ロシア貯蓄銀行がユーザーの口座凍結
ロシアの裁判所が、大手銀Sberbank(ロシア貯蓄銀行)に、暗号資産(仮想通貨)取引を行っていた市民の口座に課されていた制限を不適切と判断、解除するように命じたことが分かった。
本件は、スベルドロフスク州に住むPavel Rと名乗る原告がロシア貯蓄銀行を被告として起こした裁判に関わるものである。
訴訟の経緯
経緯として、原告はロシア貯蓄銀行が発行した口座とカードを保有しており、リモートバンキングサービスも利用していた。2020年5月から8月にかけて、Pavel R氏は、他の個人から定期的にその口座に送金を受け取り、そのお金を引き出していた。
ロシア貯蓄銀行は8月、これらの取引を不審なものとみなし、マネーロンダリングに関与することを防ぐために、Pavel R氏の口座とカードを凍結した。また、同氏に対して、資金の出所や実行されている取引の意味を説明する書類の提出を求めた。
これを受けてPavel R氏は必要な書類をすべて提出し、問題視された入金は同氏が仮想通貨取引所でビットコイン(BTC)を売却したことに関わるものであったことを説明。しかしその後も、ロシア貯蓄銀行は、Pavel R氏のカードやリモートバンキングサービスを凍結し続けていた。
このため、Pavel R氏は、同銀行の行為が法律に基づいておらず、消費者としての権利を侵害していると考え、サービスの再開や、精神的に負った損害の補償を求めて、裁判を起こした格好だ。
第一審では、この請求は裁判所の判決により棄却されたが、Pavel R氏は地方裁判所に控訴。その結果、第二審では訴えの大部分が認められた。
スベルドロフスク地方裁判所は、銀行がサービスを停止したこと自体は法的根拠があったとしたが、原告が事情を説明した後も、停止を続けたことについては不適切だったとしている。該当する取引が行われた時点で、仮想通貨売買は法的な規制の対象とされていなかったが、禁止もされていなかったことも背景だった。
裁判所はロシア貯蓄銀行に、Pavel氏のオンラインサービスへのアクセスを回復し、カードと口座の凍結を解除するよう命じた。同銀行は、原告の訴訟費用についても支払う義務がある。精神的損害の請求については却下された。
デジタル資産関連法は1月より施行
ロシアでは2021年1月よりデジタル資産関連法(On Digital Financial Assets:DFA)が施行され、仮想通貨は財産の一種とみなされ、売買も正式に許可された。ただ、サービスや商品の決済手段としてデジタル通貨を使用することは禁止されている。また公務員による仮想通貨所有も、腐敗防止のために禁じられた。
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消極姿勢を維持するロシア中銀
一方、ロシア中央銀行は、依然として仮想通貨に対して消極的な姿勢を示している。7月には、国内の証券取引所に対して、仮想通貨関連の企業を上場しないよう勧告した。
仮想通貨のボラティリティ(価格変動)の大きさや、価格の不透明さ、技術や規制面でのリスクを挙げており、「多くの投資家がこうした商品を購入することを予防するもの」だと説明。なお、ロシアの法律に基づいて発行されたデジタル資産には、制限は適用されないとしている。
こうしたロシア政府が承認する仮想通貨の一例としては、ロシア貯蓄銀行が計画している、独自のステーブルコインSbercoinが考えられる。ロシア貯蓄銀行はこのデジタル通貨のプラットフォームを構築することについてロシア中銀に申請しているところだ。