- 仮想通貨特有の損益計算方法
- 今も成長を続ける新たなテクノロジーである仮想通貨。その成長が故に、仮想通貨にはハードフォークやトークンスワップなど他にはない特有の事象が起きています。日本において、これら特有の事象に対して、どのように確定申告へ向けた損益計算を行うべきなのか。税理士のご意見も合わせて、解説していきます。
- 株式会社Cryptact(クリプタクト)とは
- 2018年1月、Cryptact創業メンバー3人は元ゴールドマン・サックスで前職ではヘッジファンドと呼ばれる絶対収益型のファンドで運用を担当しており、そのシステム開発を行うエンジニアと共に設立しました。
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仮想通貨特有の事象に関する税務上の取扱い
2018年も残すところ数週間となり、投資家の方は確定申告へ向け損益計算を考え始めている方も多いのではないでしょうか。
仮想通貨に対する確定申告に向けた損益計算方法は、国税庁からガイダンスも出ており、これにより仮想通貨特有の事象に関する計算方法も公表されています。
仮想通貨では、保有していることで他トークンが貰えたり、分裂したりと他にはない事象も多く起きているため、それぞれのケースにおいて、どのように損益計算を行うべきなのかを理解しておく必要があります。
今回は、最近も話題となったハードフォークと昨今増えているメインネット移行に伴うトークンスワップの損益計算に関して解説していきます。
ハードフォークの場合
去年のビットコインとビットコインキャッシュの分裂で話題となり、先月にもBCHがABCとSVに分裂騒動が起きたことで、再度注目されました。
ハードフォークには、いくつか種類がありますが、BCHの時を例で言うと、ブロックチェーンのアップデートによる永続的な分裂であり、大抵の場合は、分裂した片方のチェーンは支持されず、もう片方を真のチェーンとして続いていきます。
しかし、両方のチェーンに支持が分かれ、それぞれを真のチェーンとして続ける形になると、通貨価値としても分裂がおき、2種類の通貨が市場に存在する形で分裂が起きます。
ハードフォークの損益計算
ハードフォークの場合の損益計算は国税庁からのガイダンスにて公表が行われていますので、これに従って計算を行うといいでしょう。
・仮想通貨の分裂(分岐)により仮想通貨を取得した場合
仮想通貨の分裂(分岐)により新たに誕生した仮想通貨を取得した場合、課税対象となる所得は生じません。
なお、その新たな仮想通貨の取得価額は0円となります。
※国税庁「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」から一部抜粋
ガイダンスにて公表されているように、ハードフォークにて取得した新たな仮想通貨は、この取得に所得は生じません。
ハードフォーク後、取得仮想通貨の売却や使用の際に、所得が生ずることになります。
先月、話題となったBCHのABCとSVのハードフォークも、これに該当するでしょう。
BTCもこれまで、BCHだけではなく、70種類近い新たなコインがハードフォークにより発生しており、BTCをご自身のウォレットで保管しアクションされた方は、これらのコインも付与されてハードフォークとしての計算対象となります。
なお余談ですが、BTCと異なりBCHはDAA(難易度調整)が存在するため、ハードフォーク後に両方のコインが存続しやすいコインになっております。
多くのPoWの仮想通貨は、処理能力を失ったチェーンは難易度が急低下しないまま価格下落と共にマイナー離れが起きますが、BCHはブロックごとにDAAが発動し、過去144ブロックの生成時間の移動平均による難易度調整が行われることで、マイナーの収益性がある程度担保されやすい仕組みとなっております。
メインネット移行に伴うトークンスワップの場合
昨今、イーサリアム上のトークン等(以下「旧仮想通貨」)によってICOを果たしたプロジェクトが、独自ブロックチェーン上の通貨(以下「新仮想通貨」)に切り替えるという事例が増えてきました。
これらメインネットへの移行に伴う、旧チェーン上で動いていたトークンが新ブロックチェーン(メインネット)上のトークンへ移行することをメインネット・トークンスワップと呼ばれています。
