。
データ法は、スマートコントラクトの改ざん耐性などに加えて、コントラクトがその活動を適宜、中断したり終了できるような仕組みを求めている。もしこれがパーミッションレス型ブロックチェーンにも適用されれば、「自動化された変更不可能なプログラム」であるというスマートコントラクトの強みが減少する可能性が指摘される形だ。
法案が成立するには、欧州議会と欧州理事会の間で最終的な内容が議論される必要がある。
修正提案
欧州ブロックチェーン協会らは、データ法第30条の文言を改訂して、その適用範囲をプライベート型ブロックチェーンや、企業内などで使われるパーミッション型の電子データ記録で展開されるスマートコントラクトに限定することを提案している。
その他に、「スマートコントラクト」という用語を「デジタルコントラクト」に書き変えるなど、仮想通貨のパブリックチェーンが不適切に規制対象とならないようにする修正案を提示した形だ。
EU担当者は「懸念する必要はない」とコメント
このように懸念や修正提案が挙がる中、EU委員会の広報担当者は、仮想通貨業界が抱くような心配はないと説明している。「データ法の発効により既存のスマートコントラクトが違法になることを懸念する必要はない」として、担当者は以下のように話している。
新しい条項は、データなどを共有する文脈で、契約の実行を自動化するために使用されるソフトウェアを対象とすることを意図している。スマートコントラクト・ソフトウェアのベンダーにとって問題となるようなものではない。
ただ、仮想通貨業界の関係者は、こうした回答に満足しているわけではない。
例えば、NEAR財団の法務顧問であるクリス・ドノバン氏は、「現状の草案の文言は非常に広範なものであり、対象範囲について、ほぼ必然的に不確実性が生じるだろう」と話している。現行の法案をより明確に修正する必要があると意見する形だ。
4月には、ポリゴン(MATIC)ネットワークの開発・普及を推進するPolygon Labsもデータ法について修正を求める公開書簡をEU議会などに提出している。
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