中東2カ国、CBDC実証実験を完了
アラブ首長国連邦中央銀行とサウジアラビア通貨庁がCBDCに関して実証実験行ったAberプロジェクトに関する最終レポートを29日に発表した。
検証結果では、期待以上の結果が見られたとしており、今後の応用としては即時グロス決済やDvP決済などの代行手段としての有用性が記された。
中東のサウジアラビアとアラブ首長国連邦両国の中央銀行は、2019年1月よりブロックチェーン技術と分散台帳技術を導入した中央銀行の発行するデジタル通貨(CBDC)をクロスボーダー決済における実証実験を3段階に分けて実施するAberプロジェクトを開始した。
実験にはサウジアラビアとUAEの6行の商業銀行もネットワークのローカルノードとして参加した他、セキュリティー面や既存の決済システムを「より深く検討する」ために、実際の通貨に担保されたデジタル通貨が活用されていた。
第一段階:2カ国の中央銀行間でクロスボーダー決済
第二段階:3行の商業銀行間で国内決済
第三段階:デジタル通貨を駆使した商業銀行間のクロスボーダー決済
およそ2年間の検証の結果は、分散化された決済システムは既存の決済システムと比較してより優れたセキュリティを提供することが確認されたとしたほか、分散台帳技術は安全面やプライバシーを疎かにすることなく高いレベルのパフォーマンスを提供することも確認されたと報告した。
レポートでは、今後の調査対象として分散台帳技術ベースの決済レールの既存システムへの導入の検討や、より地理的に分散化された参加対象の拡大、また債権など他の資産の決済における活用などが挙げられた。
デジタル通貨へ高まる関心
中国では既にデジタル版の人民元による決済システムが活用されており、各国もCBDCの検証や実証実験を進める動きを強いられている。英国ではCBDCに関する調査やステーブルコインの規制の草案が練られている他、ブラジルの経済大臣もCBDCを発行する意向を伝えた。
新型コロナウイルスの感染者数も再び高まりつつある中、新たな非接触型決済ソリューションとなり得るCBDCへの関心は今後も強まるとの見方が強い。日本銀行も2021年4月に実証実験を行う計画を発表しており、中東の中央銀行で実証実験が既に完了している点は、先進国の中でも、CBDCに力を入れている国と言っても過言ではない。
参考:サウジアラビア通貨庁