- 改正資金決済法が成立、来年4月に施行
- ビットコインなど仮想通貨(暗号資産)に関する規制強化策を盛り込んだ改正資金決済法と金融商品取引法が参院本会議で可決、法案が成立した。株式市場同様、相場操縦行為や風説の流布が明確に規制される。
改正資金決済法が成立、来年4月に施行
仮想通貨(暗号資産)に関する規制強化策を盛り込んだ「改正資金決済法」、及び「金融商品取引法」が参院本会議で可決、法案が成立した。 2020年4月から施行される。
仮想通貨交換業者などの利用者保護のため、規制強化策を盛り込んだもので、相場操縦や風説の流布といった行為を法的に禁止するほか、証拠金取引に関しても投機的な過熱を抑制する。
日本政府が、20カ国・地域(G20)など国際会議の表現に合わせた「暗号資産」の呼称変更は、日本円や米ドルなど法定通貨との誤認を防ぐ目的があるとする一方、すでに数年間単位で「仮想通貨」の呼称で商号や各種サービス名を展開していた企業も多く、当面は一般利用者の混乱を招く可能性もある。暗号資産という名称自体が一般認知され、浸透するかどうかは不透明だ。
重要点
今回の仮想通貨(暗号資産)改正案の重要ポイントは、以下の通りである。
国内取引所の利用者保護・強化策
顧客の仮想通貨をコールドウォレットなどで管理
ネット上で管理する顧客の仮想通貨について、「弁済原資の確保」を義務付ける
交換業者の倒産時、「預かっていた仮想通貨を顧客に優先的に返す」規定の整備
証拠金取引について、外国為替証拠金(FX)取引と同様の規制対象とする
交換業者が取り扱う仮想通貨を変更する場合は事前に提出
風説の流布や価格操作など不公正取引の禁止
ICO関連
トークンの発行を金融商品取引法の規制対象に明確化
投資家への情報開示制度や、トークンの仲介業者に対する販売規制を整備
その他
仮想通貨の呼称を「暗号資産」に
投機を助長するような広告や勧誘の禁止
改正案の注目ポイント
これらの法改正は、昨年問題視された金融庁の立入検査からの業務改善命令、金融庁主導で行われた有識者会議での討議内容、自主規制団体JVCEA設立、今秋のFATF対日審査などを見据えた流れを汲んだものだ。G20で議長国となる日本は、これを機に世界の暗号資産規制をリードする狙いもある。
また、これまで事業者の業容拡大が急すぎたことで「規制面」の整備が追いつかず、無法地帯に近い状態だとされていた相場操縦行為や風説の流布。あるいは、ICO関連についても、法の元にメスが入ることになる。
ビットコインやアルトコインなど仮想通貨投資を行うにあたり、2018年1月に発生したコインチェックの巨額不正流出事件などを念頭に置いた利用者保護策は、中・長期的な仮想通貨市場価格上昇で新たな利用者層の参入機会が期待される中、ポジティブな見方をする専門家も多い。
中国のような全面的な暗号資産禁止・規制策ではなく、イノベーションの観点を踏まえた上、仮想通貨取引所に「弁済原資の確保を義務付ける」など、国が監督するとの意志を明示した意義は大きい。
株式市場などと同様、風説の流布や価格操作など「不公正取引の禁止」を明確に定めることで、健全な市場発展に向けて、不正行為の撲滅や悪徳業者の浄化が進み、機関投資家の参入など市場規模拡大に向けて発展することが期待される。