デジタル資産事業を強化
欧州金融大手のドイツ銀行は14日、デジタル資産のカストディ及び発行基盤等を手掛けるスイスのTaurus(トーラス)との提携を発表した。暗号資産(仮想通貨)の保管サービスだけでなく、資産のトークン化事業への進出を見据えた動きだ。
ドイツ銀行のグローバル・セキュリティ・サービス担当ポール・メイリー氏は、デジタル資産市場が数兆ドルの規模に成長すると見込まれ、これが投資家や企業の注目点となるであろうと語った。「カストディアンとして、クライアントのニーズに応えるための適応は必須だ」と述べている。
今年6月、ドイツ銀行はデジタル資産カストディサービスの運営を目指し、ドイツ連邦金融監督局(BaFin)への許可を申請したばかり。メイリー氏は、トーラスが仮想通貨や資産トークン化の分野での専門知識と実績を持つと強調している。
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資産のトークン化とは
資産のトークン化とは、不動産や証券、銀行預金、そして貴金属、美術品などの実物資産(リアルワールドアセット、RWA)を元に、ブロックチェーン上でのトークン発行を行うもの。このトークン化により、資産の管理が効率化されるとされている。
ボストン・コンサルティング・グループの調査によれば、2030年までにRWA市場が約560兆兆円〜2240兆兆円(4兆ドル~16兆ドル)に達する可能性があるとされ、多くの金融機関がこの方向への取り組みを強化している。
2023年には、様々なインフラ機関や企業がこの市場での取り組みを加速させている。大手資産運用会社フランクリン・テンプルトンは今年4月に、イーサリアム上で国債やETFをトークン化した。さらに、JPモルガンチェースやロンドン証券取引所がブロックチェーンを活用した新たな取り組みを計画していることが報じられている。
今週、オーストラリアの大手ANZ銀行は、同社独自のステーブルコインA$DCとトークン化資産(RWA)の取引を実験した。
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トーラスの概要
2018年にスイスで設立されたトーラスは、仮想通貨やトークン化資産、NFTなどのデジタル資産の発行、保管、取引をサポートするインフラを提供している。
トーラスの共同設立者であるラミン・ブラヒミ氏は、ドイツ銀行との提携がトーラスの技術力と製品の幅を証明するものと捉えている。「ドイツ銀行と共に、DLT(分散型台帳技術)ベースのデジタル資産製品とサービスの展開をサポートすることを楽しみにしている」と述べた。
なお、今年2月にトーラスはシリーズB資金調達ラウンドで約86億兆円(6,500万ドル)を調達。クレディ・スイスやピクテット・グループ、アラブ・バンク・スイスとともに、ドイツ銀行もこのラウンドに参加していた。
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