- アフリカでビットコインの需要が増加する理由
- 今アフリカ・ナイジェリアでビットコインの需要が急増している。価格変動の大きさに注目が集まるが、何が理由なのか、そして今後のビットコイン全体の市場にどう影響するのだろうか。
ナイジェリアでビットコイン需要が高まる3つの理由
仮想通貨の需要が意外な場所で急増している。
現在、アフリカのナイジェリアでは経済不安から仮想通貨への資金流入が加速している。もはやその勢いは無視できないものとなっている。
BitcoinKEは今年4月、世界中の「Bitcoin」というキーワードの検索数を各国で比較すると、ナイジェリア、南アフリカ、ガーナが上位3位を占めるという結果を明らかにした。
日本人に馴染みの薄いこの地域で、今なぜ仮想通貨が注目されているのか、それに伴いどのような現象が発生しているのか、そして今後どのような影響を及ぼすのかについて解説する。
そもそもビットコインを含む仮想通貨に対しては、一般的にボラティリティ(価格変動)が大きすぎて貯蓄という用途で利用することは難しいと言われる。しかしながら、 ナイジェリアを含むアフリカ諸国ではそうした通説が覆されるような現象が起きている。
すなわち、 政治への不信から自国通貨の方が仮想通貨より価格変動が大きいのだ。ナイジェリアではIMFデータベースによると2018年の年平均インフレ率は12.09%にも上り、過去3年間連続して2桁台が続いている。
これは国民が自国の通貨の価値を低く評価していることを表している。つまり、その資産を別のより安定したものに変換したいというニーズが一気に高まっているのだ。
さらにインフレに伴い、ナイジェリアの商業銀行は外貨の流出を恐れ、こぞって国外への通貨の流出を制限した。つまり、国外のモノやサービスに対する支払いが制限されたということで、事業者から見ると国外からの輸入が制限されたということになる。
これは輸入ビジネスにとっては大打撃となる。今まで滞りなく行われていた支払いやモノ、サービスの供給が滞ってしまうからだ。
苦肉の策を強いられた事業者はブラックマーケットから割高なレートで外貨を調達するか、ビットコインを使うかという選択肢からビットコインを選択せざるを得なくなるのである。
つまり、ナイジェリアでビットコインが選択されている理由は、大きく以下の3つである。
- インフレ下でボラティリティの高い自国通貨よりも安定性のあるビットコインへの資産避難
- ブラックマーケットにて高レートで外貨を調達するコストを回避
- 海外送金の速さの特性を生かした国外のクライアントへの支払い期間を短縮
このような問題回避目的でのビットコインの利用を後押しするかのように、いわゆる仮想通貨交換業のようなビジネスも急成長中だ。特に中央の取引所(販売所)からではなくP2Pでビットコインを入手できるプラットフォームの成長が著しい。
そのうちの1つPaxfulは、1月末のCointelegraphへの寄稿で2018年のユーザの伸びは130%だったと報じている。
さらに、ナイジェリアで事業を行うCoincolaは、現金入金、銀行振込、PayPal、アマゾンまたはiTunesギフトカードなど様々なオプションを提供している。
アフリカ市場が与える仮想通貨市場全体への影響
人口が12億人を超えるアフリカ(ナイジェリアは約1億900万人)は、今後仮想通貨にとって巨大なマーケットとなりうるポテンシャルがあるだけでなく、政治不安から多くの資金がビットコインに流れているという事象が観測されている。
これらの目的で利用されるのはビットコインであるため、ビットコインのドミナンス(仮想通貨全体の取引量に占める各通貨の割合)は高まる可能性がある。
また、これらは投機目的ではなく、ビジネス取引目的や価値の保存目的であるため、今後価格が安定してくる可能性は高い。
それに伴い、取引環境も上で見た取引所のような事業主体によって整備されていくことが考えられる。それだけに確固たる規制の整備が今後求められるだろう。
アフリカの今後のマーケット拡大には注目していく必要がある。
アフリカ市場の拡大、一方先進国では?
では先進国はどうだろうか。
AppAnnie.comがDapps(分散型アプリケーション)のダウンロード数を元にブロックチェーン・仮想通貨が実世界でどの程度利用されているのかという調査を行なった。
この調査によると、米国における今年上半期のダウンロード数は6700万で、去年同時期の6580万と比較してほとんど変化がない。
これはあくまでひとつの指標だが、アフリカで起きている急激な人気の高まりの裏側では、仮想通貨は実ユーザの伸び悩みという壁にぶつかっている点も同時に見ておく必要があるだろう