イーサリアム2.0:移行のステップや価格への影響
大手仮想通貨デリバティブ取引所BitMEXが、次世代イーサリアム「2.0」についての詳細レポートを発表した。今回その中から2.0への移行の段階や、イーサリアム価格への影響についての項目を抽出して紹介する。
イーサリアム2.0への移行目的
イーサリアム2.0(Serenity)は目的として、現在障壁となっているスケーラビティ問題改善のため、大規模なトランザクションを処理できるようにするスケーラビリティ向上に重点を置く。
このため、PoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)への移行と、シャーディングというシステムの実装が行われることになる。
関連:仮想通貨のPoS(プルーフ・オブ・ステーク)とは|2020年以降に注目が集まる理由
PoSは仮想通貨の保有量によって新規発行通貨が貰える仕組みで、PoWよりも消費電力を抑えることができる。
シャーディングは、トランザクションの検証を行うノード群をグループ分けし、分担して作業を行うことで、より効率的な承認を可能とする仕組み。
セレニティへの移行は3段階で行われる
(1)ビーコンチェーン
ビーコンフェーズは延期されていたものの、2020年7月に開始される予定。
この段階では、ほぼPoSシステムの構築のみで、テストネットと見なすことができる。テストとはいえ、トークンは実際のイーサリアムが使われる。PoSシステムが機能するためには、様々な機能が必要だ。以下はその一部である。
- ブロック生産者とステーキング委員を選択するための乱数ジェネレーター
- ブロック提案に対するステーカー投票
- ステーカーに与える報酬や罰則の設定
(2)シャードチェーン
シャードチェーンの段階では、最初に64個のシャードが配備される予定。
この段階でも、ネットワークは非常に実験的なものとして設計されている。
ビーコンチェーンの段階では、PoSの基盤をテストすることが目的だが、同様にシャードチェーンの段階は基本的なシャーディングモデルのテストを目指す。
このフェーズでは、並行して動作する64のシャードチェーンとビーコンチェーン、あわせて65のチェーンが存在。ビーコンチェーンとシャードチェーンの間で双方向の通信が行われる。
(3)実行段階
このフェーズで、重要な経済活動(ステーキング以外)とスマートコントラクトがネットワーク上で可能になる見込み。
シャードは仮想マシンやスマートコントラクトなどイーサリアム1.0の機能に似たものになる。このフェーズの仕様はまだ確定されていない。
ETH価格への影響は?
BitMEXの報告書によると、イーサリアム2.0は、DAO、ICO、DeFiなど常に新たなアイデアを試すことに熱心な層のニーズを満たすものとなる。このため、豊富な資金が新生イーサリアムに流れ込み、数十億ドル相当のステーキング報酬を得ことも予測される。
短期的に見てイーサリアム価格は上昇するかもしれないと、報告書は続ける。新たなブロック報酬を稼ぐことができる能力が魅力となり、大量のETHがビーコンチェーン内にロックされる可能性があるからだ。すると、市場でETHの供給が制限され、価格上昇につながることになる。
ただ、イーサリアム2.0が長期的に価値を保持し続けるためには、安定した需要も存在する必要がある。そのためには、PoSやシャーディングのシステムが上手く機能しなければならない。
とはいえ、イーサリアム2.0の仕組みは、構成要素が多く非常に複雑なため、完成へ向けての行程では遅延が発生する可能性も高いという。それだけに、最終的に完成した暁には、華々しい成功を収めるだろうとBitMEXの報告書は締めくくった。