CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨は機関投資家にとって中核的な資産クラスとなれるか |米メロン銀の視点

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨は機関投資家にとって中核的な資産クラスとなれるか
世界35カ国で資産管理と資産運用業務に特化した金融サービスを展開するBNYメロンが、機関投資家の仮想通貨投資を取り巻く状況についての考察を発表した。

仮想通貨投資への期待と懸念

米大手銀「BNYメロン」は、現物受け渡しのビットコイン先物取引が可能な仮想通貨決済プラットフォームとして期待されるBakktの提携先で、資産運用残高は1兆8000億ドル(約200兆円)、管理資産残高は34兆5000億ドル(約3700兆円)と世界最大規模を誇る。

同行の分析『仮想通貨の次なる展開』によると、機関投資家の多くが仮想通貨投資の長期的な可能性に期待し、すでに投資を始めている少数の機関投資家が存在する一方で、規制の不確実性とカストディへの懸念から、大部分の機関投資家は、未だ慎重に構えているという。

仮想通貨投資を行う機関投資家

昨年9月の時点で、調査会社Greenwich Associatesは、機関投資を行う金融機関幹部の73%が、仮想通貨の将来性を肯定的に捉えているというレポートを発表している。また、仮想通貨が機関投資家のポートフォリオの中で中核的な代替資産になる可能性を指摘する調査会社もある。

そのような機関投資家の期待を反映しているのが、次のような先進的な機関投資家の例だろう。

  • ・米エール大学寄付基金:二つの仮想通貨ファンド購入
  • ・米バージニア州フェアファックス郡年金基金:ブロックチェーン⁄デジタル資産投資でベンチャーキャピタルのアンカー投資家となる

しかし、BNYメロン傘下、Mellon Investments Corpの調査アナリストであるScott Canning氏は、仮想通貨投資に参入する機関投資家の数は増えているものの、未だごく初期の段階だとして次のように述べている。

例えば、いくつかの寄付基金は、投資ポートフォリオのごく一部を配分し、小さな確率だが暴騰する可能性にさらしているに過ぎない

既存の金融機関の仮想通貨に対する取り組み

それでも既存の金融業界に仮想通貨を取り込もうと、大手銀行や証券会社による動きも見られる。

  • ・三菱UFJグループ、Credit Suisse、BNYメロンなどの世界大手金融機関14社のコンソーシアムがトークン化された法定通貨の即時決済を可能にする「Utility Settlement Coin」 に投資
  • ・野村ホールディングスが機関投資家向けの仮想資産管理「Komainu」プロジェクトに参入
  • ・JPモルガン、ステーブルコインが「JPMコイン」を発行
  • ・インターコンチネンタル取引所による仮想通貨決済プラットフォームBakktが今年後半にも開始予定

さらに、仮想通貨取引所・大手コインベースのように、カストディサービスなどの既存の金融システムが提供してきたサービスにまで事業を拡大する逆の動きもある。

このように多くの仮想通貨関連プロジェクトへの取り組みが報告されているが、大多数の機関投資家は、まだまだ仮想通貨投資に対して慎重な姿勢を見せていると、BNYメロンのデジタルパートナーシップグローバル部門責任者Lucien Foster氏は述べている。

一部の伝統的なプレーヤーは早い段階で市場に参入しているが、大多数はまだ用心深いと言える。

仮想通貨投資の課題

BNYメロンは、顧客から預かった巨額の資金を運営する機関投資家の最大の懸念として、カストディと規制の問題があると説明している。

大手信託銀行の中で、今日まで仮想通貨のカストディを提供する銀行は存在しない。一方で、金融サービスライセンスおよび信託ライセンスで運営している仮想通貨のカストディ会社はあるが、預金受入銀行のライセンスを取得している仮想通貨会社はないとBNYメロンのグローバルカストディ製品管理責任者であるTom Casteleyn氏は指摘している。さらに規制との問題も絡めて、次のように同氏は付け加えた。

「規制当局の立場が明確になるまで、カストディ銀行がこの市場に参入することは期待できない。しかし、主流の機関投資家は、伝統的なカストディアンを利用できない限り、この市場を敬遠するだろう」

調査会社Delphi DigitalもCasteleyn氏と同様に「多くのファンドは、スタートアップではなく大きな金融機関が提供するカストディサービスを望んでいる」と分析している。

仮想通貨業界でも、ウィンクルボス兄弟が業界自主規制団体Virtual Commodity Associationの立ち上げを支援するなど、規制整備を進めようとする動きもある。また、5月には米国財務省に置かれた金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が、仮想通貨の犯罪的な誤用を防止するため、仮想通貨を含む価値の移転(送金)に関する新たな規制指針を発表している。

現在、機関投資家にビットコインの保管と取引の両サービスを提供しているFidelity Digital Assetsによると、ここ数カ月間で機関投資家の関心が高まりを見せており、機関投資家の22%がすでにデジタル資産への何らかの投資を行っていると同時に、多くの企業が今後5年間でさらなる投資を検討しているという調査結果が報告されている。

しかし、規制当局が仮想通貨について合意に達するまでは、主流の機関投資家からの投資は起こりそうにないとBNYメロンは結論づけている。

デジタル資産が持つ大きな可能性

それでも、デジタル資産が持つ大きな可能性は否定できない。 仮想通貨に代わる投資方法として、提唱されているのがブロックチェーン技術の応用に投資することで、BNYメロングループも、ブロックチェーン技術を採用、作成、または提供している企業に投資する「デジタル資産戦略ファンド」を提供している。