メインネット・トークンスワップでは、旧仮想通貨のホルダーが新ブロックチェーンのプロジェクトに対して所定の手続きを経て新仮想通貨を入手します。基本的に同名同数を引き継いで移行されますが、呼称が変更されたり、数量が増えるケースもあり、一概に括ることはできません。
主要な仮想通貨については、メインネット・トークンスワップ時に、海外取引所において、旧仮想通貨から新仮想通貨への移行が自動的に行われるケースもでてきました。
アップデートという観点から見ると、ハードフォークとも似た事象ではありますが、ブロックチェーンの分岐ではなく、独自ブロックチェーンへの移行になるため、別物になります。
トークンスワップの損益計算
損益計算上の本事象の扱いについて、税理士と協議の結果、以下のようなコメントをいただきました。
顧問税理士
イーサリアム上のトークンと、メインネットの仮想通貨は、仮想通貨同士の交換に該当すると考えられるため、実現損益の計算の対象となる。
交換所により自動的な交換が行われた場合は、本人の意思によらない取引ともいえるが、実質所得者課税の原則にもとづき、その交換所のユーザーがが所得認識するべきである。
トークンスワップ自体は同価値で売買が行われるため、損益への計算は複雑なものではないが、ICOや取引所で購入した価格からトークンスワップ時までに含み益が出ていた場合は、上記の解釈に従い確定申告の対象になると考えられます。
またトークンスワップ時に購入価格が変わったことで、その後に通貨売却を行なっていた場合は損益計算時の価格には注意が必要です。
税理士のコメントにもあるように、本人の意思によらない取引と言えるのではないかとも思えますが、現状では国税庁からトークンスワップに関するガイダンスは公表されていません。
トークンスワップのような仮想通貨にしかない新しい事象に対する税務上の取り扱いは、現状では今の事例や法令に当てはめて計算するしかありません。
ただハードフォークの場合も国税庁のガイダンスで対応が公表されているため、今後、トークンスワップに関する取り扱いに関するアナウンスが行われていくと思われます。
クリプタクトでは、顧問税理士の見解による処理に従うためのカスタムファイルでの処理方法についてご案内しておりますが、同時に、今後国税庁による見解が定まれば、当然その内容に従った自動処理を行うことで対応致します。
注意事項とご案内
メインネット・トークンスワップに関する損益計算方法につきましては、当社の顧問税理士の見解として受領し、一般的な取扱いについて述べたものであり、個別の状況は加味しておりません。税務上のご不明点につきましてはご自身の税理士にご確認くださいますようお願い致します。
ご自身で対象の通貨を保有しているのか、どの通貨が対象に考えられるのか等のご質問も専門家にご確認ください。
クリプタクトでは、トークンスワップの損益計算を自動処理できる機能を来年を目標に追加を予定しております。自動処理によって、トークンスワップ時に旧仮想通貨が凍結された時点で保有している残高について、同時刻の時価で全数を売却し、直後に同数の新仮想通貨を購入したものとすることを面倒な処理や計算を必要とせずに行うことが可能となる予定です。
自動処理が実装されていない本年の損益計算方法に関しましては、下記の「仮想通貨特有の事象に関する損益計算方法」の中でご説明いたします。
仮想通貨特有の事象に関する損益計算方法
ハードフォークの場合は、新たに取得した仮想通貨を0円で購入したと計算し、そこから売却を行なった場合は、その際に所得が発生することになります。
メインネット移行に伴うトークンスワップの場合は、トークンスワップが起きたタイミングで旧トークンは一度売却され、同数分の新トークンを買ったという形で損益計算を行うことになるため、旧トークン購入時からの損益は一旦実現されたという扱いになります。場合によっては確定申告の対象となりますので、対象の方は損益計算を行うことを推奨いたします。
Cryptactが展開するtax@cryptactのサービスでは、取引所のデータをアップロードするだけで、自動的に損益計算を行うことが可能ですが、データがない場合はカスタム取引として、手入力によるデータ入力で計算することもでき、仮想通貨特有の事象に対する計算を手動で行うことが可能です。
既に30,000以上のユーザーが利用しており、個人利用向けには無料で利用出来るサービスとなっています。
基本的な使い方はこれまで行った過去全ての取引履歴(取引所の取引履歴や自身で作成したカスタムファイルなど)をtax@cryptactのサービスにアップロードすることで、自動的に実現損益と保有通貨毎の含み損益が算出されます。
アップロード後にUI上で自由に取引を追加することができ、そこでハードフォークやトークンスワップのような取引所等のデータに存在してない場合の取引を手動で入力すると、その取引を反映させた結果が表示されます。
このカスタム取引の機能を使うことで、仮想通貨特有の事象に対する損益計算を行うことが可能です。
tax@cryptact 画面において、ハードフォークの損益計算を行う手順になります。
- ①ハードフォーク時の時刻の対象通貨の残高を確認する。
この時刻に最も近い対象通貨のトレードを帳簿画面で探し、該当するトレードの詳細画面で対象通貨の残高を確認する。
- ②ハードフォーク後の新たに取得した仮想通貨の買いトレードを入力する。
時刻は ハードフォーク時の時刻 価格は、0円で入力してください。
tax@cryptact 画面において、トークンスワップの損益計算を行う手順になります。
- ①メインネット移行時の時刻の対象通貨の残高を確認する。
この時刻に最も近い対象通貨のトレードを帳簿画面で探し、該当するトレードの詳細画面で対象通貨の残高を確認する。
- ②上記で確認した残高の、対象通貨JPY 売りトレードを入力する。
時刻は メインネット移行時の時刻。 価格は、ご自身でお調べください。
- ③同数の対象通貨JPYの買いトレードを入力する。
時刻は、 メインネット移行時の時刻から5分後。 価格は、ご自身でお調べください。
※売りと買いに5分あけるのは、将来自動処理を入れる可能性があるためです。ご了承ください。
含み損を実現させたい場合は、porfolio@cryptactのタブから詳細ページに飛び、そこで通貨ごとに含み損益やtax@cryptactで計算される簿価が記載されているので、含み損となっている通貨について売却を行うと含み損が実現されることになります。
この含み損の実現についても、UI上で自由に取引を追加することができるため、事前にシミュレーションすることが可能です。
充実のサポートページ及びサポート体制
詳細なヘルプページを用意。各取引所における取引履歴のダウンロード方法や、計算方法の詳細、その他データ不足に伴う計算不能状態の解消「未分類取引の解消」などを掲載しています。
メールでのトータルサポートもあり、平均3営業日以内には回答いたします。
年内までにできる税金対策
下落相場が続いているため、今年の税金計算を重要視していない方も多いのではないでしょうか。
2018年は、下落相場が続いたが、下落前に売却を行なって利益を実現させた方は来年3月の確定申告が必要になる場合もあります。
「年末にかけての含み損の実現による売り圧力」は、投資面では注意点になる可能性もありますが、税金面で見ると、所得を減らすことのできる有効な手段の1つと言えます。
今回解説したメインネット移行に伴うトークンスワップでも含み損がある場合は、それを認識できますので、損だしを行うことが可能です。
トークンスワップで強制的に利益が出た方も、その分購入簿価が上がることになるので、年末のこの時点ではおそらく含み損になっている方も多いかと思います。それら状況をporfolio@cryptactで確認して、一度損だしの取引を行えば、メインネットスワップで出た利益も消せる可能性高いと思われます。
どのような投資家が対象となっているのか、その確認方法を税理士の見解と合わせて詳細に解説した記事がありますので、ぜひご覧ください。
企業紹介
Cryptactは、bitFlyerと業務提携したことでも有名な仮想通貨の実現損益計算サービスtax@cryptact及びポートフォリオ管理ツールportfolio@cryptactをサービス提供している企業。
創業メンバー自身が行っていた仮想通貨取引の損益計算を簡単にするために、2017年に自用目的で開発したのがtax@cryptactの始まりで、機関投資家が利用するような高度なシステムを個人でも使用できるサービスとなっています。先月には、reports@cryptactと称して、元ヘッジファンド運用担当者による仮想通貨マーケットの分析レポートの配信も開始いたしました。