日銀がCBDCの実証実験へ
日銀は中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の実現を見据えた準備を進める。
2日に技術面の論点をまとめたリポートを公表し、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の実証実験を行う方針を明らかにした。
現時点でCBDCを発行する計画はないとの立場は変えていないが、各国で開発が進むデジタル決済に遅れを取らないよう、民間の金融機関や決済企業と技術面の課題解決に取り組むとみられる。
日銀は、金融市場インフラに対してもたらしうる潜在的な利点や課題を研究するプロジェクト・ステラを欧州中央銀行(ECB)などと実施してきた。これまでは企業間決済で利用するCBDCの研究が中心だったが、本リポートの結果を踏まえて行う実証実験を通じ、民間ベースの決済手段としてもCBDC実現可能性を探る考えを示した。
レポートの内容
CBDCの要件や課題、今後の取り組み等について研究チームが作成したレポートを発表。
レポートでは、CBDCは現金と同等の機能を備える必要があると説明。要件として、「誰もがいつでもどこでも、安全で確実に利用できる決済手段」を挙げている。現在のデジタル決済ではスマートフォンを介した支払いが多いが、それでは子供や高齢者など利用できない人が生まれてしまうため、様々な人々が利用可能な端末が必要だという課題を指摘した。
もう1つ要件に挙げているのが「強靱性」。地震などの非常事態でも利用できるように、通信や電源が確保できない時を考慮し、オフライン決済機能が必要とも述べている。
また、利用者の安全性やプライバシーの確保、マネーロンダリングなどの犯罪対策も課題に挙げている。課題の解決策として、利用状況の把握が難しいオフライン決済では、利用金額に上限を設定するという案も提示した。
日銀は2月、決済領域で民間と協力するため、「決済の未来フォーラム」という協議の場を創設した。その下に「デジタル通貨分科会」を設置し、今月30日に初会合を開くという。今回のレポートで示したCBDCの課題もテーマにする計画だ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、デジタル決済の需要は世界で高まっている。CBDCについては先進国では中国が先行しているが、米連邦準備理事会(FRB)も研究を進める意思を表明した。日銀も遅れをとらないよう取り組みを加速させる。
日銀以外の動き
日銀以外では自民党が今年2月、円のデジタル化について提言をまとめ、首相宛に提出した。
その時と同様に、6月下旬にまとまった政府の成長戦略に関する提言にも、「CBDCで米国と連携して、技術的な検証を目的とした実証実験等を行うべきだ」と記した。
政府は今月内に決める経済財政運営と改革の基本方針への反映を検討する。