BNYメロン傘下のMellon Investments Corpのディレクター兼シニアリサーチアナリストであるErik A. Swords氏は、企業向けブロックチェーンに特化したこのファンドが、「現在、仮想通貨よりもはるかに多くの価値があると考えている」と述べている。

Swords氏は、サプライチェーン管理、電子医療記録、企業間支払いなど、多くの地域やセクターの企業が昨年内にブロックチェーン技術を採用したと述べ、今後10年で、同ファンドに組み込まれた企業が業界をリードすることを確信していると語った。

CoinPostの関連記事

ビットコイン(BTC)需要がナイジェリアで急増する理由と、アフリカが仮想通貨市場に与える影響
今アフリカ・ナイジェリアでビットコインの需要が急増している。単純な価格変動の大きさだけでないその理由は何なのか。そしてそれが今後のビットコイン全体の市場にどう影響するのか。
FATFの仮想通貨監督ガイダンスをG20が支持「効果的かつ迅速な履行を」
G20は、FATFの掲げる仮想通貨(暗号資産)に関する新たな「監督ガイダンス」を承認した。国際基準として強化される可能性が示唆される一方で、適切な規制が必要であるとの見方も示した。
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
07/27 土曜日
08:10
マスク氏のX(旧ツイッター)、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除か
イーロン・マスク氏がオーナーのX(旧ツイッター)は、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除した。ドージコイン擁護のためか。
07:35
BitwiseのETH現物ETFの横断幕、NYSEに掲揚
仮想通貨運用企業Bitwiseのイーサリアム現物ETFの横断幕が、ニューヨーク証券取引所に掲げられた。同社は、取引終了のベルを鳴らすことも報告している。
07:05
野村傘下のレーザーデジタル、利回り提供のイーサリアムファンド販売予定か
野村ホールディングスの仮想通貨資産子会社であるLaser Digital(レーザーデジタル)は、イーサリアム現物ETFの代替商品の導入を計画しているようだ。
06:40
米SEC、グレースケールのミニ版ビットコインETFを承認
仮想通貨投資企業グレースケールが提供するGBTCは手数料(1.5%)が最も高く資金流出は続いていたが、新商品を導入し0.15%という業界最安の手数料設定で競争力を高める狙いだ。
06:20
ビットコイン価格が21年後に最大で75億円に到達か、マイケル・セイラー氏の強気予想
ビットコインを最も保有する米上場企業マイクロストラテジーのマイケル・セイラー氏はカンファレンス「ビットコイン2024」で、BTCの今後の強気予想のプレゼンテーションを行った。
07/26 金曜日
17:10
「米大統領選で価格変動 トランプやハリス由来のミームコインの買い方
トランプトークンの概要 ドナルド・トランプ前米大統領とその「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)というスローガンからインスピレーションを得…
17:10
ヤマハ発動機が初のVTuberコラボNFTを発行、Yamaha E-Ride Baseを訪れて進化可能
ヤマハ発動機が初のNFTデジタルステッカーを発行。横浜のYamaha E-Ride Baseで進化するダイナミックNFTを体験し、限定グッズをゲットできる。
15:13
ビットフライヤーがFTX Japan買収完了、カストディ事業展開へ
株式会社bitFlyer HoldingsはFTX Japanの株式100%を取得し、完全子会社化を発表。8月26日までに社名を変更し、クリプトカストディ事業を展開予定。法制度整備後の暗号資産現物ETF関連サービス提供も視野に入れている。
14:43
Neo Xメインネットが正式稼働 EVM互換でネオのエコシステムを拡張
Neoは高性能EVMベースのサイドチェーン「Neo X」のメインネット正式稼働を発表。クロスチェーンブリッジで流動性と互換性が向上し、エコシステムの可能性が広がる。
14:15
カマラ・ハリス氏のミームコインが過去最高値を記録、大統領候補指名の期待受け
PolitiFiと呼ばれる政治パロディのミームコインが、仮想通貨領域で独自のジャンルを形成しており、カマラ・ハリス副大統領のパロディコイン「 Kamala Horris(KAMA)」が急騰し話題となっている。
12:55
アルトコインETFの未来、ブラックロックが語る現実と可能性
ブラックロックのデジタル資産責任者は、イーサリアム現物ETFが承認されていても他のアルトコインETF誕生には困難があると話した。
12:14
仮想通貨相場反発、ビットコイン・カンファレンスのトランプ登壇に関心集まる
昨日までの大幅下落とは打って変わり暗号資産(仮想通貨)相場は反発した。強気シグナルのハッシュリボンが点灯しているほか、今週末にはビットコインカンファレンスに米国のトランプ前大統領が登壇予定であり、投資家の関心が集まる。
11:00
トランプ前大統領の陣営、4〜6月期で仮想通貨で6億円の寄付金調達
トランプ前大統領は、ビットコインなど仮想通貨で6億円以上の選挙資金を調達。「ビットコイン2024」でもさらに資金を集める予定だ。
10:30
BTCが290万ドルに到達するシナリオ、VanEckが公開
仮想通貨ビットコインが2050年までに290万ドルに到達するシナリオをVanEckのアナリストが公開。このシナリオを実現するための条件を説明している。
10:00
ソラナ初事例、パラオ共和国がデジタルID発行
主権国家が仮想通貨・ブロックチェーンであるソラナ上で、法的アイデンティティを発行する初めての事例となった。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア